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2006年10月24日 (火)

高齢者医療の現状/日本テレワークさんとお話/介護難民にならないために

高齢者医療についての意見を聞きたいという事で、秋葉原で日本テレワークさんと待ち合わせをしました。

061020_07560001 始めは医科歯科の近くの、御茶ノ水のサータンダギーやミミガーの炒め物が絶品のおきなわ軒にしようと思ったのですが、『静かな個室なんてうちにないでしょ』という、おじさんのご意見に従い場所を変更しました。
うーん、残念。地下のお店だったのですが、立派なビルになりました。

日本テレワークさんは、フジテレビ系の制作会社さんのようです。

ホームページを見ると、いろいろな事をする、ダイビングまでこなすキグルミのガチャピンのふるさとのようです。

061020_19200001 秋葉原の時々御世話になっている稲田屋さんに個室を予約させてもらいました。

今作っている秋葉原駅クリニックのすぐ横です。

高齢者医療は、志高い先生方の自主的な往診診療などから、いくつもの変遷を経て、ダイナミックに変化してきました。

その過程は厳しい国家財政とニーズとの折衝の連続だったといっても良いでしょう。

日本の医療は中央統制経済下に置かれていますので、厚労省が全ての舵取りをしています。

厚労省が出す指針は全国一律ですが、高齢者医療は地域によって様々な特色があり、そのギャップも無視できません。

また、熱心な先生が居るかどうか、医療土壌がどんなものか、様々な要素が絡み合っています。


まず、高齢者医療の現状のオーバービューを説明しました。

高齢者医療の現状については実情を知らないと、理解がとても難しいので、資料を作って歴史的なことから今のところまでを分りやすく説明しました。

その歴史は、限られた医療的保険料をどのようにして、『医療的な事で困っている患者さんに集中するか』という戦いの歴史でもあったのです。

介護医療の分離もその流れです。

061020_19270001 秋葉原を行きかう数多くの列車や、多くの人々を医療システムは支えています。

説明しながら、都心の風景を見ながら考えていました。

その医療システムの中で、患者さんやご家族が苦労されている現場にずっと身を投じながら、日本のいろいろな医療の現場に触れる機会を与えられてきました。

私がお菓子の外郎(ういろう)をエクスパックで送ってしまったために、本と間違えて開けずじまいにしてしまったと、愉快な御電話を頂いた野の花診療所の徳永先生もその一人です。

人が死ぬ事は自然なことである』という事を美しく体現している、徳永先生のところに御邪魔した初夏の日は人生で忘れられない一日となりました。

これまでのオーバービューを大急ぎで作った資料で終えました。

つぎは、私なりのこういった混沌とした医療システムを『上手く泳いでいくためのコツ』 についてです。

そういったコツをつかめないと、『介護難民』になってしまうからです。

 

数年前から厚生労働科学研究の結果を幾つかの論文として発表していましたが、少し難しいところも含まれて居ます。

そこで、なんとタイムリーな事に、難病とケアに、『現在の在宅医療を乗り切るコツ』みたいな原稿依頼があり、書き終えたばかりだったので、それをお持ちしました。

どのようなシステムに変更になっても、患者さんや家族が上手くこの医療情勢を乗り切っていくためには、以下の二つの要素が不可欠であると思っています。

このブログでも繰り返し述べたように、それは、医療情報伝達(medical information transporter: MIT)と医療生活計画(medical life planer: MLP)です。

様々なところで、いろいろな方法が議論されていますが、なかなか、その本質的なバックボーンに到達できていない議論が多い。

確かに様々なこまごまとしたテクニックは必要でしょう。

ですが、その『背骨』になるべき思想が無い議論は建設的になりにくい。

彼らは、御調町の有名なユニットのお話を比較にお持ちになっていました。

御調町のモデルは、日本の介護医療のモデルとなったぐらいのものですが、そのまま東京などの大都市には当てはめる事はできない。

不幸な高齢者の患者さんが多く生まれているのも、何かのひずみや、ピットフォールがあるからです。

それは何なのか。

そういったものを乗り切るための技術のバックボーンの一端を、私達が参加させていただいた島崎研究班は明らかにしてきたのです。

日本テレワークの方々は若い方々でしたが、話が進むにつれて、次第に内容をよく理解してくれたように感じました。

報道系の方々ですので、もう一つ強調した事がありました。

それは、『医療者の良心』ということです。

私は、本当にいろいろな地域の沢山の先生達にお会いし、その傍で働くスタッフ達にもお会いし、いろいろな事をおうかがいせてもらえました。

どの方々もとても良い先生やスタッフでした。

記事にする事を逸してしまっていますが、慢性期医療に尽力している八王子にある永生病院の安藤先生はとても面白く、そして、現場とともに過ごされていました。

スタッフ達もとても生き生きと患者さんに対応していました。

そして、日本のこういった、ケアユニットは世界に引けをとらないものです。

テレワークのスタッフさんたちに、私は、『報道は、商売だから、注目されたり、面白くするためにセンセーショナルな取り上げ方をしたいという気持ちはわかる。でも、一方で良心的で熱心な高い技術の医療者が、(このように)がんばっているので国民が安心できるような報道もして欲しい。』とお願いしました。

外国の医療政策がすばらしい、という論調もありますが、本当にそうでしょうか?

なかなかお金のかかる検査を受けさせないように受診抑制をかけたり、かかれる医療機関を制限したりして、医療費を抑制している国々もあります。

そういった国々では、専門医にたどり着くまで数ヶ月もかかってしまったり、自分の持っている保険証でかかれる病院がものすごく遠くにしかないという事もありうるわけです。

その人間が受けられる医療をあらかじめ決まっていて、それ以上の治療方法を医師が説明する事を禁止している国もあります。

日本では、全ての治療法を説明しなかったから、といって、患者さんが怒ることもできますし、自分の選択した医療機関にいきなりかかることもできます。

私は彼らに言いました。

『死生観が反映される医療というものは、その国の文化と切り離せないもので、日本の医療というのは、日本の優しくいたわるという文化を背景に生まれたものである』と。

医療費の厳しい財政状況は続いていて、不都合も沢山あります。
改善しなくてはいけない部分も沢山あります。

そのなかで、上手く医療を泳いでいくコツは、決して『名医を探す』ことではありません。

名医を探したところで、彼が患者さん全体を救ってくれる保証は無いのです。


本当に自分を救ってくれる医師は、自分の家の裏で開業している先生の可能性の方が高いのです。

全人的に診察してくれて、先ほどの医療情報伝達や、医療生活計画をお話してくれる先生がいたら、どんなにか楽な事でしょう。

まだ、医療者側もこれらの要素を自覚して、患者さんに説明するところまで至ってないかもしれません。

今後、私はさらに心して、こういった観点からも患者さんをサポートするための医療を心がけなくてはなりません。

大変に混雑している名医の先生に、難しいところの指針を頂くのは良いかもしれません。

でも、持続的なサポートをしてくれるのは、そういった先生方だと思ってます。
本当に患者さんを救う医療は誰が提供するのか。
ピンポイントでお会いする先生の果たす役割と、持続的にお会いする先生の役割は異なるでしょう。

私の身内は、カゼでもケガでもずっと同じ北海道の地元の郊外の消化器内科医にかかっていますが、『東京の名医』にかかりたいとはいいません。
その先生が親身に相談に乗ってくれているからです。
それで良いのです。

『自分の受けている医療が十分なものではない』といつも不満に思うことほど悲しい事はありません。
もちろん、その医療が不十分なものでは仕方ありませんが。

そういった話もしました。

秋葉原駅クリニックもそういった情報のクロスロードになる事を願って作ったものです。

ともすると、無秩序に医療への不満を煽ることは、本当はあまりその人の医療生活設計には寄与しない『名医』の先生方へのミスリードをすることになり、患者さんが良質な情報を得る事に失敗する上に、その先生方の良質な診療も阻害し、社会的なウエルフェアから離れていってしまうことにつながります。

最初の著書の『副作用』も、副作用の不安を煽るということは避け、体の仕組みを理解した上で、薬と体の関係をお知らせするという思いで作ったものでした。

今回の情報提供が、良い番組作りの参考にしてもらえるといいと思っています。

多くの方々が安心できる、良質な楽しい番組が増える事を願っています。

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