« 哺乳時の片頭痛治療 その1 | トップページ | 子供が優秀に育つ建築 »

2007年9月24日 (月)

授乳時の片頭痛治療 その2 (トリプタンの使い方)

授乳時のトリプタンの用い方で大切なのは

◇1 授乳時にお薬を飲む影響についての総論
◇2 トリプタンの選択
◇3 トリプタン内服時の哺乳方法


の3点だと思っています。
内服をしてはいけないお薬については、前回お話しました。
ちょっとした工夫で、
頭痛のひどいお母さんでも、授乳を続けられます。
諦めないでがんばりましょう!

◇1 授乳時にお薬を飲む影響についての総論
一つ目はどのお薬でも共通のことです。
こちらに、母乳への薬物の移行について詳しく述べられています。
お母さんがお薬を内服すると、薬物は吸収され血液の流れに乗ります。
母乳は血液から作られるので、薬物も母乳へ移行していきます。
薬物のタンパク質とのくっつきやすさや脂肪への溶けやすさで、その移行度合いは変化する事が述べられています。
結果的に、多くの薬剤では、お母さんの血液のなかの薬物の濃度の数%の濃度で母乳へ移行することが知られています。
その母乳を飲んだ赤ちゃんはさらにそのなかの一部を吸収することになります。
ですから、高濃度で常用するお薬でなければ、あまり問題にならない(飲んではいけないお薬を除きます)と考えられるのです。
でも、できるだけ、お薬の影響を避けたいですよね。
そういうときには、以下のダイアグラムへ進む事になります。


◇2 トリプタンの選択

日本では、イミグラン(スマトリプタン(化学名))、レルパックス(エレトリプタン)、ゾーミッグ(ゾルミトリプタン)、マクサルト(リザトリプタン)の4種が使用できます。
母乳との関係はあまり報告がありません。
でも、どれも、内服後24時間は避けましょうという一本調子の説明しかありません。もう少し詳しく見てみましょう。

レルパックスやゾーミッグには詳しい情報は有りません。
マクサルトについては、ラットのデータですが、母乳中へ高濃度の移行が報告されています(下の方の nursing motherの項を参照してください)。
これらのトリプタンを用いる場合は、内服後24時間の哺乳は避ける方が良いでしょう。

唯一データが豊富なのは、イミグランだけです。
ですので、授乳中はイミグランでコントロールするのがベターだと考えられます。
イミグラン内服後、成人の体では、こちらに示すような血行動態をたどります。

イミグランは非常に立ち上がり早く、半減期(薬の血液濃度が半分になる時間)も2時間と短い薬剤です。
薬剤の血液中濃度は2-3時間にピークを迎え(数10ng/mlという低濃度)、4時間後には下がり始め、24時間後には0になります。
反復投与による蓄積もありません。

それならば、内服後、何時間後から哺乳を始めてよいのでしょうか?

◇3 トリプタン内服時の授乳方法
こちらでは、内服後6-8時間後の母乳を破棄すれば良いでしょう(・・・the common practice has been to discard breast milk for 6 to 8 hours after taking the triptan. ) とかかれています。 

また、メルクマニュアルには、イミグラン(sumatriptan)であれば8-12時間の母乳を破棄すれば良いでしょう。(Expressing and discarding the milk for 8-12 hours after a single dose is suggested to reduce the amount present even further. )と書かれています。

頻回に母乳を与えなくてはならない場合、24時間待つ、というのとこちらの表現は大きな差を持つと考えられます。

でも、いつから母乳にイミグランが現れてくるかは難しい問題です。
その時のお母さんの母乳を作るスピードや、体調などによるからです。
ですが、内服前に貯まっているものなら大丈夫と考えられます。
内服後数時間以内なら大丈夫かもしれませんが(上記)、破棄したほうが無難と考えられます。

これらを総合すると、私はこう考えて良いと思っています。

1.授乳中はトリプタンの中でもイミグランをできるだけチョイスすべき。(データの多さと、母乳への移行比率から。)

2.内服前に貯まっていた母乳は哺乳できるので、まず哺乳してから内服する。

3.イミグランは血液中濃度の立ち上がりが速く、分解も早いので、内服後に貯留してきた母乳は破棄すればよい。
破棄する時間は内服後8-12時間の間のもので大丈夫(メルクマニュアル)。他の文献によると、8時間までで良い。

そうすれば、授乳後すぐに内服したとして、2-3回保存乳や人工乳にすれば良いだけです。時間が開いてきているときには1回で済むかもしれません。

4.内服後24時間の間の母乳を破棄できれば完璧。
母乳以外の哺乳回数は8-12回ぐらいになります。時間が開いてきているときには数回。

あとは、お母さんの考え方でよいです。
一回でも内服したら、ずっとあげられないという事は絶対にありません。
少なくとも24時間で血液中からは代謝されてなくなってしまっているのですから。

あまり神経質にならずに、ちょっと工夫するだけで大丈夫です。
片頭痛はきちんと治療しないと数も程度も増えてしまい、かえってお子さんのお世話に多大な支障をきたします。
適切な治療を続ければよいのです。

予防薬を飲んでいても、妊娠がわかった時点で止めれば大丈夫です。
私は、元気な赤ちゃんを産んだお母さんを何人も拝見しています。

出産、子育てはつらいけれども、楽しいこともイッパイあります。
頭痛なんかに負けないでがんばっていってもらいたいと願っています。
もちろん、簡単に母乳を諦める必要もありません。

あまり具体的な情報が無く、クリニックでもゆっくりお話する時間も取れないことが多いので、今回まとめてみました。
参考にしてくだされば幸いです。

|

« 哺乳時の片頭痛治療 その1 | トップページ | 子供が優秀に育つ建築 »

02.頭痛」カテゴリの記事

04.栄養運動医療アドバイザー / 医療コラムニスト」カテゴリの記事

08.新クリニック/未来の医療をめざして」カテゴリの記事

11.お役立ちの話題」カテゴリの記事

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/130679/16542562

この記事へのトラックバック一覧です: 授乳時の片頭痛治療 その2 (トリプタンの使い方):

« 哺乳時の片頭痛治療 その1 | トップページ | 子供が優秀に育つ建築 »