宮沢賢治とチタン
宮沢賢治の『やまなし』という本があります。
小さな谷川の底を写した二枚の青い幻燈です。
一、五月
二疋(ひき)の蟹(かに)の子供らが青じろい水の底で話てゐました。
『クラムボンはわらつたよ。』
『クラムボンはかぷかぷわらつたよ。』
『クラムボンは跳てわらつたよ。』
『クラムボンはかぷかぷわらつたよ。』
上の方や横の方は、青くくらく鋼のやうに見えます。そのなめらかな天井を、つぶつぶ暗い泡が流れて行きます。
『クラムボンはわらつてゐたよ。』
『クラムボンはかぷかぷわらつたよ。』
『それならなぜクラムボンはわらつたの。』
『知らない。』
つぶつぶ泡が流れて行きます。蟹の子供らもぽつぽつぽつとつゞけて五六粒泡を吐きました。それはゆれながら水銀のやうに光つて斜めに上の方へのぼつて行きました。
つうと銀のいろの腹をひるがへして、一疋(ぴき)の魚が頭の上を過ぎて行きました。
『クラムボンは死んだよ。』
『クラムボンは殺されたよ。』
やまなし | |
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何の変哲もない静かな日本語。
でも、これは、私にとって、衝撃的な文章でした。
そして、この本の挿絵の版画・・・
そうです。これは、ココログのサンプルに用いられている文章です。
このブログは、プログレスインタラクティブのプロの方に作って頂いた美しい物ですが、ココログを紹介して頂き、目にしたのがこの文章でした。
宮沢賢治の文学は元々好きだったのですが、全てを読んでいたわけではありませんでした。
この文章に触れたとき、私は大きな衝撃を受けました。
で始まるこの文章・・・ 透明な青いガラスのむこう側の風景をこのように説明できた人はいないでしょう。
谷川俊太郎さんの澄みきった言葉にも通ずる美しい調べです。
自然界の恐ろしさ、それがあるからこそ引き立つ、親子の暖かさ・・・
宮沢賢治の文学は大人になればなるほど恐ろしさを実感することとなり、同時に美しさも感じることができる ということを知りました。
日本人で良かった・・・
私たちは、子ども達に安全性の高い食器を探し求め、専門家の方々の集学的な協力の結果として、チタン食器を生み出してきました。
チタン工場に置いてあった、薄く青く輝くチタンシルバーの生板に私は静かな感動を覚え、そっと手を置かせてもらいました。
『もしかしたら、すごく熱かったりして・・・』
でも、実際は、何ともいえない、鉄のように冷たくない、不思議な冷ややかな感じでした。
静かなつめたさ・・・
『これが錆びることのない、そして、塩水にも金属が溶け出すことのない、食器のために絶対的な優位点をもった金属か・・・』
宮沢賢治の童話につながる青く静かに、ただそこにあるだけの真実のような気がしました。
最近の日本はうるさすぎると思っています。
大音量でがなり立てても人の心には響かない。
こざかしい技を駆使しても、人の心をあざむき続けることは出来ない。
真実というのは、そこにそっとたたずむ物だと思っています。
宮沢賢治の足下にも及ばないけれど、良質な医療と、社会に貢献できる良質な本や食器などの品物を、ゆっくり確実に、生み出していきたいと思いました。
宮沢賢治の文章にインスパイアされて、美しい版画も生まれた。
良質な真実は、人々をインスパイアしさらに輪が広がる物だと思っています。
クラムボンに出会えて、ココログにして良かった と思っています。
もうすぐ、日本の打ち上げたはやぶさが空の向こうで、小惑星と出会います。
よたかに見せてやりたかった。
その後、なんと、やまなし の朗読に出会うことが出来ました。
奇跡的です。
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