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2006年3月 1日 (水)

亡き魂への鎮魂歌

海凍る 漆黒夜に道 見失い 

 心にしずむ 亡き魂や 

プラチナの 凍星となり 明日照らす 
  (大和田優仁)

昨日、大切な人を2人失いました。

東京医科歯科大学の時代から、「先生が宮使え終わったら手伝うよ」とおっしゃってくださっていた公認会計士の患者さん。

10年近い御付き合いの中で、いろいろな事をお話しました。

道に迷ったとき、いろいろな相談を聞いてくれました。

最後の最後までお話できたことだけがせめてもです。

「君がモタモタしてるから、間に合わなくなっちゃったじゃないか。

最期に子供のように私はしかられてしまいました。

「僕の方が辛抱できなくて申し訳ない。」彼はつぶやきました。

私が間に合わなかったのです。すみません。 私は答えました。

ただボーっと、夕陽を並んでみていることしかできませんでした。

御見舞いの帰り際に見た夕陽に立つ冬芒(ふゆすすき)が忘れられません。

もう、御ひと方は、青山病院を立て直し、別な病院を立て直すために異動され、志半ばで倒れた院長先生です。

その事実を知らなくて、無邪気にその病院に遊びに行ってお話を伺いたいなどと思っていました。

昨日、放射線科の先生から昨年暮れに亡くなられた事を告げられました。

私が単身青山病院に渡り、いろいろな患者さんの対応や、地域連携に忙殺されてもその院長先生が応援してくれたから、正しい道を示してくれたから、がんばれたのでした。

彼は過労から吐血しても、病で片肺を失っても職員に一度もその話をした事がありませんでした。

そして、職員たちをねぎらい続けました。
私も何も知らなかった。

昨年初頭、ばったりとお会いしたときの寂しそうな表情はそれだったのかと、今やっと解りました。

くだらない事なんて放っておいて、きちんとゆっくり話せばよかった。

鈍感すぎました。

何度も何度もくじけそうになる私の話を、じっと身じろぎせず聞いてくださいました。

「やりたいように君らしくがんばれば大丈夫。」

いつもお話の最後はそう締めくくられていました。

非効率的な組織の中で、どんなに救われた事か。

もう、御二方とは二度とお話できません。

彼らの魂は、私の心の中に静かに沈んでいきました。
そして、きちんとした場所にしまわれました。

荒波を前にして、漆黒の闇に飲み込まれて道を失いそうになっても、彼らの魂が冬の星、シリウスのようなプラチナの光となり、導いてくれると信じています。

今日、彼らの鎮魂歌を歌いました。

涙する心を抑え、在宅医療の論文を仕上げて、先ほど厚労省の担当の方にメールを送りました。

私の魂に埋め込まれた、彼らの意思を大切に、より良い医療のために尽くしていこうと思っています。

でも、埋め合わせる事ができないぐらい寂しい。

もう数年で幾つかの約束が果たせたのに、悔しいです。
本当に私は、モタついている。

申し訳ありません。

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