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2013年9月21日 (土)

世界を、こんなふうに見てごらん / イリュージョンと幽霊 / ゴースト・ホース

世界を、こんなふうに見てごらん (集英社文庫) 世界を、こんなふうに見てごらん (集英社文庫)
日高 敏隆

集英社  2013-01-18
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あとがきに日高先生の絶筆について今福道夫先生が寄稿されています。
「植物的な有機的なつながりが切れて、物理的な法則が勝って(人は死んで行く)」と自分の体に起きる変化を観察されていたようです。

新編 チョウはなぜ飛ぶか フォトブック版 新編 チョウはなぜ飛ぶか フォトブック版
日高 敏隆 海野 和男

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全面が写真のページもあります。
Photo 章立てのページやコラムのページは、ななめに光る帯が入れられています。本当に凝ったつくりの美しい本です。
「世界を、こんなふうに見てごらん」の中には蛹が緑になる仕組みが解き明かされています。

後半に、論理にだまされると、蒸気機関車を「幽霊の馬(ゴースト・ホース)が動かしている」という誤りをしでかしてしまう危険についてのエッセイが語られています。

「いいかげんに調節されたイリュージョン、イマジネーション」こそが「なぜ」をひもといていくことが示されています。「科学的」とか「論理的」とかにダマされず、「なぜ?」を考えていく知性を持ち続けなさい、と教えてくださっています。

11のエッセイが、それぞれの切り口で大切なことを語りかけてくれます。

原発の廃炉が決定し、熊本では地熱発電も動き始めたようです。ゆっくりだけれども、正しい道を歩み始めました。偶然ですが先日お書きしたこと、そのものになってきました。廃炉産業が立ち上がって、ビジネスが急速にシフトしていくことでしょう。

日本の原発よりもコストがはるかに低いワンウエイ方式の米国の原発ですら、コスト高で撤退を開始しています。色々なものを抱える国内原発のコストが低いわけがない。アメリカだけでなく、廃炉ビジネスは盛んになることでしょう。日本で起きることは、世界でも起きうる。経験を積んだ日本は先達になります。

理論では可能だけれども、実行不可能というものが人間にはたくさんあります。人間は、高温の液体ナトリウムに反応せず交換しなくても安定して長期間循環させる金属を未だ手にしていない。プルトニウムのような高レベル放射性物質には近よれないし、作業できたとしても被曝量の上限から作業を継続できず常に新しい作業者を用意しなくてはならない。

ステンレスの曲がりくねった長いパイプの中を液体ナトリウムが循環して、プルトニウムを冷やしている。ちょっと漏れても、液体ナトリウムは爆発するので水では冷やせないし、腐食性があり高温なので簡単には触れない。

しかも、その場所は、ちょっとした台風でも交通が途絶えてしまう脆弱な田舎の一本道の向こう側(田舎道はYoutubeで確認 できます)。近代化から程遠い、まるで水車小屋で粉でも挽いているかのようなのどかな和風の風景の向こうに日本全体の安全が乗せられている。

Nature誌でもプルトニウムは手に余るので再利用はやめるべき
であることが示されました。1950年から60年以上かけて、燃料が増え続けるメリットより、コストが増え続けてしまうデメリットの方が大きいことが分かりました。

「まちがえてしまったら、間違いを認めて、新しい道を進めば良い」と日高先生はおっしゃっています。「人は、何かしようとする意欲のようなものが立ち上がれば、後は環境との相互関係で行動が行われる。(pp129)」とも。

要らない高レベル放射線廃棄物は変なことを考えず、いったんしまっておくことにもしたようです。安全な先送りも知恵の一つ。

人間は「いきもの」の一つにすぎません。生きものが生きられない世界では、人間は生きられない。日本が狭い国土の割に豊かなのは、海や山、雪解けや雨の新鮮な水のお陰です。それこそがプライスレスだと思っています。

ステンレスパイプのひび割れだけで、日本人は国土を失いエグザイル(流浪の民)になる。国家の安全を自分で脅かしつづけることは外憂以前の問題です。エネルギー政策は国土あってのもの。国土を失い生命を維持できなければ、財産も未来も、日本人が蓄積した美も知性も全て消滅してしまう。

いろいろなトラブルや原子炉の点検を通して液体ナトリウムや放射性物質が、金属を思ったより早く腐食するらしいことも衆知のこととなりました。海外からの情報もたくさん寄せられています。

問題を次の世代に先送りする時間的余裕すらなく、自分の世代に危険が及んでいることを、為政者の方々も気がつき始めたのではないかと感じています。良いことです。よりよい未来への指針を作ってくださるよう願うばかりです。

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