野の花クリニック/その2
静けさが 白く 夏花に 解けていく (大和田優仁)
患者さんやご家族の奏でるアリアに静かに揺れていました。
この草花が死や生を語っているように思いました。
その様子を詠んだのが上記の句です。
徳永進先生は死と言うものを語ってきた先生です。
死ぬのは、こわい? | |
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死は自然なもので、汚らわしいものでも、逆に持ち上げるべき特殊なものでもありません。
良質な死生観を私たちはそれぞれ手に入れ、共有していく必要があります。
医療崩壊について書こうとしていたところに、良いクサビが打ち込まれた気持ちです。
徳永先生は『パッツォ』と呼んでいました。
より良い『パッツォ』が私の心に宿るように、祈るような気持ちで句を詠みました。
白く という言葉が夏花(げげ)にも解けていくにもかかるようにしました。
とけるも、『溶ける』でなく、『解ける』にしました。
生きているときに、こんがらがってしまった沢山のものが、死に行くとき解けて(ほどけて)『とけていく』事をこめて、そして、何らかの解(答え)に近づくことをこめて詠みました。
古文風な語尾にしてもよかったのですが、あえて口語体にして、ぶった切って余韻を残す感じにしました。
全ての人が去っても、この白い花は初夏の風を受けて中庭で揺れ続けるでしょう。
かつて、御地蔵さんに『暑かろうと』水をかけてくれた人々が去っても。
かつて、イタリアのアリアを優しく歌った人々が去っても。
崩壊しつつある医療システムの鎮魂歌かもしれません。
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