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2005年10月29日 (土)

在宅医療の問題/脊髄小脳変性症の胃ろうは他の胃ろうとどこが違うの?

10月28日付けの産経新聞に、平成16年度から保健医療のシステムが改善され、在宅医療の連携を強化するという記事が載っていました。

これはとても大切なことです。

10月26日に、雨の北千住の夜、在宅医療の方々とお食事をしたのですが、まさにその点がみんなの悩みの中心点でした。

脊髄小脳変性症などの難病では、ご自宅で見ていても、いろいろな原因で病院と自宅を行ったりきたりする事が多いのも特徴だからです。

現状の医療システムでは、
実はこれまで、このようなことを行うのが大変に困難でした。

在宅医療とバックベッドとよばれるすぐ入院できる病院の関連が薄かったため、具合が悪くなるたびに別な病院に運ばれるということが良くありました。

たとえば、運動神経の病気であるALSという疾患で在宅医療を行っている患者さんが、呼吸が苦しくなり、紹介を受けてくださった、かかりつけの病院に連絡したことがあります。

ところが、救急病院であるその病院は、入院が長期化しそうという理由で診て下さいませんでした。
その結果、その患者さんははるばる東京にある私の病院に2時間かけて搬送されてきたことがあります。

無事肺炎を乗り切られ、その患者さんは民間救急車で自宅に戻られました。

あるいは、先日もお話しましたとおり、胃ろうのトラブルで、やはり私の病院に入院しなくてはならなかった遠方の方もいらっしゃいました。
脊髄小脳変性症のような、「小脳や脊髄などの神経の病気」は難しくて診れないというのが、その地域の病院の見解でした。
もともとの病気と胃ろうは何の関係もありません。

脊髄小脳変性症の胃ろうも、脳梗塞など他の病気の方の胃ろうと、何も変わらない。これが本日の題名の答えです。

理由にならない理由で断っているとしか思えません。

このような状況では、その地域にご紹介した意味がありません。

また、中核になる病院を設定するのだけでも大変な苦労です。
受けてくださる病院や先生が見つかると、転院の苦労の7割は解決されます。

神経難病の患者さんがたが非常に苦労されているのは、まさにこの点でもあるのです。

神経内科の医師が少ないことにも原因はあるのですが、どうも、多くの病院では、ほかの救急の患者さんに比べて、(実際とは異なる)入院が長引きそう、ケアが大変そうという点から、神経系の患者さんの受け入れを拒む傾向があります。

今回の報道では、在宅の患者さんに対し、24時間の在宅医療を展開できるなら、保険点数の加算を行うというインセンティブを医療機関に持たせるという報道でした。

このような悩みにおいては、高齢者医療と神経難病の在宅医療はとてもよく似ています

どちらの医療も、バックベッド探しにひたすら苦労しているのです。
具合が悪くなるたびに、救急隊が救急病院に電話をかけまくるというのが通常のコースです。

現在の救急医療は、交通事故や心筋梗塞などの単発の救急医療には大きな力を発揮します。

ところが、永続的に在宅医療と救急病院を行ったりきたりする患者さんの医療を全く想定していないシステムとなっています。

また、このような神経難病や、高齢者の状態の悪化のような、緊急を要するけれどもさまざまな処置や装置の使用頻度の少ない救急医療は、コストが発生しにくいので、どの病院も経営の面から、よりコストの高い疾患にシフトしていってしまいます。

私は、ある救急病院で、地域密着型のケアが十分できる神経内科を行いたいと申し出たところ、言下に「私たちが求めている神経内科医はひたすら脳血管造影を行い、脳梗塞の加療を2週間だけ行いすぐに転院を図れる、救急医療型の医師である。従って、理由は理解するが、君も君の行いたいという、そういった(もうからない)医療は当院としては全く必要ない。」と申し渡されたことがあります。

一方で、在宅(高齢者)医療を日本は推し進めようとしています
この救急病院側の理念と、在宅医療者のあいだには大変大きな溝が横たわっています。
(私は、何とか解決可能だと思っているのですが・・・)

もし、在宅医療を質の高いものにしたいのであれば、きちんと在宅医療と救急入院医療機関が密接に連携をとる必要があります。

昨年私が、医療情報の連続性と連携という面から論文を書いたのは、今後の医療の問題がその点に集約されると考えたからです。
また、このような医療連携をうまく行うことができれば、医療が総合化され、無駄が減り効率化されるので、全体的な医療費の低下を計れます。

正面から向き合い、「神経疾患の患者さんは判らない」というだけで言い逃れができない制度にする必要があります。

在宅で苦労されているご家族に、更なる追い討ちをかけるような医療制度から脱皮しなくてはなりません。

どのような問題が現在起きているか、制度の変化でどのような利点があるか、厚労省の研究会で来月、全力で話し合ってみようと思っています。

制度は来年、良い方向に変わります。

それを受け、医療機関はどのように変わるのか。

大変に注目すべき点です。

保険点数の加算を受けながら、カスタマーの要請にこたえられなかった場合の第三者による評価をしっかりしていくべきです。

もし、私に救急病院のあり方を申し付けた上記の病院が、24時間体制で在宅を診るという加算を取るようなことがあれば、それなりのケアを新たに始めたと理解すべきでしょう。

加算を受けた施設であるのか無いのか。

制度に従ったサービスを提供しているのかどうか。


さらなる情報のディスクロージャーが医療機関には求められています。

これまで患者さんたちと一緒に超えてきた苦労を考えたら、こみ上げるものがあり、今日は辛口になってしまいました。申し訳ございません。

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