12.研究/実験/大学院

2016年10月 5日 (水)

オートファジーとファジー / phagyとfuzzy /大隅教授のノーベル賞

大隅教授がノーベル医学生理学賞を受賞しました。

大学院の頃、神経細胞の細胞死の研究をしていました。細胞には、増殖するだけでなく、周りに迷惑をかけること無く自分で自分を処理して消滅して行く“プログラム細胞死”という方法が備わっています。

また、状況に応じて細胞内のものを“食べるように”処理するシステムが備わっています。これをオートファジー、autophagyと呼びます。autoは自分、phagoは、“食べて消化していくこと”を意味します。白血球などが、他の細胞を食べて消化することをphagocyte(食べるphago+細胞cyte)と呼びます。

ゆらぎを意味するfuzzyとは、ファジーという音は似ていますが、語源がことなります。fuzzyは、“扇風機の風の強さをファジーに変化させる”時や、ファジー理論などのときに使われます。

オートファジーは、生命維持に必須です。

細胞は、栄養が豊富にあって元気なときには、まるまると大きくなり、細胞分裂をして増えていくけれども、栄養がないときには節約モードに入り、さらに、細胞内の様々なものを“断捨離”して小さくなり、生き延びようとします。

細胞内の代謝物や不要物を処理するためにも、オートファジーは必須です。破綻してしまうと、細胞内にいろいろなものが蓄積してしまって細胞死が誘導されてしまう。パーキンソン病やアルツハイマー病など、神経変性疾患と呼ばれるものの研究には無くてはならない、これから解明されるべき未開の分野。神経内科医の私は、久しぶりにワクワクして最近の論文を幾つか読んだりしてみました。

生命には、未知のさまざまな仕組みが備わっています。命を脅かすため廃止せざるをえない役に立たない旧時代の設備に大量のお金を無駄に消耗するなら、命を守り産業を生み出す生命科学に投資していただきたいと願っています。

無駄遣いをせずスマートに前進をすすめるために、日本のしくみにも“オートファジー”が必要かもしれません。

|

2014年2月15日 (土)

STAP細胞 / 雪の日 / 「迷惑な進化」

STAP細胞作成を世界中の研究者が再現しようとしています。

GFPが光る(Nanog陽性)細胞までは確認できたかもしれないとの報告が掲載されています。GFPは、Nanogの下流にあります。Nanogは山中先生がマーカーとして見つけた物です。分化すると発現が抑制されます。良いマーカーを見つけました。さすがノーベル賞。

私も細胞培養を長いことやっていました。神経細胞培養では、FBSを減らします。栄養が多いと、グリア細胞や線維芽細胞が増殖してしまうからです。神経細胞は、栄養要求量が少ないので、わざと絞ります。逆にがん細胞系のcell lineでは増やして培養します。

細胞の種類と、メディウムの条件の組み合わせは無限にありますが、それを決めることがとても大切です。小保方さんは、幼弱マウスのあるリンパ球だけを集めて実験しました。その後のメディウムも特殊な栄養因子が入っているようです。

個人的には、外界の刺激が細胞内の遺伝子環境を変化させて分化を解除し、多機能を獲得すると言うアイディアは正しいと思っています。生き物が傷ついたときに、その場所に幹細胞が現れるのは、様々な細胞から構成される臓器の再生にとって有利だし、合目的です。肝臓なんかで報告されるんじゃ無いかと予想していました。

決して、突拍子も無いトンデモ論文では決してありません。歴史ある細胞生物学の延長にある研究。STAP細胞の実験の論理エンジンは、大筋では正しい。いつかは、誰かが、何らかの条件で、外界刺激による幹細胞化を実現することでしょう。電気刺激かもしれないし、細胞膜障害やウイルス感染かもしれない。

生き物には不思議がいっぱいつまっています。知られていないことだらけ。
小保方さんは、正しい物を見つけているのでは無いかと思っています。iPS細胞は遺伝子打ち込みなので、どの細胞からでも理論的には可能。STAP細胞は、細胞選別の条件が厳しいと予想します。

続きを読む "STAP細胞 / 雪の日 / 「迷惑な進化」"

|

2013年9月 7日 (土)

Midkineの思い出 / 今は無き3研、5研 / 若き先生方へ

Midkine 大学にいたころ、神経細胞死を一生懸命に調べていました。

そのころ、指導していただいた道川誠先生が『Midkineミッドカインという物質が、神経細胞死を防ぐ』ことをアッセイしようと仕事をはじめました。

primary cultureというマウス胎児脳から取り出した特定の神経細胞に、Midkineを投与して細胞死が抑制されるかどうか調査を始めました。

細胞培養室はクリーンベンチとインキュベーターがあり第3研究室、3研と呼ばれていました。ケミカルなアッセイをしたり、液体窒素による細胞保存ができる部屋は5研でした。

窓ガラスがところどころ壊れているような古い建物でしたが、多くの優れた先生が在籍されていました。私は、ものを育てるのが好きだったので、細胞培養にのめりこんでいきました。神田先生(現山口大学)や山脇先生(現京都府立大学)とのちょっと前の接点。

久しぶりにMidkineのことを調べてみると、がん細胞とのつながりや、その後のことがつづられていました。

こちらの建物は壊され、駐車場となりました。研究室は耐震構造を持つ医科歯科MDタワーと呼ばれる最新の建物に移動しました。強固なガラスで守られています。

懐かしい思い出。
ラボでの思い出は、臨床医となった今でも基礎研究論文を読破する力となり、『ベンチから臨床へ』、基礎と臨床の連携を模索する原点となり私を支えています。
メタボの生理学の基礎論文もなんなく読み進められます。
たとえば、AJINOMOTOさんで講演会では、ノザンを利用したRNAの発現を基にしたPPARγのサーカディアンリズムをかみくだいてお伝えしました。

与えられたものに実直に全力を尽くすこと。
未来は予測できないのだから、それしかないこと。頭でっかちになりがちな若者(先生)へ少しだけ伝えたい事がらです。

|

2013年7月 9日 (火)

東京医科歯科大学神経内科は多様性を愛する「高機能な高分子化合物」

哲学的な思索は、人間にとってとても重要なことです。
抽象化する力や、直観力を磨く訓練になりますし、
その時点での自分のモヤッとした感覚を明確な言葉でピン止めすることができます。

教授をはじめとした首脳陣の先生方からお話をうかがう一方、
若い先生方ともたくさん話しをして、
東京医科歯科の神経内科の多様性を愛する姿勢を一言でいうと何になるのか、
考え続けていました。

私の答えは、「高分子化合物」です。

力を統合する場や光を束ねるような概念も考えましたが、
リアルな物質的パワーを有しているのであまり適切ではない。
あえて分類するなら、
時間とか場といった抽象的ではないものがふさわしいと感じました。
だから化合物。

多くの先生方が強い共有結合から弱いファンデルワールス力ぐらいの力までの
いろいろな力で結合して形作っている。ピッタリなのは、高分子化合物。

この医局は、誰かのために誰かが働くシステムではなく、多様性から生まれる総合力をジェネレーターにしています。水澤教授の方針です。

それはまるで、生物の中でしか作られないような複雑な形をした高機能な高分子化合物。

高分子化合物は一朝一夕には形成されません。
酵素反応の継続により形成され、一度形成されれば安定的な機能を有し続けます。
切れ味のよい高分子化合物の薬剤のように、社会にとても役に立つ存在。

多様性を好むこの高分子化合物は、結合する分子の種類によって進化する。
化合物の側鎖も、常に変化する。

続きを読む "東京医科歯科大学神経内科は多様性を愛する「高機能な高分子化合物」"

|

2007年3月15日 (木)

次を見つめる事・その1

次の未来を先取りしすぎで笑われてしまう事が多いのですが、少しずつ形になると、喜んでもらえる事が多いです。

神経内科を選んだ時、tPAで脳梗塞治療ができるようになるとか、脳の様子がMRIで分るようになるとか、高齢社会が進んで物忘れやパーキンソンの治療が増えてくるとか、誰も予想していませんでした。

先輩も教えてくれず、神経内科について、ただただネガティブな話しばかり伺いました。

でも、私は中枢を診る内科をやりたかった。

胃ろうのスキンケアの論文を書いた時も、『皮膚科領域だよね』と、神経内科学会でお話ししたときに冷たく言われた事もありました。
数年前、パーキンソン病患者さんの鬱についてお話しした時には、『パーキンソン病患者さんは体が動かせないから落ち込むのであって、鬱は絶対にない』と壇上から批判されたことがありました。

どちらも今大きな問題になっていて、胃ろうの皮膚から胃まで世界で初めて連続病理学的所見を記載した私の論文は沢山引用されています。
パーキンソン病のお薬は抗鬱作用を盛んにコマーシャルする様になりました。脳内のドーパミンニューロンだけでなく、セロトニンニューロンの異常の報告も増えています。

頭痛の診療を始めた時も、2年ほど前に本を書いた時も、今と様相は異なり、注目度もとても低く、「頭痛の人ってそんないないよね」とか、「この地域に片頭痛無し」と先輩に太鼓判(?)を押されたり同業の友人に心配されました。

私は救急医療から、一般診療、大学病院、在宅で診療を続けていたので、沢山の患者さんを拝見し、その現場で起きている事を患者さんと悩んで来ただけでしたので、壇上の先生方よりブレが少なかったのではないかと思っています。

私は、東京で初めてクリニックにスイカを導入しました

続きを読む "次を見つめる事・その1"

| | コメント (0) | トラックバック (2)

2005年9月10日 (土)

タンパク質の発現

おかげさまで、読者の方が大台にのりました。心より感謝申し上げます。

昨日のBMAL1記事について、友人から 
「先生みたいに、生物学やった人ばかりじゃないんだから、もう少しやさしく説明してくれるといいんだけど。“やさしい医療”になりきれてないわ。女性にはダイエット大切なんだから。」
と言うご指摘をいただきました。

タンパク質の発現 の部分が難しいと言うことでした。

続きを読む "タンパク質の発現"

| | コメント (0) | トラックバック (0)