医療と郵便の類似性2
公的サービスのコストカットが意味する事は、それぞれのサービスを利用する機会を減らす事と、サービス提供所の減数化と集約化を意味します。
難しいのは、利用者がそのサービスの全体や、一度もそんな事を考えた事がないのに、『いざ利用しようとした時にはじめて』気が付くということです。
また、そのより良いシステムがどのようなものか、一般国民は解らない。
『なんでもいいから、良いシステムにしておいてくれよ』と言うのが実情だと思います。
御花屋さんから手紙を付けようとして感じた郵政の非現実性を、どのように改善したら良いか、提案する力は私にはありません。
このような公的サービスはどのようなものが良いのか。
大切な事は、コストカットをすると、その分、国民が自分でやる部分が増えると言う事です。
そして、システムが崩壊してしまって非効率的になると、合計で支払うコストはとてつもなく巨大にななります。
そもそもの社会互助システムとしての健康保険システムのないアメリカでは、虫垂炎の一泊二日の手術が、合併症なしで百数十万から数百万かかるという事を忘れてはいけません。
私の先輩も、夜間の外来で、保険が使えるかどうか確認する10時間近くを硬いストレッチャーの上で、腹痛と悪寒に耐えながら手術を待った事を思い出します。
また、運悪く夕方、手を折ってしまった友人は、まず、3時間待って一般医の診察を受けましたが、待ち時間の間に救急外来時間になってしまいました。
一旦帰宅した放射線科医が来るまでの8時間近くを待ち、次に整形外科医に固定してもらって、痛み止めを6錠だけもらってやっと翌日朝、家に帰りました。
後で払った金額は合計120万円でした。
短期滞在でしたので、カード会社との契約がありましたが、40万円近くを自費で支払いました。
彼らは、自分のシステムに払い込まれる確証がなければ、医療を開始しません。
治療開始の決定権は双方にありますが、患者と医師の契約と言う形を取りますので、契約が成立しなければおしまいです。
患者さんがそれでも診察を望むのなら、契約してくれる相手の医師を自力でさがす必要があります。
日本の医療のような福祉的な優しさをもった、『いたわる』という姿勢とはとても離れたものである印象を受けました。
そもそも医療機関にそのような機能は期待されていません。
高額なため、プライベートで保険料を御支払いしていないと、手術も受けられません。
全てが個人に任されている、究極のシステムです。
その代わり、政府が支払うコストは比較的小さい。
また、適切な診断がついても、医療機関にかかり続ける事ができず亡くなられる方々も多くいらっしゃるのです。
医療などの公的サービスは文化と密接に結びついています。
私は、このような、個々人に全ての責任を負わせるシステムは日本にはそぐわないのでは無いかと思っています。
実は、国民皆保険は数十年の歴史しかありません。
車の対人保険と一緒で、プライベートな保険を組み合わせないと医療費が払えない、という時代が来るかもしれません。
医療費が高くなって行くと言うのは、高齢社会では仕方の無い事です。
郵政も医療もコストの削減は必要です。
でもそこには大局を見た上での、血の通ったユーザーの気持ちがわかる、優れたシステムを練り上げる必要があります。
それが、きちんと効率よいものかどうか判断する事が大切だと思っています。
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