インフルエンザワクチン
インフルエンザワクチンをクリニックで接種する機会が多くなりました。
ワクチンの病気予防のメカニズムと、インフルエンザ。
両者とも面白い話題です。
今回は両者に簡単に触れることにしましょう。
(写真はご許可いただいた広島衛生研究所のアデノウイルスの写真です。)
人の体には、いったん病気(細菌やウイルスによる感染症)にかかると、次にその病気にかかりにくくなるという現象が知られています。
それはなぜなのでしょうか。
わたしたちの体は無数の細菌(ばい菌)やウイルスに囲まれて生きています。
そういった外敵から自分を守るシステムを私たちは準備しています。
それが免疫のシステムです。
一回外敵が体に入り込むと、私たちの体は、その外敵の特徴を覚えていて、次にやってきたときに効率よくやっつけるのです。
二回目は非常に速いスピードで、体の中に敵に対する(抗体とよばれる)兵隊を作れるのです。
それでは、外敵の特徴とは何でしょう。
それは、細菌やウイルスの外側の形や、それらが持っているたんぱく質です。
ですから、一回その細菌やウイルスにかかるとその形を私たちの体は覚えていて、次かかりにくくなるのです。
さて、インフルエンザワクチンですが、その作り方はこちらに詳しく述べられています。
大きく分けると3つの手順からなっています。
1.決められたインフルエンザウイルスを増やす!
まず、WHO(World Health Organization)世界保健機構が決めた型のインフルエンザウイルスを増やすところからはじめます。
ウイルスは生きている細胞の中で増えて、それが放出され、別な細胞に感染するということを繰り返しています。
ですから、インフルエンザウイルスを生きている細胞の中で増やさなくてはなりません。そこで、使われるのが、孵化する前の発育鶏卵と呼ばれる受精卵を用います。その卵の中の特殊な細胞の中で、インフルエンザウイルスは増殖できるのです。
2.インフルエンザウイルスの抽出
次に非常に特殊な方法で、ウイルスだけを取り出します。
ウイルスは大変に小さく軽いものなので、抽出は非常に難しい。
私も、ウイルスに遺伝子を組み込んで、細胞に遺伝子を打ち込む実験をしていましたので、良くわかるのですが、このウイルスだけを取り出すというのは非常に手間のかかるものです。
3.ウイルスの不活化と検定
このままでは、ホントのインフルエンザウイルスですから、そのまま飛び散ってしまえば本当にインフルエンザにかかってしまいます。
それでは、たとえ免疫がついたとしても意味がありません。
そこで、ホルマリン処理などをして、感染力が全くなくなるようにします。
この作業をウイルスの不活化といいます。
その後、それをワクチンにするわけですが、きちんと効果のあるものができているか、検定をしなくてはなりません。
そして、検定に合格したものが私たちの利用できるワクチンとなるのです。
用意する卵、数百万個、インフルエンザのワクチンのバイアル数百万個。
すさまじい苦労です。
◇インフルエンザワクチンのメカニズム◇
このように作られたインフルエンザワクチンは、皮膚の下に注射されます。
私たちの体とは異なる「異物」が突然やってきたのです。
すると、私たちの体は、異物であるワクチン液を処理しようとします。
その過程で、インフルエンザウイルスを私たちの体は認識し、学習するのです。
次に、ホントのインフルエンザウイルスが鼻やのどから入ってきたときには、二回目の遭遇になりますから、すばやく兵隊(抗体やリンパ球)を作ることができます。
これがインフルエンザワクチンのメカニズムです。
ただ、インフルエンザワクチンを皮下に打ち、免疫反応を起こさせるので、10%ぐらいの人に、「注射したところが赤くなったり腫れたり」、「カゼのような症状」が見られます。
このような反応(副反応)はたいてい2-3日でよくなります。
もしどんどん腫れてきたり、高熱がでるようなときには、医師に相談すると良いでしょう。
そのようなことはめったにおきません。
先日、かがくるの編集の方がやってきて、もうすぐ私が監修したカゼの号が出るそうです。
子供たちのために、沢山の先生方に御協力いただき、最先端のウイルスの写真を手配しました。
良い記事になっているとよいです。
11月15日火曜日にお会いすることになっています。
とても楽しみです。
(この記事の内容は来月の新松戸の連載に掲載予定です。)
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