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2006年4月 8日 (土)

過度の単純化は破綻を招く

多角的に物を見る視点というのは、ちょっとだけ努力が必要です。

いま、いろいろなことが過度にシンプル化されてしまっていると思います。

外食産業の味付けも、いろいろなことの報道も、音楽も、シンプルに刺激を強烈にして、沢山売れるようにしている。

こういった弊害があちらこちらで、破綻や破壊を招いています。

物事は本来、複雑な事象の絡み合ったものです。

ダシの効いた食事がおいしいのも、グルタミン酸のシンプルな味ではないからです。

担当の医師を悪者にして刑事告発するという、単純な結論を連発すると、医療システムは崩壊してしまいます。

なぜなら、悪意があって事故を起こしたわけではないからです。
犯罪者と同列では悲しすぎます。

ある事故が起きた時、担当者はその人でも、システムエラーが顕在化しただけかもしれません。

そういった場合、担当者を犯罪者として扱う事は避けなくてはいけない。

本来であれば、その後ろにあるシステムの問題点などに光を当てる必要です。
あるいは、そういったシステムを作った人たちに罪があるかもしれない。

いま、医師たちは非常に萎縮し困惑しています。

今後も多くの医師が辞めていく事でしょう。

実際、現場から数多くの腕のいいお医者さんが現役を退きました。
その勢いは加速しています。

また、
防御医療とよばれる医師が自分を守るための検査も増えていくでしょう。

腹痛には全て腹部CTを行っているという病院も現れました。
普通では浴びなくて良い放射線を被爆する事になります。

診断の確度を僅かに上昇させるためには、膨大な検査が必要なのです。

数少ない『最初からわからなかったから訴えてやる』というクレームに医療がおびえ、採血、レントゲン、CTが一セットになっているのです。

単純な下痢でもCTです。


『お腹がもっと痛くなったらまた伺います。』あるいは、『これから具合悪くなったら、救急でどこにかかれば良いか教えてもらえますか?』で済ませるだけの方が良いかもしれません。

行くたびにCT撮影されて被爆するより、よっぽどましです。
医療機関もホッとします。

お産も同じです。

このままでは、あらゆる血液型の血液が潤沢に用意されている、どんな不慮の事故にも対応し、新生児の急変にも対応できるセンターでしか
お産できなくなってしまうかもしれません。

血液は保存が利きません。

潤沢に血液を用意しておくという事は、潤沢に捨てる事になります。
普通の病院では許されない事です。

現状では、一都道府県に数箇所しかそのような病院は無いでしょう。

今後、子供を生むためにはそこに妊婦さんが殺到するかも知れません。

先日、私が極端に体調を崩した時、受診した場所は近所の病院でした。

あわてて、都心の有名な病院に駆け込まなくても良いと思いました。
その病院を信頼していたからです。

特別知り合いの有名な先生に診てもらうことも無く、普通の受診で、初めてお会いした若い先生から適格な診断を得て、健康を取り戻しました。

もしもっと精査したいなら、もっと検査が必要だったでしょうが、検査はせず、『もっと具合悪くなったらまた来ます』と申し上げました。

医療現場は建設的でない報道などに踊らされ、ビジョン無く迷走しているように思えます。

先日の『不審死で嘱託殺人』という報道も、今から考えると、『誤報』に近いと思います。

タミフル狂想曲もその一つです。

昨年度末、意味も無く大量に備蓄されたタミフル。

皆既に忘れていますが、日本は全国で何十億円ものタミフルを購入しました。
もちろん、地方自治体の税金です。

いったい、誰に何錠内服させるのか、原則すら存在しません。
備蓄したタミフルは、変異型(今は確認されていないやがて出現すると思われる)インフルエンザ用で、通常のインフルエンザ流行のためには使用できない事は先日お書きしました。
市場で不足しても使えない備蓄。

変異型インフルエンザが発生したら、予防投与するのでしょうか。
いつ?
上陸したら?
はやり始めたら?
何も決まっていないのです。

予防したり、流行を封じ込めるシステム無く、
タミフルを備蓄だけしても全く無意味なのです。

タミフルはとても良いお薬です。
でも、耐性ウイルスを作らないためにも、その方法論が必要なのです。


SARSの流行が抑えられたのは、献身的なWHOの努力による封じ込めが成功したからであって、特効薬や治療薬は未だにない事を思い出すべきです。ワクチンすらまだ実用化されていません。

今後もタミフルを毎年購入して破棄していくのでしょうか。

いろいろな未知の感染症が発生した際のネットワークやシステムを作るほうがずっと大切なのです。

破棄すべきタミフルを購入する数十億円でそのシステムを構築できたでしょう。

そうすれば、他の未知の感染症にも役に立った。

それであれば、国立感染症研究所にそのお金を託して、未来のシステム作りをしてもらった方が良かった。

毎年大量に税金が破棄されるよりずっと良いです。


私は、もっと豊かにいろいろな事を考えていけるようになれば、と思っています。

いろいろな事は、みんなが自分で考えて判断していかなくてはなりません。

安心したお産をふるさとでするためには、どうしたら良いのか。

地域で良質な医師を確保し、暖かい信頼関係を保っていくためにはどうしたら良いのか。

どんなに高給を呈示しても、現状では医師は赴任しないでしょう。
そういった問題ではない。

通常に人間らしく暮らせる仕事量で、ささえあって暖かく迎えてくれるなら、多少の薄給でも赴任する医師は沢山いるでしょう。

もともと、むくわれない職業である医師や看護師になろうとする人たちの大部分は心優しい人だと信じています。

患者さんの健康のために、ミスを犯さないように細心の配慮をし続けています。

もう一度信頼関係を取り戻す作業が必要だと感じています。

医療は支えあうものです。
本当に豊かで安心して暮らせるためのビジョンを忘れないようにしたいと思います。

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