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2006年2月 6日 (月)

狂牛病/クロイツフェルト ヤコブ病/プリオン

狂牛病がまた話題になっています。

狂牛病は牛の病名で、人に同じ事が起きたときには、
クロイツフェルト ヤコブ病と呼ばれます。

クロイツフェルトヤコブ病は神経内科の病気なので、実際に何回か受け持ったことがあります。

狂牛病は、牛の脳や脊髄などの中枢組織が異常プリオンと呼ばれるタンパク質によって破壊されていく病気です。

プリオンというタンパク質は非常に分解されにくく、通常の加熱では病原性を保ったままのため、食物に多くの異常プリオンが含まれていると、食物から感染してしまいます。

あまり知られていませんが、実は人間や牛などの動物の中枢組織にプリオンというタンパクは普通に存在しているものなのです。

それでは、なぜ狂牛病の牛を避けなくてはならないのでしょうか?

動物の異常プリオンによって引き起こされる病気は、ヤギのスクレイピー病などでしられていました。

これらの動物の脳は異常プリオンによって高度に破壊されていて、スポンジ状にまで変化してしまっていました。

その後、クールー病の病理も同様で、人間でも同様のことが起きる事が知られました。

原因の究明のための研究が進み、これはプリオンと呼ばれるタンパク質によって引き起こされる事が判りました。

もともと動物の脳にはプリオンが豊富に含まれていますが、異常プリオンが何らかの原因で中枢に発生すると、もともとのプリオンが異常プリオンへと変化し、ネズミ算的に異常プリオンとなっていってしまいます。

この分解されない形となった異常プリオンの増加が脳を破壊するのです。

異常プリオンは腸から吸収され、脊髄を上行して脳に到達し、脳内で爆発的に増加する事が知られています。

実は、何の外的原因もなく、人のプリオン病のクロイツフェルトヤコブ病はまれに人に発症してきました。

それは、その人の脳で自然発生的に異常プリオンがある量発生し、健康なプリオンが異常プリオンに置き換わっていったからだと考えられています。

そのかわり、このような自然発生するプリオン病、クロイツフェルトヤコブ病は大変にまれな病気だったのです。

クロイツフェルトヤコブ病は神経内科医が診る病気ですので、私も大学病院、市中病院で複数の患者さんにお会いする事がありました。

非常に特徴的な所見を示し、進行も早い病気です。

これらの患者さんは自然発生的に発症したプリオン病の方々でした。

今恐れられているのは、はるかに高率にこのクロイツフェルトヤコブ病(CJD)が食物で起こる事が報告されているからです。

変異型(バリアント) クロイツフェルト ヤコブ病(vCJD)はさらにもっと発症が早く激烈で、しかも若年者に発症します。

イギリスで発生し、大問題になったのはこのタイプです

それは大量の異常プリオンを摂取したため、自然発症型プリオンと比較にならない大量の異常プリオンが脳へ到達し、ものすごい速度で脳が破壊されるからと考えられています。

もともと草食動物だった牛に、牛を食べさせて(共食い)肉食動物化させ、牛の肥育の速度を上げてコストダウンを図るところから、悪循環が始まりました。

最初は牛の間でもきっとまれな病気だったはずです。

ところが、へたれ牛として価値の無くなった(異常プリオンを持つ)牛をえさにしてしまい、爆発的に増えてしまった。

狂牛病の牛の中枢組織には大量の異常プリオンが蓄積しています。
本来なら、廃棄物となるべきこれらの牛が、エサとして健康な牛に取り込まれ、その牛がまた狂牛病になるという連鎖を繰り返しているのです。

そして、その牛を人が摂取することでクロイツフェルトヤコブ病は発症するのです。

これが変異型クロイツフェルトヤコブ病です。

私たちの脳にはもともと正常のプリオンが沢山あるということ。
異常プリオンを経口摂取することでそれらが異常プリオンに急速に変化していってしまうという事だけは記憶にとどめておいてください。
ですから、理論的には、一定量の異常プリオンを経口摂取すれば、どの人も変異型
クロイツフェルトヤコブ病(人間版狂牛病)を発症する可能性があるのです。

それが、狂牛病の牛の摂取を絶対にしてはならない理由なのです。
少量の異常プリオンでもその人の感受性が高かったり、中枢に届きやすかったりすれば、あっという間に脳を破壊する可能性があるのです。

私たちの脳には、正常プリオンが豊富に準備されているのですから・・・

私の親戚は、北海道の海の見える丘で牛を放牧しています。

夏のある日、ひざ上ぐらいまで来る牧草の中を、近くの子供たちが夕方の陽をあびて走り回ってかくれんぼをしていました。

草の背が高いので、小さな子供がしゃがんでしまうと、隠れてしまうのです。

本当にかわいい様子でした。

「この草はもう少ししたら刈り取って、サイロに入れて冬の牛の食料になるのだよ」と教えてもらいました。

牛たちはのんびりと横にある夏用の牧草地の草をいつまでもモグモグ食べていました。

「これが牛ってもんなんだなあ」と思いました。

そうやって、私は、つかの間の休日を、牛を見たり、海を見たりして過ごしました。

その牧場の牛はとてもおいしくて焼肉も刺身もおいしかったです。
でも、昼間のかわいい牛の姿を思い出して、悲しくもなりました。

良質なタンパク質確保のために、今後も人は牛を飼いそして屠殺していくことでしょう。

私はその事に反対もしないですし、また、北海道で焼肉を食べたいと思います。

これは重要で大切な事です。

でも、急ぎすぎて、自然の摂理を尊重しないと大きな誤りを犯してしまう。

命は物ではありません。

私たちは、島ができるほどクジラを殺し、その油だけを搾取する事はしません。

以前外国の方から、島から島へクジラの屍体を歩いていけた事をお聞きした事があります。

必要の無いクジラの体を海に破棄していたわけです。

クジラの隅々まで利用し、そのひげまでをバネゼンマイの材料として用いてきました。
そういう国民です。

日本人に自然を愛する国民性が残っていると信じたい。

幸い、プリオン病の原因と仕組みがこのように科学的に随分わかっているわけです。
人間の叡智を信じたいと思います。

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