2005年9月18日 (日)

神経内科医の進む道

<開始後数週間なのですが、多くのご愛読を頂き誠にありがとうございます。>

神経内科医の進む道の臨床上の多様性について先日お話ししました。
インターネットで調べてきた、という若い先生方とも、昨日お会いしました。
一緒にやってくださると言う先生も数人いらっしゃるとのことでした。
嬉しいことです。

女性も多くて、とても嬉しかった。華やかな医局は美しいです。

まだまだそれでも足りない。

でも、それとは全く違った道もあることを昨日教えてもらいました。

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真ん中の女性はファイザー製薬で働く、先輩です。

彼女は、アメリカにずっと留学していて、神経免疫科学では大変な成果を収めてきました。

日本に帰ってきてから、製薬メーカーにヘッドハンティングされてしまったのです!!

いまでも、仲良しなのですが。

神経治療薬はニーズの高さから、矢継ぎ早に開発され、市場投入されています。
そのような薬のコントロールを行っているのです。

神経内科医でなければ、分からない事が多いため、引き抜かれてしまいました。
このような、製薬メーカーで働く道もあるんですね!

私たちの組織は、「個人が伸びることがみんな全員にとって、最も大切」という精神でやってきているので、どんな道を歩んでもその後もみんな仲良しな訳です。

教授率いる講師陣
の懐の広さがこの勢いを作っているのです。
組織学、とか、コーチング技術とかの王道を歩んでいるとみています。
人は「行け」といっても、そちらに進み続けることはできません。

今までの医局は、人材派遣業も兼ねていて、人事権を掌握していました。
これからは違う。

若い先生達は自由を手にしたけれど、自分で自分の場所を選ばないといけなくなった。

実は、これは自由と引き替えのつらい作業かもしれない。どこなら自分の力が発揮できるか、そして、その後の自分の人生もライフプランニングしていかなくてはならないという事をしめしているからです。

これまでは医局に言われたとおりに働いていれば大丈夫だった。

私たちの組織はそういった変化を先取りし、個人の自由意志で結束する組織に既に生まれ変わっていたのです。その陰には、大きな苦労もありました。しかし、今、勢いを増し、業績を上げてきているわけです。

ですから、くしくも組織構成もやり終えて、自由意志による集団という最先端を走る組織となりました。
たぶん古い体質の医局(組織)は若い先生から敬遠されて廃れていくでしょう。

これは医局がある建物の入り口の看板。
SN310187写真、小さくてすみません。
ワンフロアぶち抜きでCOEの協同研究室があります。
その他に私ども神経内科の研究室がある。
医局や居室はもちろん別です。みんな自分の机がある。

さて、左側のS先生は開業されて3年目。
いろいろ、クリニックのことを相談しようと思っています。

右側の先生は、大学病院で働くMikky先生。別な内科から神経内科に移籍してきました。
いまではホープ。

みんな自分の得意分野で力を出し合って、がんばっていきましょう。

投稿:by ドクターレポリス 午前 10時49分 in 01.神経内科/パーキンソン/アルツハイマー/ALS
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パーキンソン病・プロの仕事2

さて、地下にあるアルメイダというレストランに着きました。
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入り口の年期の入った
デカシャンパンボトルはそのまま。
4年ぶりぐらいです。

そちらに、
織茂智之先生がいらしたのです。

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右側の先生が織茂先生。
翌日は三時起きでトレッキングに行くとのことでした。
スポーツマンで、優秀。しかも優しい。

世田谷の先生なので、東京都の城南地区(世田谷区、港区、渋谷区など)のパーキンソン治療を引っ張っています。

いつも声をかけてくださり、本当に心強いです。

 

織茂先生の論文。

Mov Disord. 2005 Jul 6; [Epub ahead of print] Related Articles, Links

Click here to read
Preserved cardiac sympathetic nerve accounts for normal cardiac uptake of MIBG in PARK2.

Orimo S, Amino T, Yokochi M, Kojo T, Uchihara T, Takahashi A, Wakabayashi K, Takahashi H, Hattori N, Mizuno Y.

Department of Neurology, Kanto Central Hospital, Tokyo, Japan.

We performed [(123)I] MIBG myocardial scintigraphy in two of three patients with PARK2 from unrelated families and examined the heart tissues from the three patients immunohistochemically using an antibody against tyrosine hydroxylase (TH) to see whether cardiac sympathetic nerve is involved. Cardiac uptake of MIBG was normal except for a slight decrease in the late phase in one of the patients. Postmortem examination revealed that TH-immunoreactive nerve fibers in the epicardium were well preserved in all three patients. The present study confirmed that cardiac sympathetic nerve is well preserved in PARK2 with a homozygous exon deletion, which accounts for normal cardiac uptake of MIBG. Moreover, normal cardiac uptake of MIBG might be of potential diagnostic value to indicate the absence of Lewy body pathology, even in patients with levodopa-responsive Parkinsonism, as in PARK2. (c) 2005 Movement Disorder Society.

織茂先生は現場の第一線で働く、名医です。とても優しい。
織茂先生は世界的に、MIBG心筋シンチグラフィーという検査をすると、パーキンソン病の患者さんで、初期から高度に取り込みが低下すると言うことを発見したことで有名です。

また、なぜ、取り込みが低下するかを、臨床の現場から解き明かしたものが上記の論文です。

いまでも、パーキンソン病はその症状から、診断を付けていく病気ですが、パーキンソンの症状を出す他の疾患、パーキンソン症候群と言われる病気と、真性のパーキンソン病を鑑別していくのは大変な作業です。

そこにこのような、確固たる検査を確立したのですから、すばらしい物です。

このような臨床で活躍される望月先生織茂先生方と仲良くやれるだけで、私は幸せです。

このようにパーキンソン病、脊髄小脳変性症ALSなど、神経内科医はとても速い速度で進化し続ける神経科学のど真ん中にいるのです。

投稿:by ドクターレポリス 午前 10時28分 in 01.神経内科/パーキンソン/アルツハイマー/ALS
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パーキンソン病・プロの仕事1

昨日は、私どもの所属する医局とばれる単位の若い先生への説明会でした。

医局って、医の局(つぼね)みたいでおもしろい呼び名ですよね。
正式には、東京医科歯科大学大学院脳機能病体学(神経内科)なのですが。

そこに出席するときに がご専門の
二人の偉大な先生にお会いしました。

御茶ノ水駅から橋を渡って、医科歯科に急いでいると、なんと望月先生にお会いしました。
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お久しぶりです! と話しかけると、
「おー、大和田君、今何やってんの?」
という感じで、少しお話ししました。

望月先生は、パーキンソン病と神経細胞死の抑制と神経細胞再生の大家です。

最近の論文から。

Hum Gene Ther. 2005 Feb;16(2):262-70.    
Parkin gene therapy for alpha-synucleinopathy: a rat model of Parkinson's disease.
Yamada M, Mizuno Y, Mochizuki H.

Research Institute for Diseases of Old Age, Juntendo University, Tokyo 113-8421, Japan.
    Parkin is known to mitigate alpha-synuclein-induced neuronal cell death in vitro, which suggests that the parkin gene therapy is a candidate for therapeutic strategies for Parkinson's disease (PD). In the present study, the parkin gene therapy was investigated for its ameliorative effects on alpha-synucleinopathy in substantia nigra (SN) of rats. A recombinant adeno-associated viral (rAAV) vector system has frequently been used for the gene transfer to rat SN, and we have previously demonstrated that this technique induced the alpha-synucleinopathy, which closely resembles pathogenetic changes in PD. Therefore, in the present study, the effect of parkin was examined by co-infection of rAAV-parkin with rAAV-alpha-synuclein into dopaminergic neurons in SN. At 13 weeks post-rAAV infection, alpha-synuclein overexpression induced dopaminergic neuron loss, while co-expression of parkin mitigated the alpha-synuclein toxicity. Moreover, alpha-synuclein-induced dopaminergic neuron loss consequently resulted in motor dysfunction, which was also mitigated by parkin. Taken together, our results indicate that the parkin gene therapy is effective against alpha-synucleinopathy, suggesting its potential suitability for patients with PD.

これは、バックグラウンドから話すと、とても長くなってしまうのですが、
神経毒性の低い、アデノ関連ウイルスadeno-associated viral (rAAV) を用いた、パーキンソン病の遺伝子治療の可能性について記載された物です。

パーキンソン病では、脳の黒質という部分にある重要な神経細胞がダメージを受けるのですが、それをウイルスを用いて遺伝子を導入して、防いでやろうという戦略です。

望月先生は美しい神経細胞の培養をすることでも有名です。
PC12という神経系の細胞系列を東京医科歯科大学から順天堂大学にお持ち申し上げた頃が懐かしいです。

お隣での味噌や醤油の貸し借りみたいですね。

私の先輩は、RNAを用いた遺伝子抑制による疾患治療を目指していますが、いろいろなアプローチがあるのですね。

非常に先端的な治療に邁進されていることがわかります。

今度、創薬のインタビューをお願いすることにしました。

よろしくお願い申し上げます!

投稿:by ドクターレポリス 午前 10時14分 in 01.神経内科/パーキンソン/アルツハイマー/ALS
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2005年9月16日 (金)

研修医の方々へ、あるいは未来の医師達へ

先日お書きしましたが、神経内科はとっても足りないです。

私のように都心で働いていても、

郊外
 1.   3. 4. 5. 6. 7. 8. で働いていても、

クリニックでも、全然足りません。

沢山の病院が社会的ニーズを背景に、私たち神経内科の新設、増員を望んでいますが、毎年断ざるを得ません。

脊髄小脳変性症の研究の先端を走っていても、その先に行くにはもっとマンパワーが必要です。それは、未来を開くために、とても必要な事なのですが。

沢山の患者さんを拝見するため、外の病院に質の高い神経内科医を出していくことにも重点を置いているからからです。

それが私たちの最も大切な使命だと思っているのです。

血のにじむような努力の人事を行っても、外の病院でも、大学でも神経内科医が不足してしまっています。

あまねく全国で同じ現象が起きていることは、先日お書きしました。

『医療現場の中心で、援軍を叫ぶ』

といった気持ちです。

見学だけでもいいから、もし、このブログを読んだ若い先生がいたら、

『ブログ見たんですけど』ぐらいの気持ちでよいので、人事担当の立派な先生までご連絡ください。学生さんでもかまいません。

私どもと一緒に働きましょう!
未来の神経内科を支えていきましょう。どの地域でもかまいません。
身近な神経内科に入門しましょう。

そして、急増する代謝病、在宅医療、難病、高齢化社会の日本の医療を支えましょう。

神経内科は病院で救急も良し、療養型病床群でも良し、リハビリでも良し、クリニック開業でも良し。内科医なので、つぶしが利きます。

神経科学のメッカ、アメリカ留学もできます。

環境も整っています。COEを私たちは獲得しているのです。
 
(21世紀COEプログラムは、平成14年度から文部科学省に新規事業として「研究拠点形成費補助金」として開始されました。第三者評価に基づく客観的な競争原理を大学に導入し、競争的環境を促することで、我が国の大学に世界最高水準の研究教育拠点を形成し、研究水準の向 上と世界をリードする創造的な人材育成を図ります。その代わり、重点的な支援(巨額な実験資金投下)を行っていただくものです。水澤英洋教授率いる私どものチームは大変厳しい審査と競争に合格しました。)

9月にはまたCOEによるセッションが行われます。

これほど、脳科学は身近で前に進んでいるのに・・・

RNA干渉による神経遺伝子治療の最先端も聴くことができます。
内部スタッフとして。

どうして、若い医師達は入門をためらうのか・・・
知らないだけなのだろうか。

お世話になった患者さん思いの先生に、大学の窮状をお聞きし、どうしても書きたくなってしまった・・・
今の入門数ではとても足りない。友軍を待ちます。

今日は求人広告しました。申し訳ありません。

投稿:by ドクターレポリス 午後 07時11分 in 01.神経内科/パーキンソン/アルツハイマー/ALS
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2005年9月15日 (木)

神経内科医の不足

神経内科医は不足し続けています。

需要は増え続けている。

それなのに、神経内科を希望する若い医師が少ない。

何故なのでしょうか。

神経内科医脳卒中、脊髄小脳変性症(SCD)筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、アルツハイマー病、頭痛、高齢者医療、在宅医療を診ていく内科医です。

圧倒的に不足しています
九州、大阪、北海道まで、あまねく日本中でです。(注
   3)

脳や脊髄の様子を調べられるようになったのは、ここ十数年の話です

以前は、脳卒中といっても脳出血か、脳梗塞かの判断も難しかったのです。

パーキンソン病の治療薬もここ十数年でずいぶん増えました。

このように神経内科の診断治療は大きく様変わりし、対応すべき患者数が激増しました。
同時に、日本では高齢社会化が加速し、患者数の激増に輪をかけました

また、片頭痛の特効薬などが開発され、若い世代の患者さんも激増しています

しかし、私たちの力不足により、若い医師たちはなかなか専攻してくれません。

私が神経内科を専攻したときには、診断法も治療法も今に比べると圧倒的に少ない状況でした。それでも、私は、一緒に患者さん達とやっていきたいと思いました。

今は、神経内科救急の面白さも分かる時代なのに・・・

緊急でMRIをとり、カテーテル(細い管)を選択的に脳の血管に進め、血栓を溶かす。

夢のような時代になりました。
若者達が、神経内科を選択しないことが大変に残念に思っています。

一方で神経内科医は患者さんとのコミュニケーションを長い間とりながら、治りにくい病気と一緒につきあっていくという地道な努力が必要な科でもあります。

たとえば、リハビリテーションも私たちにとってかけがえのない力です。

何か医療行為をすると、すぐにその結果が分かるような、医療のスピード感を求める若い世代には、取っつきづらいのかもしれません。

ある程度ベテランになって他の科から、私どもの医局に移籍してくださるのは、その必要性が医師として成熟してくると感じられるいうことを示しています。

あるいは今の高齢社会の中で開業するに当たって必要という方もいました。

神経内科医は特にプライマリケア、開業医レベルでもっとも必要とされている医師です。

自分で独り立ちしてやっていく時にも有利でしょう。地域のためにもなります。

若い医師達が、私どもと一緒に日本の医療を支えて行くことに賛同してくれたら、と願っています。

神経内科医は、一般内科的知識を持ちながら中枢神経や運動機能を診ていくというとても人間に根本的な所に立脚した専門医です。

歩きにくさを診てもらうためだけに、佐渡島からこの青山にやってくるような専門性があるのです。

講演会でもそういった話に耳を傾けてくださいました。

今日も、なじみの脊髄小脳変性症やパーキンソン病の方々とゆっくりお話ししました。

待っている患者さん達が(たぶん)最も多い専門科。
それが神経内科医です。

私どもの医局の連絡先はこちらです。

青山でも働けます。

投稿:by ドクターレポリス 午後 03時37分 in 01.神経内科/パーキンソン/アルツハイマー/ALS
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2005年9月 4日 (日)

神経内科とは

神経内科は少しずつ認知度が上がってきていますが、まだまだです。
それに比し、高齢化社会を迎えた日本において、果たすべき役割には、大変なものがあります。これから出版される頭痛の本でも書きましたが、まさに、これからの内科といえるでしょう。

扱う疾患が、ご高齢の方がかかりやすい、中枢や末梢の神経の病気を診る科であると言うこと。
物忘れ、歩行障害、嚥下障害などの機能障害を見ると言うこと。
機能障害を判断できるので、脳卒中の方などのライフプラニングや転院のご案内をしていくと言うこと。
頭痛などの治療法が進歩している疾患を診るということ。
どれをとっても患者さんが急増しています。

特に、専門の医師のきちんとした診療を受けたいという、患者さんのニーズも高まっており、遠方からも受診される方が急増しています。

神経内科の具体的な仕事を少しずつ、やさしく、ご説明していこうと思います。

投稿:by ドクターレポリス 午後 02時47分 in 01.神経内科/パーキンソン/アルツハイマー/ALS
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2005年8月30日 (火)

本の問い合わせ

いま、一生懸命頭痛の本のための文章の校正を行い、挿絵を整理しています。でも、神経内科の絵本、「脳力を守る」はまだ出すめどが立たない・・・

 一人でも多くの人が頭痛から救われるようにと、一生懸命書いています。10月の国際学会に間に合わせるためには、大急ぎでやらなくてはならない。今週末に原稿とイラストをカバンに詰めて出版社に出向かなければならないぐらい急いでいます。
 新聞記事を読んでくれた方から「神経内科の絵本や頭痛の絵本はいつ出るの?」といった質問が、沢山寄せられています。新聞記事の転載も産経新聞より許可が得られたので、報告いたします。
 でも、残念ながら、神経内科の絵本はまだまだ先になりそうだ。多くの出版社の方々も興味を寄せてくださるのだが、絵本なのに大人向けで、しかも医学的なものという全くいままでにないパターンのため、本屋のどこにおくの?という問題でいつも行き詰まってしまう。
  昨日も、今日もはるか佐渡島からまで来て、神経内科を受診してくださり、問題解決した人が沢山いたのに・・・
 良い風が吹かんことを祈ります・・・

投稿:by ドクターレポリス 午後 11時46分 in 01.神経内科/パーキンソン/アルツハイマー/ALS
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