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2018年5月10日 (木)

碧い羽 / 誕生を告げる よみがえりの鳥

Featherinthesea

僕は、自分から離れていく大切な碧い羽をみていた。

しっかりと左胸に縫い付けていたものだった。

深海流の潮の流れと僕の沈降速度が生むベクトルは、進行方向が異なっていた。

ああ、そうだった。

もともと、僕は薬草を集めて動物たちを治す薬師だった。

テクノロジーが発達しても、個体そのものが滅んでしまえば再生できない。
どの動物、どの植物、どの地衣類にも、歴史と記憶があり、再生できない。

少しだけ手伝えば、もうすこし生き伸びられる生き物を手伝ってきた。

あるとき、草原に碧い羽が落ちていた。
それを追っていくと、衰弱した鳥が草の陰にいた。
落鳥 と言う言葉が頭をよぎった。

少しだけ、いつもと違ったのは、彼女が美しいコバルト色をまとっていたこと。

また、飛んでみたい

彼女は弱々しくつぶやいた。
補助筋肉を外部からつけてサイボーグ化することは、たぶん望んでいなかった。

僕は、その時持っていた薬草を、適切と思われる配合で渡した。
今でも、急いですりつぶした緑の鮮やかさは、脳の片隅に残っている。

碧と緑

ああ、彼女が誕生を告げる鳥になるなんて、
僕はその時予想もつかなかった。

そっと自分から離れていく、
かつて救った鳥からもらった
碧い羽をみていた。

遠ざかるにつれ、海の深い藍色と同じ色になっていく。

瞬間、僕の脳は鮮明になる。

ああ、そうだった

物語は全て、
着ている服の線維に分子的記録がなされている

僕は、全てがメモリーされた線維を引きぬいて、海流に任せた。

線維は、ゆっくりと解読してくれる人をめざして離れていった

僕は、網膜探索子の限界まで脳内で線維を追い続けた

碧い羽根とともに

漆黒が僕を包む
光子の減衰による物理的な黒なのか、
脳の終焉なのか

黒の意味の境があいまいになる・・・
あいまいさの存在理由すらが、意味を失っていった

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