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2005年9月25日 (日)

パーキンソン病・遺伝性から孤発性へ/脊髄小脳変性症への応用

<最先端の神経疾患の知識を楽しく、わかりやすく。リンクフリーです。>

昨日、本日と神戸で行われた国際パーキンソン治療シンポジウム(ISPD)に出席しました。

神戸はとても美しい、良い都市です。先日お会いした、新選組!の大石学先生が取り組まれている分散型首都機能構想にもうなずけます。
東京は混みすぎ。
神戸に首都機能の一部があったら、時々伺うことができて、とてもうれしいです。

さて、脊髄小脳変性症の所でもお書きしましたが、遺伝性の神経疾患の手がかりが、孤発性の方の病気発症のメカニズムにせまる手がかりになる事があります。

講演された先生方はオールスターキャストという感じの顔ぶれでした。


最先端のエキサイティングな多くの新しい知見を勉強することができました。

今回はその一端をお話することにします。

Warren Olanow先生(Mount Sinai大学神経内科神経科学教授NY, USA)の先生のセッションがもっともエキサイティングでした。

Ten Years of Parkinson's disease: progress in pathogenesisというここ10年のパーキンソン病発症メカニズムについての神経科学の進歩について、総括されたすばらしい講演でした。

脊髄小脳変性症や、パーキンソン病などいろいろな神経疾患では、神経細胞がアポトーシスに陥って、機能障害が起きてきます。

パーキンソン病ではレビー小体という、タンパク質のからなる独特の固まりが神経細胞の中に出現します。

細胞の中では、様々なタンパク質が生産され、分解されています。
不要になったタンパク質や出来損ないのタンパク質は処理されていきます。

そういったタンパク質は、ユピキチンという「もういらないよ」という印を付けられます。(これをタンパク質のユピキチン化といいます)

ユピキチンが付けられたタンパク質は、プロテオソームという工場のようなところに運ばれ処理されます。
このユピキチン化と処理するプロテオソームの組み合わせのシステムをユピキチンプロテオソームシステム(Ubiquitin-Proteosome System:UPS)と呼んでいます。

これは、細胞が元気に生きていくためには必要不可欠なものです。

遺伝性パーキンソン病ではこのユピキチンプロテオソームシステムに必要な因子が、遺伝的に不完全になってしまっていることが解明されました。

たとえば、順天堂大学の水野良邦先生のチームが解明した日本発の優れた業績があります。

ユピキチンプロテオソームシステムに必要不可欠なパーキンというタンパク質のユピキチン化に大切な因子が遺伝的に不完全なために、神経細胞がアポトーシス(細胞死)に陥り、パーキンソン病を発症すると言う物でした。

これらのことから、ユピキチンプロテオソームシステムとパーキンソン病の関連性が解明され、様々なユピキチンプロテオソームシステムの異常による遺伝性パーキンソン病の解明がすすみました。

ユピキチンプロテオソームシステムがパーキンソン病発症に大変重要であるなら、と言う観点から、それでは、孤発性の(遺伝性でない)パーキンソン病では、ユピキチン化の因子はもとより、処理するプロテオソームに異常がでるのではないか?という端緒が開かれました。

現在、孤発性パーキン病の病気発症のメカニズムの解明に向け、研究が進んでいるところです。

このようなユピキチンプロテオソームシステムシステムの破綻はもしかすると、脊髄小脳変性症、あるいはアルツハイマー病などにも応用がきく考え方かもしれません。

なぜなら、脊髄小脳変性症などの神経細胞にも凝集体とよばれるタンパク質の固まりが出現するからです。

このように、遺伝性神経疾患で解明された物が、孤発性の疾患のメカニズム解明に役立つことがあるのです。

Olanow先生の御講演は、まさにその遺伝性疾患の神経細胞の情報が、より多数の孤発性神経疾患のメカニズム解明に役立つということ。

ひいては、圧倒的に多い孤発性パーキンソン病や、脊髄小脳変性症の治療薬実現へ近づくというセオリーがリアルに実現したことをしめしているのです。

すばらしい!

治療法が今はまだ少ない神経疾患において、世界中でメカニズムの解明がすばらしいスピードで進んでいることを示しています。

病気のメカニズムを解明するということは、ともすると、あきらめムードも漂いがちだった、神経疾患の根治療法に一条の光を与え、われわれ神経内科医に勇気を与える物なのです。

神経疾患のこれまでの10年はこのようなすばらしい進歩の連続でした。

日本が神経疾患の解明に果たした役割、特に水野教授率いる順天堂大学チームの果たした役割は臨床上も非常に大きいと考えられます。

今回のISPDも水野教授がいらしたから世界中の一流の先生が一同に会し、実現できた物と考えられます。

これからの10年は、さまざまな新しい解析システムが開発されているので、さらに遙か先まで解明されるでしょう。

日本からは、こんな素晴らしい発見や開発も発表されているのです。

私は臨床の場から頼もしく治療法の解明を心待ちにしています。

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