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2018年7月26日 (木)

いちのゆめ / あおいとりのときいろのてがみ / かなたのほしのともしび / ははのうたとひかりのや

20180428bluesky_2


















<一嘉さんに捧ぐ>

僕に伝えられることが、
一つだけある

唄が歌えるようになったら
おかあさんが教えてくれたら
読んでみてほしい

今は
“碧いとりのこもりうた”
に包まれて
眠るあなたに

☆ ☆  ☆

僕の元に、美しい手紙が届けられた

この世界に、
「いちか」さんという生命が生まれた


たった20文字ほど
数バイト単位だけの手紙

わずかな、ノイズの混じるデジタルデータが
紙の端に橙色の糸としてそえられていた

Maemerurihataian 碧い鳥が、数千キロ単位の距離を
運んできてくれた

ラシャ紙に包まれた朱鷺色の手紙に、
まばゆい文字が浮かび上がり
ホログラムのように空間に
輝きながら舞い上がる

Ajisai しばらくの間、僕は旅に出ていて留守にしてしまったことを、 新調したての麦わら帽子をぬいで 碧い鳥の鳶色の瞳にあやまった

彼女は、輝く瞳でじっと僕を見つめていた 陽の光をうけて、 尾羽の根元が、コバルトに回折して 万華鏡の中の金属のように輝いた

碧い鳥は、辛抱強く デイジーの野や、牧草の草原や、シダーの森を飛びながら 清らかな川の水を飲んで待っていてくれた おやつに、麻の実を食べながら

世界の片隅に静かに生まれた誕生を知らせるために

彼女は、上昇気流に乗って 山の上の青い空を駆け、川を越え、海をかすめながら 手紙を届けてくれた

陽の光の中、碧い塊が僕の麦わら帽子を直撃した 強い日射しで目測を誤ったらしい 疲れてもいたらしい

でも、碧い鳥が自分で届けたかった朱鷺色の手紙

〝大切な手紙だったから 自分に託した人の気持ちも届けるため 私の気持ちも届けるため

やがて、せまる黒い霧も 彼女から放たれた金の矢が 射貫くことだろう〟

彼女は、瞬きをせず 僕を見つめた

Vioret042018









〝この手紙は、私に希望を生んでくれた

この手紙は、チカラをくれた

夜明けの太陽と、夜中の月明かりを
北極星の下を、周回する宇宙コロニーの下を

あえの風を
いなさや上風を・・・

私の翼は
春の風、夏の風、秋の風、冬の風
どの風にも負けない気がした

冷たい霧につつまれても
怯えず冷静に
方角をみうしなわなかった

風切り羽は剣のように鋭く、
しなやかに
自由に曲線を描いて
速く力強く
空を駆けることができた

里山の朱鷺と同じ色の手紙
わたしたちの仲間のいろ

チカラを与えてくれて
ありがとう〟

彼女は帰り際、
僕にそう言った

僕は、お辞儀をしながら応えた

〝その
アリガトウ
は、誕生した人へ伝えるべきだ〟

空を旋回していた
碧い鳥は、僕を一瞥すると
光速で青い空に溶けていった

〝その〝ありがとう〟
は、誕生した人へ伝えるべきだ〟

Bluebird









ヒトカケラの碧い羽だけが残された

僕は、そっと左の胸のあたりに羽を縫い付けた

☆  ☆  ☆

碧い鳥が去った後、
静けさが野にもどる

川の音や、黒い大きな魚が
川底の岩を蹴って繰り返し跳ねる音を聴きながら
大きな葉を通してふりそそぐ陽光を見て
僕は、想像する

たとえ、科学技術が発達して
人間のクローニングの技術がすすんでも
「いちか」さんは、クローニングできない

あなたは、唯一のものだ
だから、一が名前に入っている

これからの、日々が〝いちか〟さんそのものだ

肉体がクローニングできたところで、
かの肉体は、脳髄は、
あなたとは、交わらないパラレルワールドだ

物理的に再現できたとしても、
君そのものを、再現することはできない

これから
たくさんの人が「いちか」さんをささえ、
「いちか」さんが沢山の人々に影響をあたえていく
関係性の変化をともなう時間も、再現することはできない

その世界も、唯一のものだ
あなたは、すでに世の中を変え始めている

お母さんは母となり、お父さんも父として歩み始めた
彼らだって、毎日、初めての世界を生きている

少し離れた場所に
あなたを愛する人が、いま、産声を上げたかもしれない
あるいは、ハイハイしているかもしれない

Img_1939 あるいは、胚葉まで分割したあと地球上の大都市のビルの8階層目に
液体窒素マイナス196度の中で保存されているかもしれない

あるいは、戦場に向かう兵士の精子や卵子として
大きな木に隠されたポッドに格納されているかもしれない

あるいは、引力に引きずられて恒星の中心に墜落し
焼かれるまえに保存されたイーカロスの細胞として
耐衝撃クライオチューブの中で
絶対零度の宇宙を漂っているかもしれない

あるいは・・・

君から発生するおむつも、君の汗臭さも
君のわがままも
唯一のものだ

君を頼りにする人々がこれから登場してくる
そして、君が愛する人々も

☆  ☆   ☆

僕が生きることを許された
このたったひとつの世界を
あなたが、変えていく

Butterfly Effectの力学

☆  ☆   ☆

「いちか」さんは、「一」さんと記す
両親が、そう決めたんだ
なんて素晴らしいんだろう

この世に、ひと味違うメンバーが加わった
皆が祝福している

よろこびは、論理や理由からではなく、
自律的にたちあがる

誕生直後のあなた
朱鷺色の手紙に格納されていたデジタルデータの画像
自分を祝いたい気分だ

☆  ☆  ☆

Raiba1 あなたは、しばらくのあいだ両親を困らせるだろう
わがままも言うだろう
勝手きままに、好き嫌いをいうだろう

皆は、あなたに振り回される
困りながらも、ほほえみながら

そして
あなたは、強く美しく育つ

両親を悩ましながら

沢山の人が、あなたのことを心配しつづける

けれども、皆が知っている

あなたが、多くの喜びを連れてきていることを
あなたが起こす悩みさえが、希望であることを

☆  ☆  ☆

Sakura やがて、

あなたが大人になった時、
一緒に働く人々は、
「幸運の女神」
であることを知る

その時、人々は「」という字が持つ意味を改めて知る



それを与えたのは両親だ

悩むことや、あなたと両親の喧嘩もあるだろう
それでも
あなたは、困った問題も、家族で乗り越えていく

たとえ、空を射貫く
大げさな武器なんて持ってなくても
協力して、頭脳を駆使して
新しいタクティクスのもとに
地理や地形の自然の流れを生かして
強敵を打ち倒し、
難問を解決していくことだろう

君が仲間たちと
自分たちの力で
戦いに勝つたび
柑橘の香りが
空に放たれる

☆  ☆  ☆

僕に伝えられることが、
一つだけある

唄が歌えるようになったら
おかあさんが教えてくれたら
読んでみてほしい

実は、あなたは、
「みんなをすくいつづけていた」ことを

回りの人々は、
実は、あなたに振り回される〝フリ〟を続けながら、
あなたに救われ続けていたんだ

庇護が必要な子供のころも、
自立できる多感な年ころも、
やがて君が母になったとしても

「そのこと」に、
ひそかに、まわりの皆はそっと気づいていたんだ

そして、あなたに大人たちは、
自分たちの存在や意義を誇張しつづけてきたかもしれない

“わたしたちがいたから、大きくなれたのよ”と
“だれが、うたをおしえたの?”と

けれども、それはウソだ

☆  ☆  ☆

Star 僕は、予言する

満天の星がまたたく夏の夜

やがて、あなたの存在が
自分たちを護ってくれていることを
あらためて知る日がやってくる



足もとから舞い上がる
無数のホタルの光に
その場に居合わせた全てのひとびとが
包まれながら

藍色を横切る流星

あなたが、人々を救っているがゆえ

☆  ☆  ☆

未来

あなたが部屋にやってきたことを
めしいた僕は、知る

羊の乳のように白濁した
僕の目

瞳孔の癒着も著しい
電脳化していない〝自然脳〟も
トランジスタ式増感網膜も
システム全体の老硬化が進行して使い物にならない
末期

床のアラートやベッドのフレームと一体化した
僕の視覚野に直結された
電磁ワイヤーネットは、もう何の役にもたたない
使用期限がきれた補助脳システムのコンデンサーや基盤シリコンも、
微細クラックで断線している

Jyukimishin けれども、
かしいだ古い樫の木のベッドの酪酸や酸化脂肪酸の匂いに
あなたから発せられる新鮮な陽光の香りとしらべが
唐突に加わることで
僕の脳は反応する

あなたの輝く姿が
あたかも見えるように
幻覚をみる

生命維持フレームに直結された
冴えない肉片に滅んでいたとしても

かろうじて残っていた受容体は、
ラクトンC10/C11に
即座に反応を開始する
嗅神経が脳から直接分枝していることに
僕は感謝する

夕日をあびる君がそっと奏でる歌は、
光の矢でマトを射貫くときのしらべだ

あなたの声による空気の振動
聴神経の入力による海馬の補助的賦活化も追加される

残されたわずかな時間は相対的に延長される

かつて受け取った
あなたの誕生を記したデジタルデータが添えられた
朱鷺色の手紙が脳内に再生される

あなたが歌う憐憫の調律によって
あたなが掲げる光の弓矢によって
あなたの存在そのものによって

クラックのノイズ越しに
僕は
あたたかな光を感じる

あなたが去ったあとも、
音声として構成して伝えることができなかった
「ありがとう」を
僕は、抱えつづける

☆  ☆  ☆

Shibuya2018









昔見た、夏の日の風景

たとえ、僕の全ての内臓、運動器官や皮膚が、
むしばまれて疼痛を発していたとしても

たとえ、徐痛のためのオピオイドを髄内に数ナノ送り出すシリンジポンプのために、
意識がさらに濁ったとしても

たとえ、生命維持装置のアラーム音が騒がしくなっても、
LEDが激しく明滅しても、
生命補助装置が大きな軋み音をたてても

そんなことに興味を失っている僕は、
より深く静寂となる
白い雪と同じ沈降速度の開始
を感じはじめる

もう使い物にならない目や脳に変わって、
あなたの陽光の香りや唄に、脳の一部が反応する

僕は、使えない脳髄部分をパージし切り離す
まだ動く部分の活動時間延長のため

生存の消滅に直結しない行為は禁止されない
生存の消滅に直結しない行為は禁止されない
生存の消滅に直結しな・・・

補助脳が、ノイズまみれの医療法の一文を
機械的に後頭葉に投影する

海馬と後頭葉の神経細胞にわずかなATPがもどる
必死に、あなたの存在が作る光を
脳内で探して再生することだけに力と動力源を集中するため

あなたは人々の希望の光
そうやって、新しい命は、
古い命に次の光をみせてきた

☆ ☆  ☆

Img_0751 C6ケトン体エネルギーの減少とともに、
ミトコンドリアが徐々に機能を停止し、
彼らそのものも形態を維持できず消滅する

それに従い、活動が停止する僕の脳は
陽光の減少とともに暗くなる深海のよう

その中でも、
かすかなトモシビを
海の彼方の灯台のように
遠くにかかげてもらったことに感謝をつづける

藍色のグランプルー
かすかな光

かつて、唄をかなでたクジラだった
マリンスノーは、音もなく沈降をつづける
比重と摩擦抵抗の同値
僕の沈降速度は、白い雪

縫い付けていた青い羽根は
ほどけていき
僕の服からはなれていく

大切なものたちが
意味を失いながら
ひとつずつ
ゆっくりと
藻屑となって僕から離れていく

僕の沈降は終わらない
静寂は感覚器の機能停止か
中枢障害か
物理的に無音なのか
その境界は、あいまいになる

僕は、海底を感じることは
きっとできない

Img_1941かすかに聞こえてきた唄は、
遠い生き物のものなのか、
神経細胞のエラーなのか

もう、どちらでも意味は変わらない

すべての境界があいまいになる

そのなかでも、かかげられ続ける
次世代のトモシビ

☆ ☆  ☆

一嘉」さん、
嘉き(よき)ことが世に生まれたことは、希望そのもの
あなたが、未来を作っていく

アリガトウ

あなたが空に放つ光の矢の軌道
母とあなたが歌う姿
僕は、あなたからとても遠いところで想像する

あなたは、
希望の星

めしいた人間にさえ、陽光を与える存在

ひとつ、しかないけれど、
唯一の、人々のよろこび

これから
あなたがぶ、
よきことのみに
あなたが、
包まれ続けますように

☆  ☆  ☆

Tatunootoshigo 僕は、そっと目をつむる

シリウスまで続く
誕生を祝って
またたく星たちを想うために

やがてやってくる漆黒と絶対零度の前に

生まれてきてくれて

ありがとう。

僕には、見える

光の矢でマトを射貫きながら
あなたが奏でる美しいしらべ

それは、君の幼い耳が繰り返し聴いた母の唄だ

僕には、見える

あなたは、母が伝えた祝福の唄を歌いながら
碧い鳥のように、しなやかに、そして強く
どこまでも
疾走していく姿

障害物を飛び越え
背丈を超える草の曲線をよけながら

あなたは、
自然を理解し
最適経路を直観し
友人たちの先頭にたって駆けていく

光の矢を青い空に放つ
−|a|∫βα(x−α)(x−β)dxの法則

Inumugi20182 他の人には絶対に射ることができない
あなたの金の矢の軌跡を観察していた
望遠装置すら、あなたに振り切られてしまった
丘の上の仲間たちは知る

実は、
あなた自身が、
自由自在に軌跡をコントロールできる
光の矢そのものであったことを

新緑の草原を
駆け抜ける光の矢であったことを

背丈が隠れる緑の草原
金の矢と弓が躍動し疾走する姿を
リアルな網膜で認識することで

☆ ☆  ☆

夏のある日

君は、はるかな草原を馬を駆りながら
昼と夜の間の空を見上げる
母の歌にあった
碧の鳥
後ろに迫る黒い霧

追いつかれる・・・

君は、狙いをすまして
弓を構える

最後の一矢
弦の軋みの音

一瞬の静寂

霧のなかの的の動きを直観し
君は目をつむる

Ryuusei 突然の刮目とともに
矢は、はなたれる

高速で空気を切り裂き、放物線を描く矢

陽光に輝く矢じりは
回転の明滅を繰り返しながら
空を駆け上がる

本体を射抜かれた黒い霧は
霧散し、碧の鳥が現れる

朱鷺色の手紙をくわえながら

彼女は、弓を掲げるあなたの周りを一周する
そして、一礼して
分水嶺の上昇気流に乗る

碧い鳥は歌っていた
哀しいけれど包み込むような優しい旋律

あなたは気づく
母がうたう

碧いとりのうた 

と同じしらべであること

そして、理解する

何かを失う哀しみに含まれた優しさが
希望を奏でるのだと

全てがポジティブな希望なんて存在しないことを

そして、あなたは旋律を口ずさむ

自分の未来や
やがて出会うかもしれない
あなたの子を想い

あなたの母の
かつてのように

☆ ☆  ☆

Bluesky これからも、あなたは

紺碧の空に
そして、
この世の中に

またひとつ
またひとつ



狙いを定めて
矢を放つ
あなたにしか放てない軌道で

その回転する矢じりや葦、
鷹の矢羽が作る
わずかな風切り音や乱流でさえ
世の中を変える力を持つだろう

厄災をふりはらいながら
世の中を変えていく

そして、また走り始める

光の中を
輝く草原を





















おおわだ きよし
2018 0503

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