食事の飲み込みと小脳症状・W21Sに感謝
人間は食事によって栄養をとっています。
食事とは、人間の生命をつなぐエネルギーやいろいろな栄養素を取り込む行為です。
通常私たちは物をかんで飲み込み胃や小腸で栄養を吸収するという作業をおこなっています。
脊髄小脳変性症などの疾患ではそれが上手にできなくなることがあります。
物を食べるというのは、実は巧妙で複雑なメカニズムの上に成り立っています。
ものをうまくかむ(咀嚼(そしゃく))、というのは、歯で食べ物を砕き、唾液と混ぜ合わせる作業です。
このとき、うまく顎を上下に適切に動かす必要があります。
また、舌は食べ物をうまく口の中で移動させます。
唇は食べ物が外に出ないようにうまく閉じています。もちろん、食べものを口に入れる時には唇は開くわけですが・・・
脳や脊髄など、中枢の病気ではさまざまな理由でこの、かむという行為が難しくなります。
たとえば、小脳の働きが障害される脊髄小脳変性症では、小脳症状と呼ばれる症状がでてきます。
別項でお話しましたが、小脳は反対の動作をすばやく行ったり、フィードフォワードを行い、人々の生活に大変重要な働きをしています。
小脳が障害されると、アゴを上下に動かしたり、唇を閉じたり開いたり、舌を左右上下にすばやく適切に動かすことが難しくなってくるのです。
飲み込むという動作も、いくつもの のどの筋肉の共同作業ですが、それもうまくいかなくなってきます。
これは、お話をするときにも問題になってきます。
こんなことがありました。
まさに、出張に行くために新幹線のぞみに乗ろうとしたとき、携帯電話がなりました。
病院からで、患者さんの家族から相談の電話が入ったというのです。
私は、告げられたところに電話をかけました。
「なんかしゃべりにくいんですよね」
とその患者さんはいいました。少しお話して私は思いました。
「このしゃべり方は小脳失調症状がでているしゃべり方だ!」
つまり、彼の小脳に何らかのトラブルが起きていることを示しています。
「大変申し訳ないのですが、私は今、関西に高速で移動中なので、病院に戻れません。けれども、当直の先生によくお話しておくので、かならず救急外来に来てくださいね。」
すると、数日後連絡がありました。
「先生、小脳出血でした!先生のおっしゃったとおり、嫌がる主人を救急外来につれていってよかったです。」
とのお礼の電話をちょうだいしました。
このように、小脳症状は、飲み込みにくさやお話のしにくさにも影響を与えるのです。
症状が進行した場合、食べ物が飲み込めなくなってきます。
そうした場合、どのような栄養補給経路があるのでしょうか。
これらについてはまたお話することにしましょう!
でも、彼の場合、出血が早くわかってよかったです。
私は、帰りの新幹線の中で、小脳症状の特徴を伝えてくれたAUのソニエリ携帯にお礼をいいました。
時代は進んでいて、こういったガジェットが人の命を救うことがあるんだなあ と感慨深くおもいました。
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