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2005年10月22日 (土)

脊髄小脳変性症の画像

「そんなに小脳はやせていないけれど、脊髄小脳変性症だと思います。」

私たち神経内科医はそう診断することも多くあります。

「脊髄小脳変性症は、小脳がやせたり、脳幹がやせたりして、機能が悪くなる病気でしょ。 どうして、やせてないのに脊髄小脳変性症って診断がつくのですか?


当然の疑問です。
MRIなどの画像上で見えるものは何なのでしょう?

人間の脳は常に活動し機能している組織です。

無数の電気回路が縦横無尽に張り巡らされ、情報が蓄積され、演算を繰り返しています。

脊髄小脳変性症、パーキンソン病、アルツハイマー病では、この神経細胞が(まだ理由はわからないのですが)ダメージを受けていく病気です。

何らかのダメージが生じて、機能障害を起こしている段階では細胞の形もそのままであり、大きな物理的変化は起きていません。

この段階で、MRIを撮っても変化が無いのです。

小脳炎という病気があります。
小脳にウイルスなどで炎症を起こす病気ですが、たとえひどい小脳症状を出していても、小脳がやせたりはしていません。

また、パーキンソン病で、MRIがほとんど異常の無い方は沢山いらっしゃいます。

たとえそういったMRIで異常が無いばあいでも、詳しくPETなどの検査をおこなうと、ある神経細胞が機能していなくて、必要なトランスミッター(伝達物質)が圧倒的に不足していることが判明したりします。

言い換えると、たとえ、MRIではどこも脳がやせていなくて、ダメージが無いように見えても、静かに機能低下を起こしている神経細胞の存在が、機能を調べる別な検査で明らかになったりするのです。

機能が高度に傷害されても、画像上はっきりしないこともあります。
つまり、通常のMRIは機能を見ているのではなくて、形や性質の大きな変化を主に見る検査なのです。大きな変化でないと、異常値としては検出できません。

こういった機能障害と画像の乖離(かいり)は神経内科領域ではよく見られます。

ですから、臨床の症状を一生懸命拝見し、誘発筋電図や脳派などの電気生理検査などほかの機能を調べる検査を組み合わせて、病気の性質を明らかにしていくのです。

そこが、難しいところであり、また、神経内科医がよくディスカッションするポイントでもあります。

まだ神経細胞が減っていなくて、機能が低下している状態ではMRIでは明らかにならないこともある ということです。

パーキンソン病の患者さんでは、とても体の動きが悪い状態になっても、MRIではほとんど正常ということも良くあります。

今、患者さんに見られる症状は(たとえ画像上異常が無くとも)脊髄小脳変性症の症状に間違いないと考えられる事があります。

これが、「MRIであまり異常がないのに、脊髄小脳変性症です」と診断した根拠なのです。

MRIは脳梗塞に関しては、非常に小さな異常も検出できます。
しかし、静かに徐々に神経細胞がダメージを受けて、脱落していくような疾患を捉えるのは苦手です。

神経変性疾患と呼ばれる病気では、多くの場合、機能低下が画像の変化に先行します。
ですから、私たち神経内科医は臨床所見を拝見することを、もっとも大切にしています。

検査には検出する異常の限界があるという良い例だと考えています。

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