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2006年8月 5日 (土)

医療事故の報道の理解の難しさ/医療崩壊10+2

今週の週刊文春に水戸の病院で起きた心臓外科の医療事故について、詳しく報道されていました。

もしこれが事実なら、医師としてとても許せるものではなく、怒りを覚えます。

もう一本こちらの報道もありました。

この報道によると、公園で倒れていた女性の治療に当たったというものです。

詳細は不明なのですが、肺血栓症はそのもの自体が致命的になる疾患です。

また、静脈内にできた血栓が次から次へと飛んできて、一つの山場を越えてもまた致命的になってしまうことがあります。

そのため、この神戸の先生は、血管の中に肺に血栓が飛んで行かない傘のようなワイヤでできた網を留置しようとしたのだと思います。

ただ、操作は壁が非常に薄い静脈内での操作でしかも、血栓が残っている事もあったりするので、とても慎重に行われます。

まれに、血管を傷つけてしまう事もあります。

緊急の操作ならなおさらです。

同じ事件のずっと短いこちらの報道をご覧ください。この報道の最後には、『医療事故の可能性が否定できないため、病院側が警察に届け出た』と言う、そして、『外部評価を入れ、医療ミスかどうかきちんと判断する』と大切な情報が載せられています。

病院が積極的に、何が起きたのか、クリアにしていこうとする姿勢が伝わってきます。

最初の報道にはなぜか、その部分が全く欠落している。

記者さんの取材ミスなのか、報道の方針なのか、その原因は不明です。

ご家族などに訴えられて、警察が乗り込んできたのとは違うわけです。

最初の報道とは受ける印象が大きく異なります。

現場で起きているニュアンスを正確に伝えるのは難しい。

でも、それを文字に書き起こしていくのがジャーナリズムのプロの仕事だったはずです。

このように、記者さんの不勉強や、情報の選択により、事実を伝えているつもりが、医療不信を煽るだけの報道になっていってしまいます。

また、水戸の事件と神戸の事件の二つの医療事故には、大きな違いがあります。

両者を同様に扱う事は避けなければなりません。

さらに、今日、ある報道機関が『病院内で不審死』と報道した事件の追加報道がありました。

認知症と難病によりチューブ栄養のご高齢の方で、呼吸が止まってしまったため機械をつけたけれど、脳死状態となりはずした方の例も含まれているようです。

『うちの話ですか?』と報道機関に逆に疑問を投げかけているご家族もいらっしゃると述べられています。

どこに『不審死』という殺人をほのめかす言葉を使う必要があったのでしょうか。

この事件は、ある報道機関が「不審死:富山・射水の病院で患者7人 50歳医師、呼吸器外す?--県警が捜査」と報道したものです。

当初から、この報道の見出しには無理がありすぎました。

事実と大きくニュアンスが異なる事が解ります。

終末期ケアのあり方を問う報道であったのなら、記者さんの技量も評価されるというものです。

視聴率至上主義に陥ったため社会的な評価が極端に低下しているメディアの報道もなされました。

こういった事を繰り返している報道に質の向上を望むのは難しいでしょう。

断片的に伝わる情報を自分で多面的に考える必要があります。

私は、今でも残っている医療機関への信頼関係を、これ以上崩さない様にに努力するしかないと思っています。

現場はフェイクでも虚構でもなく、リアルなものであり、そこから全てが生まれるのですから。

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