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2005年12月 2日 (金)

知られざる格闘

恐るべき旅路という探査衛星『のぞみ』の本を読み終わりました。

恐るべき旅路 ―火星探査機「のぞみ」のたどった12年―
4257037008 松浦 晋也

朝日ソノラマ  2005-05-21
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宇宙開発の厳しさと、あきらめてはいけないということをひしひしと感じます。
ハヤブサの発表で飄々とされている川口さんがとてもがんばって、弾道計算をされていたことなどが書かれています。

次々に襲ってくる機器の故障。
政治的な波。

でも彼らはその都度、アクロバティックな解決方法を見つけ、対処していきます。

日本の宇宙開発はどんどん進んでいます。
日本の宇宙開発は本当にぎりぎりのところで運営されています。
医療費削減の波の中で、良心と責任感と義務感を支えに働いている我々とダブってしまい涙がでてきました。

また、日本独自で運用すべきスキルが蓄積されていく過程も垣間見られます。

他の方のご意見同様、最終的に火星の周回軌道には入りませんでしたが、
だからといって、失敗というのは誤りである
ことが分ります。

良書です。
この本が無かったら、これらの事実は公開されなかったのでしょうか?

本の持つ力を信じる原動力にもなりました。

ハヤブサもいまトラブルに見舞われています。

通常の運用では地球に帰ってこれないかもしれません。

でも、のぞみの時のこの粘りがあれば、大丈夫かもしれない。

最初で最大のわずかな地球スイングバイのときの失速。
それも弁がちょっと引っかかっただけというのが泣かせます。

そして電源系のトラブル。
すべて、外国産でブラックボックス化されていた。
改良もままならない。

やっと日本の宇宙開発はJAXA一本に絞られました。
自力で開発した部分も飛躍的に延びています。
自国で、ロケットの設計も、衛星の設計もできるのです。

ALOSプロジェクトも間近です。
すでに日本が打ち上げた静止衛星を経由して大量の情報のやり取りをする方法も確立するようです。すごい!

JAXAは、1ビット通信という、複雑な情報をやり取りするものでない、衛星からはYES/NOの返事しか来ない、極少ない情報のやり取りだけで、のぞみをここまで持ってきました。

アンテナも壊れてしまっても、あきらめなかった。
この方法で、気の遠くなる作業を繰り返し、地球の傍まで、日本の傍までのぞみを連れてきた。

ヒーターが壊れてしまったときには、軌道計算して凍りついた燃料が太陽で解けるのを待って、スイングバイをかけました。

最後のスイングバイ。
火星に墜落するのを避けるということだけで、宇宙のかなたへ向かわせなければならなかった無念。
失敗して、遠くに行ってしまったのではないのです。
遠くにやらなくてはならなかった。
計算して、最後のコマンドを送ったのです。

これは、たぶん、あまり知られていない事実だと思います。

この離れ業の連続。
決断。

宇宙開発は夢のあるわくわくした作業です。
しかも工業立国、技術立国日本が活躍できるフィールドです。

是非、がんばって欲しい。
そして、血のにじむような努力を続けられている、真摯な日本の研究者たちを心から応援したい気持ちになりました。

いまも、太陽の周りを火星と同じ軌道上を回っているのぞみを回収できる日が来ると思っています。
天才弾道計算研究者さんたちが、ランデブーできる衛星を作るかもしれません。

すばらしい日本の技術者たちです。

本当に良書でした。

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