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2007年2月28日 (水)

タミフルの副作用/副作用の可能性

タミフルによる異常行動が報道されています。私は、一つの可能性をお話したいと思います。

副作用―その薬が危ない 副作用―その薬が危ない
大和田 潔

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私は、タミフルの副作用の可能性について、自分の経験を含め、拙書で触れました。

タミフルには特異的な作用があります。同時にインフルエンザそのものでも異常行動が多いことも知られています。クリニックには、インフルエンザAの患者さんがちらほらいらっしゃっています。回復が早める効果を発揮するためには、発症初期の内服が重要です。

小児科学会の発表、異常行動はタミフルとの因果関係は不明である・・・という見解が出されています。

丁度、インフルエンザの異常行動が起きやすい時期と、タミフルが最も効果を発揮する時期が一致していて、処方される時期と異常行動が起きやすい時期が一致しているのも、事情を複雑にしています。

ただ、私は次の事は少し考慮しても良いのでは無いかと思っています。

今、タミフルを服薬すると、脳を積極的に興奮させ訳がわからない異常行動に走る・・・と言う報道がありますが、私は実は逆では無いかと思っています。

どういうことでしょう?
それは、人間の脳の仕組みにヒントがあります。人間の脳は大脳皮質が抑制系に働いていて、感情や原始的な欲求などを制御しています。
上述の拙書75ページに書きましたが、この抑制系の仕組みが睡眠薬などで不十分に活動を低下させられると、逆に意識障害を伴った興奮状態、つまりせん妄になるのです。

私は、入院患者さんでよく見られ、そしてとても厄介なこの「せん妄」について多くのページを割きました。それは、興奮状態が脳の興奮ではなく、薬剤による中途半端な抑制によって返って引き起こされるという事を知って欲しかったからです。

タミフルの中枢作用は鎮静作用です。学術論文を作成中の症例報告もタミフルによる過沈静の方についてのMRIや脳波を含めた臨床所見についてです。

私は、タミフル内服後の異常行動は、インフルエンザによる脳症が主だと思います。でも、もしかすると、タミフルによる中枢の軽度の中枢抑制作用が、その脳症を修飾しているかもしれません。今後、タミフルの中枢抑制作用によるせん妄の可能性が注目されるのでは無いでしょうか?
特に、異常行動の後、深い睡眠状態(意識障害)になった方も報告されている点も注目すべき点だと思います。タミフルの中枢抑制がさらに深くなって、睡眠状態になったと考えれば辻褄があいます。

ベンゾジアゼピン系薬剤で中途半端に覚醒している、せん妄の患者さんは、目がうつろで、輸血ラインを引きちぎり、「鳥を撃ちに行く」とフラフラと廊下を歩き出したりする事があります。翌朝、全てをきれいさっぱり忘れている事が多いです。どこか、今回の「異常行動」と似ているところがあります。

ただ、タミフル内服の有る、無しで異常行動の比率に違いが無いという報告もありますので、冷静な対処が必要です。その、内容について、もう少し検討を加える必要があるかもしれませんが。

タミフルは有用な薬剤です。適切な内服により症状が早く楽になります。
大切な事は、お子さんを守るために大切な事は、インフルエンザを発症して高熱の数日間は傍についてあげて、見守ってあげる事だと思います
なぜなら、インフルエンザそのものでも異常行動が起きるだけでなく、具合の悪いお子さんは心細いものだからです。

私は、よくこの点をご説明したうえで、先日も呼吸器症状の強い方に吸入薬のリレンザを処方しました。外用薬である吸入なら、中枢作用がほとんど無いからです。また、何例も著効例を経験しています。

確実な情報と的確な判断。
それが大切だと思っています。

また、クリニックの待合の副作用の本を御読みになられた方が、「俺、医者の処方全部飲まないで、勝手に薬変えていたけど、先生の言うとおり、医者と相談してみるよ。」とおっしゃってくれました。
私が薬の副作用の本を書いたのは、怖がらせるためではなく、このようにメカニズムを知って、医師と良いコミュニケーションを取って欲しいかったからなので、とてもうれしかったです。

さらに、先日、救命できた患者さんのご家族からお礼の電話をいただきました。
今日は、タミフルの副作用の報道から考察した事をお書きしました。

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