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2006年1月 8日 (日)

医師の人生はそれ自体がリスキー/子供を思う母の気持ち

先日は、あまりに若い医師と病棟の看護師さん方が疲れ果てていたため、感情的になってしまいました。

その後、日本医事新報4263号 73ページに、江原朗先生による「医師の長時間労働は医療安全に有害ではないのか」という論文が掲載されていました。

そのなかで、「日本の多くの勤務医は当直明けにも通常勤務を行っている。このため、最低32時間の連続勤務を行う事になる。」と明言されています。


私たちが経験してきたものは、普遍的に蔓延している状況だったのです。

実は当直は「ほとんど寝る事ができるが、必要時に呼び出される事もある」ということで、病院内に留まるよう医師に課せられた労働でした。

ところが、その実態は、不眠不休で働かされ、連続勤務となってしまっているのです。

もし、こういう労働であれば、超勤料が発生するのが普通ですが、多くの常勤医の場合ほとんど当直料というものは発生しませんし、翌日の休暇もありません。

看護師さんの夜勤明けにお休みがあるのは、夜勤が労働と認められているからです。

翌日の休みも無く、宿直料も発生しない根拠は、医師の当直は労働として認められてい無いところから来ています。

規定と実際が正反対という程かけ離れてしまっているのです。

多くの医師たちが、現状の当直は超過勤務であると、病院側と交渉しましたが無駄でした。

現在の診療報酬では黒字が確保できないからです。

医師も病院と共倒れになるので、それ以上言えない。

医師も自分の命が大切です。不整脈のため、当直の無い病院へ異動された方もいます。

なによりも、良い診療をしたいのですが、寝ないで30時間を越えてくると、ボーっとしてきます。短期記憶がやられるのが恐い。

会話が成り立たなくなってしまう。

油断すると、座ったまま寝てしまう。

ミスも恐い。

だから、辞めていっています。

今のお母様方は、子供を医師にする事を避けると言っているそうです。
IT業や金融業を勧めている。

さすが、女性は賢いです。すばらしい。

その方が、自分の子供の命の安全につながりますし、経済に強くなる。

そういった職業に就き、規定時間内の労働で稼ぎ、自由診療で腕のいい医師にかかればいいだけの話です。

医師やスタッフを雇い、クリニックや病院のオーナーになってもいい。

現状では、自分の子供の命と労働と賃金のコストパフォーマンスを考えるのなら、懸命な選択です。

今後、残念ながら、医療界よりも他業種へ優秀な人材の就職が加速するでしょう。

幸い、私は、若い時期の無理を幾つかの病気になりながらも、死なずに乗り越える事ができました。

もうあの労働はこの年ではできません。

それでは、勤務医を辞めて開業医すれば良いのでしょうか?

実は、今の医師は開業もままならないのです。

開業医の総収入2000万円との報道がなされましたが、この中には平均年間800万円のクリニック借金返済とその他の人件費、経費が含まれているそうです。

こちらに幾つかの実際の数字が載せられています。

この報道には経費が含まれていることが抜け落ちています。

病院勤務の仕事を続けるのも命がけ、辞めたくても開業できない。

借金返済のメドが絶たないので、最近は銀行も医師には開業資金を貸しません。

貸し倒れも多い。

たとえ、開業しても、腕が良くて、人気があっても、潰れてしまう。

先日も大変に人気の会った先生が、余りの自転車操業がつらくなり、閉院してしまいました。

医者を続けるのも、命がけのなかなか大変な世の中になってしまいました。

私は、路頭に迷わず、確実な医療を一歩ずつ続けられることを祈るばかりです。

私は、今後、優秀だからというだけで、医学部を受験する人は激減すると考えています。
現在、医師になる事は、何か目標がなければ、それ自体が余りにリスキーです。
まず、卒業がストレートでも24歳、一人前になる頃は30歳になってしまう。

IT業界のように、若いうちから社長はありえない。

医療は統制経済ですから、競争も行えない。

短い人生では、医師の人生そのものがリスキーなのです。

医療は、その仕事内容が好きな人だけが受験し行う職業になりつつあると思っています。

それはそれで良いのかも知れません。

本当になりたい人だけが強い意思を持って、医師になっていくのなら良い事です。

僕はあきらめないです。

それでも志高い良い医療を目指して命がけの若いスタッフ達がいます。

これからも良い医療をひたむきに続けていくだけです。

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