しずかな美しい文章
月魚 という小説があります。
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静かな筆致で書かれた文章です。
私は神田の古本屋や、古本の匂いが好きなので、この本はストライクといった感じです。
久しぶりに、静かな良い本に出会った感じがします。
最近のベストセラーと呼ばれるものは、マーケティングの上にかかれたものも多く、また、アガリスク本のように虚構の上の商業目的のものも多い時勢です。
私はそのような喧騒が苦手なので、この本は一時の静けさをもたらしてくれました。
物語にサスペンスも無く、なぞも無く、お涙頂戴も無く、淡々と美しい物語が進んでいくだけです。
そして、本の中に静かな世界を完結させている。
本を閉じた後も、主人公のマシキとセナガキ君たちがそこに閉じ込められているような感じがします。
また開くと、彼らの古書店『無窮堂』が立ち上ってきます。
閉じるとまた本にしまえる。
開くと鳴るオルゴールのような感じです。
すべてを終え、二人で振り返った池の上に月の光を受けて輝いた魚の美しさ。
どこか、宮沢賢治の世界を彷彿とさせる雰囲気に、ひと時酔わせてもらいました。
世の中には非常にうるさいコマーシャルがあふれています。
冬の明るい乾いた日差しの中で、公園でこの本を読むのが良いかも知れません。
先日、10年ぐらい前のベストセラー作家さんのその当時の流行を追ったと思われる本を購入しましたが、内容が鼻についてしまい、とても読めたものではありませんでした。
時流の変化に色あせない美しさを紡ぎだしていくということの大切さを考えています。
日本の小説はよいです。
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