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2013年9月22日 (日)

プログラムとシナリオ / 動物行動学からみた人間

『Why Nations Fail』には繰り返し人類共通の行動パターンと政治、その結果について語られます。彼らは「地域、人種、文化を超えて国が栄える政治があるのではないか」と考察する。

それは、とりもなおさず「人類という動物がもつプログラムは共通であるだろうから、そのプログラムから照らしてみると栄える政治とは何?」という問いかけと何ら変わりません。

『Why Nations Fail』は、人類の動物行動学のようなものだなぁと感じ続けていました。そこで動物行動学周辺の学術書や著書を読み進めています。
 「なぜ、違う時代でも同様の政治形態の国が反映するのだろう?」という考察は、「なぜ蝶は飛ぶか?」といった動物行動学と何ら変わるところがありません。
 違う蝶でも同じ振る舞いをしたり、次の世代の蝶が教わらなくても同じ行動をするには、なんらかの理由があります。仕組みがある。全く同じ。

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日高先生は見事にそのことを解説されています。生きている人間が暮らす社会。

「人間は精緻な遺伝子プログラムに支えられて必死に暮らしている。それに合致するような社会、それを支える政治を持った国が存続する」という見地からみると、『Why Nations Fail』の内容もよく理解できます。

どの動物とも等しく人も、遺伝子のプログラムに逆らうことを快く思いません。『Why Nations Fail』に繰り返し出てくるextractiveやincentiveなどの単語は、遺伝子が生き残ることに有理か否かを左右するものです。
日本の誇るべき武士道は、まさに遺伝子の多様性を保ちながら皆で生き残れるような教え。共通のプログラムを有する世界の人々にも愛されるのも自明です。

動物行動学の見地から見た医療というものを考えています。金沢で12月に開かれる市民講座の講演のテーマにしようと思いました。

同様に、動物行動学からみた原発というのも良い視点だと思います。電気が安価に作れれば社会は発展し、ある程度豊かになる(コスト高でそのメリットも消失しかけていますが)。そうすれば、自己の遺伝子の継続発展に役立つ。
 一方、放射性物質は遺伝子をズタズタにして、プログラムどころか遺伝子の存在そのものを消滅させる力を持つことも知っている。ちょっとしたミスが全てを終わらせる。
 そのアンビバレンツな緊張感を世代を超えて耐え続けられるか。人間の遺伝子プログラムが何を望むかで、原発の未来は決まることでしょう。

自分の遺伝子を残す代わりに、業績を広めたり残したいという『ミーム』の話も出てきます。世の中で誉めそやされても、死んでしまえば無であり、結局『ミーム』も自己満足。過去の銅像や建造物があまり意味が無いことを私達は知っています。

生きている間、ささやかながらも、みんなで助けあって現在をどれだけ楽しく暮らせるか、それに尽きます。そういった思いを大切にしているかどうかは、お会いするとわかるものです。

本書に出てくる内田昇三先生の著書はウエブの古本屋さんで探しました。
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紹介されている『年齢の本』も面白そう。

脳の発達プログラムを超えた幼少期からのバイリンガルなどの多言語教育が子供の論理エンジンを障害することが報告されたことは、記憶にあたらしい。人間には一つのしっかりとした母国語が必要です。それは、子鳥が決められた時期に親鳥と同じうたを覚える必要がある脳のプログラムと同じ。そのうたが歌えれば、鳥は鳴き声のバリエーションを増やすことができる。生き物は、生命のプログラムから外れたことはできない。

動物行動学の研究は、人間も動物の一つであることを再認識させてくれます。遺伝子のプログラムに逆らうことはできないし、逆らっても多大な努力にもかかわらず得るものは少ない。

理解する方向へ進んだほうが断然ムダがなく『お得』です。生き物としての人間をより深く理解すれば、さらに直観的に正しい判断をできるようになるかもしれない。動物行動学というのは、社会の理解にも人生の生き方にも役に立つ素晴らしい学問です。

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