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2013年9月16日 (月)

NAUSICAAの示す世界 / 動物行動学からみた人間 / オンカロは作れない

人間はどういう動物か (ちくま学芸文庫) 人間はどういう動物か (ちくま学芸文庫)
日高 敏隆

筑摩書房  2013-06-10
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「自然との共生」というロマンチックな思想に対して、日高先生は自然界の生き物たちを観察した結果、反対を唱えています。

『自然界にはある種のバランスと調和があるだろうと思われていたが、どうもそんなものはなくて、バランスは結果であるということになると、たとえば、「生態系の調和を乱すな」というスローガンは行き場を失ってしまう。
見事な共生という話も、じつはみんなが利己的にせめぎ合った結果として収まったところが共生に見えるだけだとすると、「自然と人類の共生」をうたっても、どうしたら共生できるのかというのは難しい問題になる』
上著pp.141

この文章に集約される。どこかに調和をもった美しい自然があって、人間がそれを壊している、といった視点だけでは圧倒的に理解不足。汚濁されて生き物が住めなくなった河川にも、人が住めなくなった場所にも、細菌、真菌類や動植物などがしぶとく生き続けているに違いありません。スリーマイル島の高放射線の原子炉の中は藻だらけでした。藻にとっては楽園。敵が存在しない、その場所は彼らの楽園。

「清浄な水や空気、植物などといった自然は、人間が生きていくために必要なものだからこそ、人間はそれを守ろうとしている」と考えるべき。人間は、生物としての利己的欲求の面から自然を大切に考える。川に重金属が流れても困るし、空気が吸えなくても、土壌が汚染されても生活に困る。利己的な他の生物と同じです。

ナウシカに出てくる王蟲も、ヒドラも、ムシゴヤシもオーマも勝手に生きています。人間たちも一緒。その結果が未来になるだけ。腐海を含めた彼らの世界は、生存をかけた単なる利己的せめぎあい。それが、バランスを持ち共生している。ナウシカのストーリーは、自然界の摂理をそのままトレースしています。洞察性の違いから、エコロジストと咬み合わないのも当然。

Th18 動物行動学から見た人間を考えながら、「Why Nations Fail」の収奪的経済と包括的経済を読み進めると奥深いものがあります。人間は、もともと持った生物学的特性の延長でしか、人間の世界を作ることができない。様々な政治の形も同様。知恵を張り巡らせて複雑に作られているように見えるけれども、シンプルなものです。

今日は嵐の日。外では風と雨が吹き荒れています。
人間が、コントロールできない自然のすそ野で、必死に生きて未来を紡いでいくことしかできない事を教えてくれます。

もんじゅが土砂災害で孤立したというNHK報道がなされました。「もんじゅの監視装置でトラブル 復旧のめど立たず」とのことです。以前より一本道しか無くて、ちょっとした災害で孤立することが指摘されていたとも報道されています。

扱う火の大きさに比べて、なんとのどかなことでしょう。
もんじゅはまだ未点検部品1万点以上。追加投資数十億。総額1兆円を超えました。廃棄物を永遠に管理し続けなくてはならないので、時間軸が無限。「時間単価×時間=原発システム全体にかかるコスト」とすると、原発はコスト無限なのがよくわかります。メインテナンスも人命をかけた作業。

温泉大国の日本は、火山エネルギーが無限。故障しても出てくるのは水蒸気。1兆円投資して、効率が多少悪くても地熱発電をいっぱい作っていたら、多少なりとも発電できていたのではないでしょうか。実はコスト競争に敗れた原発を止めまくっているアメリカは地熱発電大国です。

アメリカでは発電は競争入札。シェールガスによる安価な発電に対しても地熱発電は競争力を保っている。今からでも遅くないので、先駆者に教わりながらでも、エネルギー政策のリスクヘッジを行っていくべき。雇用も地場産業もスイッチしていくことができます。日本人自身が日本の未来を変えなくてはいけない。

100,000年後の安全 100,000年後の安全
マイケル・マドセン 西尾漠・澤井正子(解説)

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万が一、一瞬どこかの配管にわずかでも金属疲労からヒビが入り高温の液体ナトリウムが漏れだしても、直すには今ふさがっている一本道が必要。その環境の中で目的もなく高温の液体ナトリウムが冷却循環し続ける。17年も稼働していないし、稼働しても増えるのは先進国で余り続けるプルトニウム。もう作らなくて良い。

MOXをどんどん増やしたい自治体も無いし、埋めるオンカロも作れない。目的もなく延命するという責任があいまいな世界。こういった環境は事故を誘発しやすい。さすがに首相も、原発停止はすぐには無理だけれども、縮小に向かいましょう、と話されるようになりました。

原発事故からもう数年。いろいろな原発から次々に「コストがかかっても安全のためには背に腹が変えられませんから、予備の大型の発電設備を高台にどんどん作ってます。安全な道も用意しました。」と言った報道を聞けたらどんなによかったことでしょう。現在、全ての年老いた原発たちは停止中。

不安定な高速増殖炉へ向かう、大雨だけで通せんぼになる小さな一本道。のどかで風流な日本の風景。これからも変わることはないでしょう。わびさびの風景。

日本の国土が、無人化した枯山水にならないことだけをお願いしたいと思っています。わびさびを感じる国民そのものが不在になってしまう未来は寂しい風景です。

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