真の洞察は色あせない/わかれ歌
かすかなストリングの後の出だしから衝撃です。
モーツァルトのバイオリンの曲のようです。
『道にたおれて、誰かの名前を呼び続けたことがありますか?』
『たそがれは人が言うほど優しい人よしじゃありません』
感傷に浸れるうちは余裕があるだけです。
『私は別れを忘れたくて、彼方の瞳(め)を見ずに戸を開けた』
人が、ある人の瞳を見ないで行動する心理が伝わります。
『わかれは幸せの後ろをついてくる』
(わかれ歌、中島みゆき、1978『愛していると云ってくれ』)
そして、幸せを継続させるためには、実はエンジンと燃料が必要で、絶え間なく注がれる相互理解に基づいた愛情が必要な事をこの短い言葉で切り取っています。
なんという才能でしょう。
そしてなんという洞察でしょう。
実は、若い頃、私はあまり中島みゆきは好きではなく、ロックを聞きまくっていました。
年取った今、彼女が切り取った人間の心理をやっと理解できるようになり、涙腺と心を直撃されています。
最近の歌が作られてはわすれ去られるものとは大きく違います。
それは、人生の真実が詩となり結晶化され閉じ込められているからです。
このような大切な丁寧な仕事を行う職人さんが減りました。
ゆっくり、時代はまた揺り動かされていると感じています。
あわてない。
スローな丁寧な仕事がまた見直されています。
この曲からもう一つのフレーズ。
『いつも立ち去るものだけが美しい』
『残されてとまどうものたちは 追いかけて 焦がれて 無き狂う』
このフレーズの『とまどう』と言う言葉がとても大切です。
悲しい、悲しい だけでは、表層です。
残されたものたちは、まず戸惑うのです。
なぜ? どうして? 何が起きたのか?
この心理の動きを一行で切り取る能力は、まさに肉屋さん職人が切れる包丁によって、血を滴らせることなく、肉塊を骨からはずす作業の様です。
30年近く前の曲ですが、ituneでゲットできます。
若い人たちにこそ是非聞いてもらいたい曲です。
大きな儲けに目がくらみ、繊細で、丁寧な仕事を教える大人が減りました。
日常の仕事で疲れ果ててしまい、夢を語り、ビジョンをめざす大人が減りました。
でも、絶滅はしていません。
一歩一歩、一緒にがんばりましょう。
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