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2011年5月 4日 (水)

けなげな努力を誰も否定はできない

少し前に、こんな論文が話題になりました。

Lancet. 2004 Jan 31;363(9406):345-51.
Risk of cancer from diagnostic X-rays: estimates for the UK and 14 other countries.

Berrington de González A, Darby S. Source Cancer Research UK Epidemiology Unit, University of Oxford, Radcliffe Infirmary, Oxford, UK.

医療用放射線機器、たとえばCTがたくさんある日本などの国では、
他国に比べて、医療用放射線による発がんリスクが高まるだろう、
という論文です。

もちろん、医療用放射線機器は
体に安全な「上限値」以下の放射線で検査を行います。
それでも、そういったことが議論されているのです。

こういったグラフも公開されています。

そのバックグラウンドには、
放射線というのは、
浴びる量によって発がんリスクが高まるだろう
という考えがあります。

慢性的な障害の発がんリスクと放射線は
「いくつ以下なら大丈夫」
といった値を設定することはできなくて、
量が多くなればリスクが高まる
という概念のもとに論文は書かれています。

医療用放射線でもこういったことが議論されているのです。
なので、心配だからCTをしたいという患者さんには、
放射線のデメリットと医学的なメリットをお話しして、
できるだけ避けるようにお話ししてきました。

あるいは、バリウム検査と内視鏡を選択できる検診の場合、
内視鏡をおすすめしてきました。

慎重に書かれた医学論文ですら、
このような感じです。ですから、
「基準値を引き上げました。それ以下なら大丈夫だから、
余計なことはするな。」
とは、だれも言うことができないはずです。
科学的なコンセンサスを無視して、
放射線に感受性の高い子供たちや女性たちの命を粗末にする発言をすべきではありません。

今回のことは、
だれが国民、住民のことを真摯に考えているのか、
あぶり出す結果となったと思っています。

この論文が正しいかどうはさしおいても、
そういったことが医学雑誌の一流誌に掲載されるというのは、
「できるだけ、余分な放射線は浴びなければ浴びないほうが良い」
という
バックグラウンドが医療界に共有されていることを意味しています。

できるだけ浴びる放射線量を減らす努力はすべきです。
地方自治体のけなげな努力を否定することだけは、
誰にもできないはずです。

いまこそ、為政者たちは、
国をこれから背負う子供たちのために
良い判断をしてもらいたいと思っています。
県は人間が決めたさかい目でしかありません。

日本の国土と人々の命を守るために、
良い判断をしていただきたいと切に願います。

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