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2006年1月 6日 (金)

卵円孔開存と脳梗塞

イスラエルのシャロン首相が脳卒中で倒れました。

経緯を考えると、脳梗塞治療の難しさが伺われます。

2005年12月半ば、シャロン首相は小さな脳梗塞で一度入院されました。

幸い、この時の脳梗塞自体の後遺症は少なかったようです。

原因は心臓にある「小さな孔」であり、心臓カテーテルによるパッチ術が予定されていました。

その後、順調に手術を待機されていましたが、1月4日に今度は外科手術も必要な、大きな脳出血を起こしてしまいました。

どういった経緯が考えられるのでしょうか。

脳梗塞は、動脈硬化症による脳血管内の血栓(血管内の血液の塊)や、不整脈による心臓内血栓によって起こされることもありますが、

卵円孔開存症
も脳梗塞の大きな原因の一つです

卵円孔とは、胎盤を経た循環を保つために胎児や乳児期に開いている、心臓の中の孔です。

成人になると、この孔は必要なくなり、通常、自然に収縮し閉鎖します。

ところが、この卵円孔が開いたままの人が居ます。

この孔が開いていると、血栓ができやすい心臓の右側の部屋から左側の部屋に血液の流れや、乱流ができたりします。

通常は、左側の部屋の方が圧が高いので、たとえ血栓が右側の部屋にできても大丈夫なのですが、孔の位置や形、血液の性情により人により、脳梗塞の原因になることがあります。

すると、血栓が心臓の左側の部屋に入り込み、脳へ飛んでいってしまいます。

心臓の左側は、体へ血液を送り出すポンプの部屋だからです。

これが卵円孔開存による脳梗塞のメカニズムです。

卵円孔開存の脳梗塞の再発予防には抗血小板薬や抗凝固因子薬が用いられます。

Mayo Clin Proc. 2004 Jan;79(1):79-88. s

Mayo Clin Proc. 2004 Feb;79(2):279. Patent foramen ovale and stroke.
Horton SC, Bunch TJ.

これまでの経緯を総合すると・・・

1.シャロン首相の場合は最初の脳梗塞の際に、卵円孔開存が発見され脳卒中の原因と考えられた。

2.そのため、脳梗塞の治療後、閉鎖術が予定された。

3.最初の梗塞の治療と再梗塞の予防を兼ねて、抗血小板薬か抗凝固薬の内服が行われていた(点滴加療だったかもしれない)。

4.不運にも今年に入り、たまたま別な箇所、あるいは最初の梗塞部位に脳出血を起こしてしまった。(脳梗塞を起こした障害を受けた脳の部分に出血する事を出血性脳梗塞といいます。)

5.脳梗塞治療薬のために、止血しにくく大出血になってしまった。

そう考えると、非常に良く理解できます。

幸い救命されたようですので、一つの山は越えたようです。
良かったです。

脳梗塞と脳出血は隣りあわせで、いったん脳卒中発作を起こしてしまうと、その後の治療が難しい事がある事を示しています。

脳卒中の予防には、特に高血圧の管理が大切です。
そして、肥満は高血圧をもたらします。

脂肪細胞が直接高血圧をもたらすメカニズムも明らかにされつつあります。

日々の食生活を気をつけていきましょう。
シャロン首相も数十年前から減量を指示されていたそうです。

ただ、脳梗塞を起こした方で原因が卵円孔開存であると考えられた場合は、何らかの治療が必要と考えられますが、卵円孔開存があるからといって、脳梗塞の確立があがる訳ではないと報告されています。

ですから、脳卒中の既往が無い場合、積極的に卵円孔開存を調べる必要はありません。

和食腹八分目、酒半分。

私は、自分に言い聞かせています。
守れない日の方が多いのですが・・・

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