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2006年10月25日 (水)

糾弾は何も生まない/マスコミは新しい医療報道のパラダイムシフトが必要

妊婦さんの転送の問題の報道が続いています。

報道は難しい。

こちらに、詳細な報告がなされていますが、報道から受ける印象とは大分違う事が分ると思います。

現場の方々は必死に動いていたようです。

赤ちゃんより母体を何とか救おうと努力していたようです。

転院を断らざるを得なかった病院には、妊婦さんたちが溢れていた。

そして、彼らもまた、自分達が引き受けられない患者さんを他院でありながらも必死に別の転院先を探していたそうです。

医療者が現場でどんなに歯を食いしばっても解決できない、医療システムのひずみそのものが生み出した悲劇だったようです。


こちらに、稚内市民病院の産科の先生の動画が掲載されています。

この良心的な先生一人が、稚内の産科医療を支えています。

もし、患者さんに予測のつかない事が急に起きたときに、また糾弾されてしまうのでしょうか。
このような先生方が独りずつ、現場を離れているのです。
涙が出てきます。

日米、欧州のOECDの平均値を大きく下回る医師数と、GDPでも最低ランクの医療費の日本。

こちらに、本田先生と西村先生の対談があります。

日本には、看護師さんも1床あたりアメリカの4分の1しかいません。

激務から看護師さんがどんどん辞めてしまう理由もここにあります。

労働環境の悪化と人員の欠乏の悪循環に陥っています。

それでも現場に残っている医療者は、全力で誠意をこめて加療にあたっています。

病床数が多いとの指摘もありますが、欧米のシステムでは、病床数に含まない部分も有り、比較には注意が必要です。

また、あまねく国民を守るシステムである日本の医療では、病床数が極端に多いとは思えません。

急速な病床数の削減が、今どのような社会的負担を強いているかをみれば、余っているかどうかのヒントになります。

この対談の概要だけでも、医療者の絶対数の不足+偏在により、システムが回らない現状を示しています。

もし、急ぎの事態でも何とか対処できるようにするなら、医療の現場は究極のマンツーマンですから、どうしても人員の増加とシステムの効率化が必要です。


救急病院で、疲れ果てた医師や看護師がそれでも笑顔を絶やさないように努力している姿をご覧になった方々も多いのでは無いでしょうか。

激務をこなせないのは自分の力不足によると考え疲弊し自殺していく医師が後を断ちません。

かつて、閉鎖的であった医師たちを糾弾することで一定の価値を持っていたマスコミは、状況が全く異なった今、こういった善意で動くシステムに変わった後ですら同じ刃を向けています。

その結果は医療の退縮でした。

どうか、こういった全力で戦う優しい先生が全国で医療を続けて、患者さんの幸せにつながるよう願うばかりです。

こういった建設的な力をマスコミは発揮する事もできるのです。

静かに、野町和嘉さんの写真展、アンデスで心を落ち着けたい気持ちです。

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