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2005年9月15日 (木)

遺伝性脊髄小脳変性症の論文

私どもの脊髄小脳変性症の論文が世界的ジャーナルに載りました。
neurology

みんな、ホッとしました。

Neurology. 2005 Aug 23;65(4):629-32. Related Articles, Links

A clinical, genetic, and neuropathologic study in a family with 16q-linked ADCA type III.

Owada K, Ishikawa K, Toru S, Ishida G, Gomyoda M, Tao O, Noguchi Y, Kitamura K, Kondo I, Noguchi E, Arinami T, Mizusawa H.

Department of Neurology and Neurological Science, Graduate School, Tokyo Medical and Dental University, 1-5-45 Yushima, Tokyo, Japan.

これはどんな話なのでしょう?

ウエブ上で公開されているアブストラクト(要約)を転載します。

Presented is the new kindred with autosomal dominant cerebellar ataxia linked to chromosome 16q22.1 (16q-ADCA type III) associated with progressive hearing loss. By haplotype analysis, the critical interval was slightly narrowed to three megabase regions between GATA01 and D16S3095. Neuropathologic study of 16q-ADCA type III demonstrated characteristic shrinkage of Purkinje cell bodies surrounded by synaptophysin-immunoreactive amorphous material containing calbindin- and ubiquitin-positive granules.

①16番染色体のある場所に遺伝子座を持つ、常染色体優性の脊髄小脳変性症を報告した。②この脊髄小脳変性症の病理所見は、シナプトフィジン陽性のアモルファスな物質に囲まれたプルキンエ細胞が特徴的であった。

ということです。
呪文のようですが、呪文ではありません。

一つずつ見ていくことにしましょう。

遺伝性の脊髄小脳変性症を調べることは大切なことです。

なぜなら、ある遺伝子に異常があり、病気が引き起こされるわけですから、その遺伝子の役割を調べることにより、脊髄小脳変性症の病気になっていくメカニズムの手がかりを得ることができます。

もしかすると、そのメカニズムは孤発性とよばれる、遺伝性でない脊髄小脳変性症の発症のメカニズムにも何らかの手がかりを与えてくれるかもしれません。

私どもは、家族性の脊髄小脳変性症の遺伝子がどこにあるかを調べ見つけました
これは膨大な遺伝子から調べていく大変な作業で、昼夜分かたず多くのかたが努力されました。

この作業をリンケージ解析といいます。
これが一つ目の大切な点。

次に、その遺伝子異常がある脊髄小脳変性症の病理所見を世界に先駆けて発表した。
それが、次に大切な点。

プルキンエ細胞は小脳にある大型の細胞で、小脳機能の中心的役割をする細胞です。

この、あたらしい二つの世界初の見解を持って、ジャーナルに掲載が許可されたわけです。

脊髄小脳変性症はなぜ発症するのか、なぜ進行するのか、薬は創れないのか。
私たち神経内科医はそのメカニズムの深淵から創薬まで、全力で努力しているのです。

脊髄小脳変性症の患者さん達は、治療法を待ち望んでいます。

また、ケアしてくれる医師を待ち望んでいます。

専門で見る神経内科医はあまりに少ない。

脳の中をCTで診ることができるようになって15年。
MRIが普及し始めて10年位です。
検査もできない、治療法もほとんど無い状態でしたので、専攻する医師は少なかった。

高齢社会に向けて、そして神経科学の進歩に向けて、特に日本では、内科医になるのなら、多くの医師はその需要の大きさから神経内科医になるべきです

私たちの社会や若い医師への情報発信は始まったばかりです。

色々な幸運が重なりジャーナルに載ったのでホッとしたのです。
うまくいかないことが多いものですから。

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