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2005年9月10日 (土)

タンパク質の発現

おかげさまで、読者の方が大台にのりました。心より感謝申し上げます。

昨日のBMAL1記事について、友人から 
「先生みたいに、生物学やった人ばかりじゃないんだから、もう少しやさしく説明してくれるといいんだけど。“やさしい医療”になりきれてないわ。女性にはダイエット大切なんだから。」
と言うご指摘をいただきました。

タンパク質の発現 の部分が難しいと言うことでした。

タンパク質の発現、というのはどういう事でしょう。

私たちの体を形作る細胞は、常に様々なタンパク質を作り、壊し、処理しています。
それがまさに「生きている」ということです。

細胞の中央にはとよばれる、遺伝情報を持つ場所があります。
DNAがしまわれているところです。
DNAはわかりやすく言うと、図書館みたいなものです。

細胞が何か必要なタンパク質作らなくてはならないとき、核のなかのDNAを参照しに行きます。

そして、DNAの内の必要な部分が読み出され、RNAに写し取られ、核の外に情報が持ち出されます。

このRNAの情報に従い、タンパク質は細胞内で作られるのです。

リボゾームというものが、RNAの情報をタンパク質に紡いでいきます。

先日のBMAL1のお話は、時間によって、BMAL1の作られる量に大きな差があり、夜間に大量に作られているということでした。
これを専門的に言うと、夜間にBMAL1の発現量が著増している という文になるのです。

そして、これまで、BMAL1というタンパク質は体内時計に大切な働きをするタンパク質として知られていました。

ですから、「生体リズムを刻む体内時計を調節しているたんぱく質が、細胞内への脂肪の蓄積と密接に関係している」という文章になるのです。

たしかに、生物学的バックグラウンドの無いところで読むと、難しい文章かもしれませんね。
これでよろしいでしょうか、コエンザイムQ10さん。

いま、医師の大学院離れが起きています。

たぶん、学費を払わなくてはならず、患者さんを拝見する以外に作業を寝ずに行っていくというつらい修行のような人生が嫌われていると考えています。

私は、救急病院勤務後、大学院にて4年間臨床と研究に明け暮れました。
この研究の期間は大変に有意義でした。

私のころの大学院とことなり、現在では、きちんと給料が支払われ環境は著名に改善しました。私の頃のように命の限界を感じなくとも研究をする環境が少なくとも、私どもの科では整ってきたのです。

すべて、水澤英洋教授率いる優秀な講師陣のご尽力のたまものです。
私も翻訳に携わった著書です。

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水澤先生の著書です。

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社会人大学院と言い、外の病院で働きながら、研究を続けるという道も開かれました。

これらのタンパク質の発現や、生きている細胞の培養、その培養細胞の反応の検出など、いまでは触れることのない科学実験の連続でした。

医師はどうしても最先端科学に触れて行かなくてはなりません。
そういった場合、科学の基礎的知識という物が必要になります。

自分で、細胞に遺伝子を打ち込む作業(transfection)や、タンパク質のアッセイ(ウエスタンブロッティング)、RNAの解析(ノーザンブロッティング)の経験はまさに、知識だけでなく、目の前にそういった科学が広がっているという大切な経験を人に与えます。

そして、医師はそういった知識をわかりやすく人に伝える能力も必要です。


大学院は私にとっては大切な勉強の時間でした。
日本の良い医療のためにも、優秀な医学博士が増えることを祈っています。

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