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2006年6月22日 (木)

『医療崩壊』から・5

医療崩壊―「立ち去り型サボタージュ」とは何か 医療崩壊―「立ち去り型サボタージュ」とは何か
小松 秀樹

朝日新聞社  2006-05
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医療崩壊5章は『安全とコスト』です。

日本の医療費は抑制に次ぐ抑制がかかっています。

例えば、私たちが患者さんの背中の脊髄を巡る液を採取する危険を伴う検査は、ディスポーザブルの道具全て一式含めて1400円にしかならず、腋毛脱毛2本分のコストです。

ガンの疼痛を抑える結構訓練が必要な硬膜外カテーテル挿入手技はどうでしょう。
なんと、1300円です。
駅で売っている格安CDと同じですね。
しかもこの中には、カテーテル代、器具代、消毒薬などの一式が含まれる料金なのです。

『医療崩壊』には人件費抑制につながる問題点が触れられています。

医療費抑制が行き過ぎたイギリスでの医療崩壊や、アメリカにおける一定所得以下の切捨ての現状について簡単に述べられています。

医療機関の収入は患者さんから頂く医療費と、診療報酬と呼ばれる保険機構からの収入で成り立っています。

先ほどお話したように、これ以上少なくできないほど低価格に全ての保険診療費は設定されているので、日本では医療機関は、最低限の人員しか確保できません。

その結果、『わが酷の入院病床100床あたりの医師数はアメリカの五分の一、ドイツの三分の一、看護師は五分の一、ドイツの二分の一』であり、深夜勤務では『看護師二名で30-50人を管理』する状態になっています。

これは、厚労省の基準をクリアしている基準です。
深夜帯は、『検査も何もなくて、ゆっくりできるんじゃないか?』というのは大間違いです。

昼間の検査や手術の後の状態の把握、トイレなどへの付き添い、夜間の不眠やせん妄の患者さんへの対応、夜間緊急入院の対応、急変への対応、翌日朝の検査の準備など、夜間ならではのものすごい激務が待ち受けています。

それを、2人でしか行えない。

ミスするなと言うほうがむりです。

前章で、システムにエラーがあり、当事者がその人なだけだった、ということで、個人を断罪する問題点についてお話しました。

普通考えるなら、このような職場からは恐ろしくて看護師さんは逃げ出してしまうでしょう。

そうなのです。

看護師さんたちも肉体的疲労の辛さに加え、精神的重圧により、多くの職場から離脱し始めました。

小さなクリニックの常勤看護師の給料と、大病院勤務では夜勤手当など、手当てを除くとほとんど大差ありません。

多少、給料が減っても体とココロが楽な場所へ移動してきているのです。

また、妊娠出産を契機に仕事を離脱し、復職しない。

これは医師と変わりない移動の仕方です。

実際、救急病院で絶え間なく看護師募集の広告が出ているのはそのためです。

もう一つ、病院から認知症の患者さんが徘徊して行方不明になった例が取り上げられていました。

病院側は仕方なしにこの患者さんのためにガードマンを雇ったそうです。
ご家族はこの老人を引き取らなかった。

転倒、骨折のところでも触れましたが、トラブルを起こしやすい老人の駆け込み寺に病院がなってしまっている側面があります。

そして、対応する職員数は上記の如くです。

だからといって、拘束はできない。

多くの病院は認知症が高度であると、『安全が確保できない』理由で入院をお断りする状態となっています。

ここに治療難民が発生する素地が生まれているのです。

次章は『イギリス医療の崩壊』の章です。
極端に医療費を削減することは、どのようなサービスの低下につながるか、日本が推し進める医療改革の先を進むイギリスの現状についてのレポートです。

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