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2006年11月30日 (木)

胃潰瘍と胃癌と秋葉原駅クリニック/ピロリ菌/マーシャル教授のお話

忙しく働く人には胃潰瘍が多く見られます。

胃潰瘍や胃癌と深いつながりのある、ピロリ菌の研究でノーベル賞をとられたMarshall教授のお話が聞けるということで講演会に行ってきました。

午後の診療が終わってから全然時間ありません。

馬橋から西日暮里、浜松町へ行きタクシーに乗り込みます。既に40分遅刻。
胃潰瘍のプレゼン聞く前に自分が胃潰瘍になりそうです。

研修医の頃、胃潰瘍の患者さんの胃カメラを御手伝いしながら、二晩近く寝てなかったせいで自分が胃潰瘍の痛みに苦しんだ事を思い出しました。

マーシャル先生は怖い方かと思ったのですが、ノーベル賞授賞式でも人々を笑わせ、プレゼンテーションでもパチンコをしている様子を"mystery of Japan"と写すなど結構、御茶目で気さくな方でした。

お話も上手で楽しい。

自由な発想をして新しいものを作る方というのは、こういった人を楽しませる、楽観的な資質が必要なのかもしれません。

マーシャル先生のご発表もさることながら、ピロリ菌の最近の知見に触れられたのは大きな収穫でした。

日本の胃癌患者さんは年齢とともに増加します。

ピロリ菌はその癌の最初の元を作るinitiatorというより、小さな癌の芽を癌化させていくpromotorとして重要であることが示されました。

胃癌を内視鏡的に切除した後、ピロリ菌を除菌すると次の新たな癌の発生が少なくなります。

これは、小さな癌を発生させた胃には次の癌が起きてくる素地があり、ピロリ菌退治がその素地を改善させるためにとても重要である事を示しています。

ピロリ菌はC型肝炎の肝炎ウイルスと同様、人の体に持続的に感染するという、持続感染症と考える事が必要です。

面白いデータが示されました。様々な国での感染率です。

アジア、タイやインドなどではピロリ菌の幼少時から感染率がとても高い。

一方、ヨーロッパなどでは終生感染率は低い。

また、日本ではピロリ菌により胃全体に炎症が起きるのに対し、それ以外のアジアの国では胃の出口の噴門部に多く炎症が見られるという、炎症範囲の差も重要であるとのことでした。

日本はその中間です。幼少時に低く、40歳代を境に急激に年齢とともに増加します。
若年者の感染制御と中高年の治療が大変重要である事を示しています。


国際医療センターの上西部長のお話はとても明快でした。

それでは、どのようにピロリ菌が存在するかどうかを調べるのでしょうか?

内視鏡を用いない検査としては、大きく分けるとピロリ菌の感染に対応して発生する抗ピロリ菌抗体を調べる方法と、尿素呼気検査の二つがあります。

尿素呼気検査はピロリ菌により分解され体内に吸収された検査試薬を呼気から検出するものです。

試薬は通常の二酸化炭素に分解されたものを検出するので副作用はありません。
原理はこちらに図解されています。

ピロリがいたときの除菌方法についての議論も活発になされていました。

プロトンポンプ阻害薬(PPI)+抗生物質1+抗生物質2
が基本です。

PPIは効果の高いものを高濃度で使う必要があります。

マーシャル先生によると基本となる抗生物質1はアモキサンというお薬のほかに、ビスマスも良いのでは無いかということでした。

除菌失敗後も繰り返し共通で使う抗生剤です。

抗生物質2はクラリスロマイシンがスタンダードですが、メトロニダゾールなどに変更する必要もあります。

Peptobismol1 こちらの抗生物質は除菌の成功の可否により変更する抗生剤です。

ビスマスは海外ではPeptoBismolという派手なピンクのイメージで売られています。

こちらにそのホームページがありますが、全てピンクで統一されています
ピロリ菌に対するビスマスの効果が示され、また見直されているようです。

子供用のこちらのページも面白いです。

日本の防腐剤であるクレオソートから作られる正露丸とは全く異なるものです。

現在日本の保険診療で認められている方法は一つですが、それは、ピロリ菌除菌を保険収載するという色彩が強く第一歩のことでした。

ところが、今ではそのプロトコールが足かせになって他の方法が取れなくなってしまっています。

今後、組み合わせを幾つか選択し、有効なチョイスができるようになって行くようです。

さて、さらに面白いお話がありました。

胃癌は胃の細胞がそのまま癌になって行くと思いがちです。

ところが、骨髄幹細胞が胃癌の原因になっているというのです。

World J Gastroenterol. 2006 Jan 21;12(3):363-71.  Links

Stem cells and cancer: evidence for bone marrow stem cells in epithelial cancers.

マーシャル先生の示された一枚のスライドはそれを示していました。

移植された骨髄由来の幹細胞である事を、移植された細胞である事をFISH(ある遺伝子を標識する方法)と、幹細胞である事をしめすGFP(緑色の蛍光を発するタンパク)の二重染色で確認し、なんとそれがまさに胃癌の中に散在していたのです。

この実験はとても巧妙な実験で、ある動物のもともとの骨髄細胞を全て破壊し、別な動物の骨髄を移植します。

ピロリ菌によって胃炎、胃癌を惹起し、その胃癌の組織を調べるという実験でした。

慢性炎症があると、その部位の細胞が癌化していくだけでなく、血中を巡っている骨髄幹細胞が癌化に関与するという事は、非常に面白い事実です。

血液中を巡る幹細胞は常に体中を見張っていて、炎症がある部位に定着し、組織の修復に役立っているのかもしれません。

それが暴走すると癌化する。

本当に面白い事実です。

内視鏡が無い状況での、ピロリ菌の感染状況と除菌、胃炎や胃潰瘍の治療方法とその限界と言うものが解りました。

ストレスで胃が荒れない人はいません。

秋葉原駅クリニックが人々の胃を癒す側面がもてたらよいなと思いました。

有意義な一日でした。

(テトリスノカケラ)

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