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2006年5月 9日 (火)

真実を語るのは“実は”楽な生き方

私の嫌いな10の言葉 私の嫌いな10の言葉
中島 義道

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ひょんなことから、幾つかの本を読むことになりました。

一つは、中島義道さんの「私の嫌いな10の言葉
」と徳永進さんの「死ぬのは、こわい?」です。実は、両者は「真実を語る」ということで一致していると思いました。

死ぬのは、こわい? 死ぬのは、こわい?
徳永 進

理論社  2005-12
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今日は、中島さんの本について書いてみようと思います。

中島さんは、日本に蔓延する無意味な言葉や態度の濃霧の中で、もがき苦しんできた中で、救いを求めるかのようにこの本を書かれたようです。

ここに記されているのことは、「そう有るべき」というより、私は「そうすると楽になれますよ」というように聞こえました。

哲学者さんの著書ですから、深い人間の有り様や思考形式を学んだ上での言葉だと思います。

そう思うと、なおさら人生を生きていく妙を知るという気持ちになりました。

●親は自分で自分の人生を生きていて、好きに子供を作り、好きに育てているので、子供に感謝を全く期待してはいけない(子は子の人生)

●連続テレビ小説「あすか」の『優しさ』の欺瞞性

●苦情を言われた店員が「クスッと」笑って、聞いたふりだけしてきちんと対応しない

●調布市役所課長補佐に、意味の無い旗を立てて市民に無視されて不快じゃないかときかれ、「全然」と平然と答えるくだり

●言葉に発せず暗黙の了解で人々を誘導するのを美しいと投書する主婦

本の中には幾つもの実例が載っていて良く分ります。

特に力説されているのは、日本では発せられた言葉や行動が意味を成していない事が多いということです。

その時の状況や環境、これまでの学習に基づいて自分の正しい位置を総合的に判断していかなくてはならない。

「お前の事を考えていっているんだ」というのは、「そのままだと目障りだから、自分に都合の良いようにお前を変えてやる」というのと同値というのは溜飲が下がりました。

本当の事を自分の言葉で静かに話すだけでよいのです。
そういう言葉の上で、意見が異なれば建設的な会話ができる。

多くの場合、日本では、一つ一つの言葉には意味が無く、欺瞞に満ちている事を痛切に批判しています。

私は、若者というのは、いつの世でもこれらの欺瞞性に気がつくものですが、それをストレートにいえるようになってきているのではないかと思っています。

実は、中島さんのような生き方は実はとても楽なのではないかと思います。
だから、解説の「生きるのが下手な人」とは思えない。

どちらかというと、京都の文化を体得していくよりも、言葉の意味をそのままきちんと魂から話していく誠実さを身に着けるほうがずっと楽だと私は思います。

なぜなら、京都の方式を体得する事は京都に生まれしかも、その方式を学ぶ環境にいなければ不可能だけれども、誠実さを身に着けるなら、明日からでも少しずつ実現できるからです。

言葉で意思を確認し、自分の意見と相違を述べる事ができる。
客観的な指標があるので、行動しやすいでしょう。

今、昔からの社会的な暴力的抑圧のもとにしかれた道徳から、新しい道徳が生まれようとしているのかも知れないと思いました。

中島さんが繰り返し言っている事は一つだけのような気がします。

「ちゃんと魂のこもった意味のある言葉を話せよ」という事だけです。

実は、患者さんは医者のうそ臭さをかぎ分ける嗅覚を持っているので、誠実な医者をかぎ分けるのではないかと私は密かに思っていました。

必ずしも世の中はより良くなっていくわけではなく、ただ変化していくだけかもしれないですが、そういう中にあってはなおさら、意味を持つ言葉できちんと確認していかなくてはいけないと思っています。

そうでなければ、その人の持つ言葉が全て無力化してしまい、発言も書いたものも全て重量を失い、意味を成さなくなってしまう。

私はそういう人間にはなりたくないので、自ずとどのような暮らし方をすべきかという事が見えてきます。

常に自分の暮らしざまを脳に映し出し読み進むので、この本は鏡のような側面も持ちます。

人間は良いことも考えれば、悪い事も考える。
素直であれば、ずるいときもある。

でも、どんな人間も必ず死にます。

私も沢山の死に立会い、死を宣告してきました。
一緒に随分涙してきました。
感動した事もあります。

どう有るべきか考えていた私に、『輪を閉じる必要が無い』と教えてくれたのが『死ぬのは、こわい?』という本でした。

人は答えを知りたがります。

問があれば、答えがあると考えます。
受験勉強に明け暮れていればなおさらです。

でも、輪が閉じない、答えがないことも多い。

そして、そういったものは気持ちが良いものだと思いました。

振り返れば人生なんて、輪が閉じない方が多いものです。
私も考えてみれば、開きっぱなしの中途半端な輪の連続でした。

この本を取り上げるときに、そのことについて書いてみます。

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