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2008年4月15日 (火)

きよしこ

『流星ワゴン』の重松さんの本を読みました。

きよしこ きよしこ
重松 清

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『きよしこ』です。
どもり、吃音の少年のお話です。
でも、言いたいことがきちんと言えないのは、どもらなくても一緒ではないかと思いました。
そして、泣けてきました。

少年は大切なところでどもってしまう。
どもってしまうことが嫌でコミュニケーションがとれない。
もどかしい。
孤独になる。
怒りすら伝えることができない。

でも、彼の周りの人々もまた、不器用で人に自分の心を伝えることができません。
すらすらと話せても、決して上手に自分の心を伝えられない。

少年はまっすぐです。
正しいことをきちんと正しいと感じる心を持っている。
どもって居ても、時間がかかっても、それをきちんと伝える。

『本気で伝えたいことなら(言葉が不完全であっても)伝わる』

人は、伝えたいことをうまく伝えられない生き物です。
良く聴く。
待つ。
悟る。
心を掬う。

現代は世知辛い世の中です
できるだけ甘言を使い、いろいろな物事を押しつけ、だまし、できるだけ相手から吸い上げようとする。
商品だけでなく、医療にもそんなものが横行しています。

本物を伝えるのは難しい。
でも、それをあきらめてはいけないし、時間がかかってもやるべきです。

私は人のお話を聴くことが多い仕事です。
主人公のように上手に相手を思いやれないかもしれない。
思ったことをうまく伝えられないかもしれない。
そもそも、人とはそう言うものかもしれない。

でも、大切なことはそのことを、その非効率さを知って自覚していること
だとこの本は伝えます。大切なことは、歩み寄るためのレセプターです。
珠玉の本です。
『流星ワゴン』のぶきっちょなおとうさんと、かわいい息子さんにも涙しました。
本当は自分の文章を書かなくてはならない時間を割いてしまいました。

重松清さんの文章は受験問題にも良く使われるとのことです。
国語の受験問題には、たくさんの事を考えすぎて、どれも正解に思えてことごとく苦労した私ですが、受験をきっかけに最初から良質な小説にふれる機会を得られる事自体は大変に有意義だと思っています。

(私は今でも、小説に正解を求める形自体が、形骸化していておかしいとは思っています。
 ネイティブの方がことごとく英語の設問に不正解をして、受験生が正解を答え、『これは何語ですか?』と設問者に聞かれたという笑い話を思い出します。
 国語や現代文、英文の正解とは、設問を作った人と技術を学んだ受験生という狭い範囲のやりとりにすぎない訳です。それを競うゲームだと早く気づくべきでした。
 名探偵コナンのように、文章中に散りばめられたヒントをうまくつなぎ、決して作者の意図している内容ではなく、設問者の聞いている問いに答える技術を磨くと言うことのみが重要です。そこには、作者は不在でよいわけです。事件の現場が孤島でも列車内でも船の上でも良いように、題材となる国語の文章や詩はどんなものでも良く、単なる材料にすぎません。
 問題文に読み入ってしまって、『この人って、本当は良い人かもしれない』『続きをよまないと何ともいえないな』などと色々と考えあぐねてしまったりしていた私は、正解を見ても、どうしても正解に思えず、減点にいつも涙していました。
 小説家さんや、詩人さんに直にお会いすることが訪れ、彼らが自分の作品の設問を見ても、正解が解らなかったという話をお伺いするようになり、『なーんだ』と20年たってやっとホッとした次第です。
 設問者は作者の意図なんか解って設問を作ってなんかいません。作者だって正解できないのですから。
 受験の国語はゲームにしか過ぎません。設問を作る分析屋は技術者であり、技術者の設定をいかに理解するかが受験では大切です。 
 小説の真の心を理解する受験では必要ありません。設問者は単に、国語の受験の技術をどれくらい習得したかを『文章という材料を使って』受験生を試しているに過ぎません。
 自分の心を殺して、設問の文章を科学的に分析する技術を磨くことに徹すれば良いだけです。逆に言えばとても簡単だったのです。小説の本当の意味を聞かれたら、それこそ、もっとも難しい問いになってしまったでしょう。気づくのが遅かった。
 良い小説は逃げません。受験が終わったら一生かけて、こころを豊かに本を読み続けましょう。つまらない設問者はもういません。感銘を受ける自分がそこにいるだけです。日本には良い小説があり、今もたくさん生み出されています。)

自然科学を切り取る論文のように、小説は、人々の心の科学を切り取ります。
その切れ味の鋭さに感銘を受けました。
人の心に触れる機会の多くなる医学生さん、看護学生さん、そして、彼らを目指す若者にこそ読んで欲しい小説です。

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