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2005年10月14日 (金)

脊髄小脳変性症のあたらしい治療薬

数ヶ月前に水澤先生のセミナーの講師としてお招きした名古屋大学祖父江先生の教室が、17-AAGという抗生物質の誘導体が、ポリグルタミン病に効果を持つことを発表しております。

脊髄小脳変性症には、いくつかのタイプがあるのですが、あるたんぱく質に、普通より長いポリグルタミンが作られることで引き起こされるタイプがあります。

こういったタイプの脊髄小脳変性症には朗報といえます。


名古屋大学さんには、ALSの患者さんの件などで、本当にお世話になり、臨床もすばらしい教室です。
こういった、患者さんのケアもすばらしい教室から、世界に冠たる基礎研究が発表されるというのは、大変わくわくするものです。

抗生物質には抗癌作用を持つものがありますが、そのひとつである、ゲルダナマイシン(geldanamycin)の誘導体がこのポリグルタミン病の進行を抑えたとのことです。

ポリグルタミンという物質は、水に溶けにくいシート構造の固まりになりやすく、その形態が細胞に害を与えるのではないかと考えられてきました。

アルツハイマー病では、アミロイドという物質がポリグルタミンにあたります。
もし、17-AAGがいろいろな有害なものが細胞の中で固まりになるのを防ぐのだとしたら、さまざまな難病への治療の道が開かれます。

ゲルダナマイシン自体は毒性があるため、抗癌作用を持つ分子を確定し、作用機転を保ったまま、新たな誘導体を作るという分子標的薬とよばれるもののひとつです。

分子標的薬はターゲットにした細胞内物質の活性を失わせる手法で、新たな創薬の手法です。

これまで、薬は偶然の産物として発見されることがほとんどでした。
あるいは、偶然発見されたものを変化させたりして、新たな薬を創ってきました。

ところが、さまざまな病気が起きてくる仕組みが遺伝子レベルでわかるにつれて、その仕組みにターゲットを絞り、病気を治療しようという試みがなされてきました。

この17-AAGという物質もまさにその分子標的薬のひとつなのです。

17-AAGのこの発見は、治療薬としての有用性がもちろん一番大切なことです。

さらに重要なことは、治療が難しいため、神経“難病”とよばれてきた病気が、遺伝子レベルでその発症メカニズムが解明されつつあり、さらにそれをターゲットとした、分子標的薬まで登場してきたというパラダイムシフトにあると思っています。

当教室で行っている、RNAによる治療もまったく同じ考えです。

神経内科疾患は新時代に突入し、今後さらに発展していくことでしょう。

私は、この報告はまさにその点が大切な点だと思っています。

すごい時代になりました。

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