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2006年7月14日 (金)

『医療崩壊』から・9

医療崩壊―「立ち去り型サボタージュ」とは何か 医療崩壊―「立ち去り型サボタージュ」とは何か
小松 秀樹

朝日新聞社  2006-05
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最後の二章はさらに重たいです。
9章は『厚生労働省の問題』です。

HIVの問題や、ALSの痰の吸引の例をあげて、様々な問題に切り込んで行っています。

大切な事は、メディアが報道している事は真実とは程遠いという事です。

私も、外科医の先生の終末期ケアの報道に『病院内で不審死』という見出しが躍った事について問題を提議しました。

あたかも医師が故意に抵抗できない患者さんたちを殺していったという見出しでした。

事実は大きく異なる事はその後の報道を見ると明らかです。

HIVの問題についても、沢山の方々がスケープゴートにされました。

ALSの痰の吸引も実務上判断を避けて問題化するのを避けているだけで、実は解決されていません。

一番の問題は、厚労省は表向き、『努力して最善を尽くせば間違いの無い医療が提供できる』とアナウンスしながら、実情も知っているため、医療機関に『これぐらいをきちんとしておくように』という落しどころを示している点です。

患者さんがたはやはり、美しい表向きの姿を信じたいでしょうし、提供する医療機関は魔法は使えないので、実情をお話します。

ここに大きな行き違いが発生してしまいます。

小松先生は、『厚生労働省の行動原理は一貫している。医師としての実感からいえば、リスクをあってはならないものとして、実行不可能な非現実的規則で医療機関をしばっている。』(p.202)と述べています。

現実的な的確な指針を立てていく必要があるのですが、実は、厚労省が扱わなくてはならない問題があまりに多すぎて、パッチワーク的解決の繰り返しをする事で疲弊しきっているという側面もあります。

人の命を預かる省庁に、より多くの資金とマンパワーを廻す必要があると思っています。

私は、いろいろな省庁の方々の中でも、厚労省の方は思いやりのある、よく国民の事を考える真摯な方が多いと実感しています。

HIVの多面的な事実は本書を御読みいただきたいと思っています。

血液製剤によるHIV感染患者さんは日本特有だと思っていらっしゃる方も多いと思いますが、実は世界中で発生していたものなのです。

しかし、個人や省庁を攻撃するところで、全ては思考停止してしまい、未知のものに対する安全策構築への道しるべは呈示されないままになってしまいました。

メディアの悪しき一面がここでも発揮されています。

私は、日本には様々なメディアが存在するのにどうして、一本筋の通った心ある報告を自分で取材して自分で考えて書き上げて報道するメディアが無いのか、泣きたくなります。

医療機関や厚生労働省を悪魔に仕立てる勧善懲悪の報道の不毛性に国民のほうが気付き始めているのでは無いでしょうか。

本当に、悲しくなります。

最終章は、医療崩壊を防ぐためにと題された、一番大きな章です。

郡司先生に私は実際にお会いした事がありますが、ここに描かれていますように、本当にいろいろな事を静かにお話する先生であることだけを書き添えさせていただきます。

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