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2006年6月16日 (金)

オーバーランとエレベーター事故

私は、報道の首尾一貫性のなさに本当に仕方ないような無力感を感じています。

鉄道事故の後、盛んに報道されたオーバーランはどこにいってしまったのでしょう?

あの当時、10mオーバーラン、50mオーバーランといろいろなオーバーランが報道されていました。

たぶん、今でもオーバーランは発生しているわけですが、全く報道されません。

代わりに登場したのがエレベーター閉じ込め報道です。

これまでも、エレベーター事故はあったでしょう。
いきなり増えたかのような報道には問題があります。

結局、報道者には大切なものを見極めていこうとする姿勢が何も無い事が示されていると思います。

これからも、ささいなエレベーター事故が数ヶ月報道されていくでしょう。

そして忘れられる。

多面的にその問題点を探るとすれば、エレベーターに支えられた高層建造物社会の問題点や、劣化する可能性のある基盤の信頼性、ひいては、基盤を用いたATMなどの電子社会の信頼性にまで言及するなどを積極的に考察し、報道すべきでしょう。

あるいは、
好き勝手に自由化し、低コストを推し進めてはいけない分野が世の中にはあるという考えも必要でしょう。

郵便の方にお話を御伺いしたところ、既に郵便サービスは崩壊し始めたそうです。

建築物の検査も〝効率化〟のために自由化しトンネルとなりました。

この話ももうおしまいになってしまっていて、いまも民間監査機関の信頼性はどうなったのかさっぱり分りません。

現在報道で多発しているエレベーターの閉じ込めがここに起きました、あちらに起きましたという報道に終始していることに深い悲しみを感じます。

これまでに比べて増加しているのでしょうか?

梅雨の時期に基盤の不安定さが増すのでしょうか?

嫌なら、階段を登れといいたいのでしょうか?

さっぱりわかりません。

考察が全く欠落しているからです。

人々の不安感をあおるだけで、何もしない。

これでは、動物園に行き、〝ゾウをみました。シマウマをみました。カンガルーをみました。アリクイをみました。アリクイはかわいかったです。〟と同じ話です。

見たものを伝えているだけ。

なにも考えなくなっているのではないかと思っています。

オーバーランの報道はどこへ行ってしまったのでしょうか?


今年の夏の終わりには、エレベーターの報道も全くなされなくなっている事でしょう。

報道は
人の安心感やインフラを破壊しながら消費し、それらを荒廃させて生きていく生き物のようです。

医療崩壊の引き金を引いたのも、こうした軽薄なジャーナリズムでした。

2003年6月に報道された胃薬の副作用の報道はどうなってしまったのでしょうか?

今でも私たちは多くの患者さんにこのお薬を使い続けています。

あるいは、イレッサで救われている患者さんもいらっしゃいます。

イレッサの報道はどこへ行ってしまったのでしょう?

外来で、新聞の切抜きを多くの患者さんがお持ちになって、対応に追われた事を今でも思い出します。

私はその日の事を忘れません。午前中だけで70人もの患者さんが押し寄せたあの日を。

皆が忘れてしまったら、副作用もなくなるのでしょうか?

本来であれば、広く使われる薬剤の副作用について、考察がなされるべきで、そういった掘り下げた問題意識を持つ報道者がいれば、記事もまた違ったものになったでしょう。

なぜなら、考察や経験は人々の智恵として国民のなかに生きつづけるからです。

表面をなぞる事しかできない方々が、報道を簡単にやっつけ仕事で済ませているようにしか見えない。

何も生まない。

継続的で、建設的な意味を持たない報道の氾濫に深い悲しみを感じます。

今日は、グレー色の空から雨がしとしとと降り、私的な感情を綴りたくなりました。

青山通りの向こう側で246がほとんど閉鎖されるぐらいの大きな火事があったようですが、その報道は探しても見当たりません。

報道は決して良く考えられた公平なものではなく、ただ大きな構造を持つ、非常に私的なブロードキャスティングシステムである事を忘れてはいけないと思いました。

もう少し、何かを生み出す仕事をしたいと、彼らも望んでいるに違いないと信じたいものです。

あるいは、もう既に、報道は信頼を失い、ただのBGMのようにしか感じなくなっているのかもしれません。

信頼感を失うというのは、報道機関としては致命的な障害なのではないでしょうか。

私は、報道には考察と人格が必須だと思っています。

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