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2006年2月 9日 (木)

へたれ牛と人の症状

ダウナーやへたれ牛と呼ばれる自分では立てない牛が、米国で食用に加工され市場に出回っているという報道がなされました。

神経内科医の私は、へたれ牛の症状を何の不思議も無く考えていましたが、質問が多かったので、お書きする事にします。

プリオン病である狂牛病は、人で発症した場合はクロイツフェルト ヤコブ病(CJD)と呼ばれる事は先日お書きしました。

CJDはいろいろな症状で発症します。

物忘れ、なんとなくゆれる、振るえる・・・など、異常プリオンで障害された脳の部位に応じた症状が出てきます。

その後、症状は急速に良くなることなく進行していきます。

運動麻痺、小脳失調、振るえなどが出てきます。

また、さまざまな物忘れなど、高次脳機能障害もでてきます。

この時点でMRIをとっても見た目正常のこともあります。
症状の進行が形態異常より先行するのは、こういった脳が障害を受けていく病気では時々あることです。

数ヶ月で立つ事はできなくなり、すぐに寝たきりの状態になります。

脳波をとってみると、どの部位もシンクロした特徴ある放電が観察されます。
正常の状態では脳のさまざまな部位が独立して活動しています。
ですから、記録する部位によって、違う波形が記録されるのが普通です。

ところが、CJDでは、脳が広範に高度に障害されるので、それらの個別の波が全て消えてしまい、非常にシンプルな全誘導が一致した波形になっていってしまうのです。

そして、数年以内にほとんどの方が亡くなってしまいます。

生命を維持する脳幹部も破壊されるからです。

ここまで症状が進行してくると、MRIやCTでは高度に脳が萎縮(小さくなっている事)が観察されます。

へたれ牛の全てが狂牛病ではありませんが、狂牛病にかかればへたれ牛になります。

このように狂牛病の牛は、運動障害、小脳失調などが合わさり、歩行障害が進行するため、へたれ牛になるのです。
また、狂牛病の牛のビデオをみると「プルプル」しているのがわかります。
これは、人で言う「振戦」、振るえだと考えられます。

全頭検査は手間ですが、がんばればできるでしょう。

脳の一部をホモジェナイズ(すりつぶすこと)して、タンパク質を採取し、10×12×1CMぐらいのプラスチックのプレートで検査するだけです。

一つのプレートで96検体調べられるので(96ウエルアッセイ)、非常に安価に検査できます。

1万頭でも約100枚で済みます。

100枚のプレートは体積にするとみかん箱一箱ぐらいです。

以下のページに若い牛の全頭検査を省略しても行っても、余り費用に差が無い事が記載されています。

それは、アッセイの単価が安い事と、若い食用牛の数が少ない事によります。

食用牛の安全性については、こちらのページに要領よくまとめられています。
内容もよいと思われます。ご参照ください。

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