移植腎の癌は転移するのか?
移植された腎の癌は育つのでしょうか?
一歩引き下がって、医療とは何かを考えさせられます。
医療は医療システムの存在のためにあるのではなく、病める人々を癒すために存在します。
終末期ケアを『病院内で不審死』と糾弾して尻つぼみになった報道や、
『無資格内診』と糾弾したものの、現状にそぐわずその後の展開が無い報道に引き続き、『癌患者さんの腎を移植』というセンセーショナルな報道も同じ無意味さを感じます。
大切な事は、
腎移植のドナーやレシピエントの方への説明、きちんと取り出してよいものだったかどうか、疾患により摘出された腎は本当に移植して悪いのか?
という議論です。
移植腎の中の癌について考えてみました。
移植された患者さんたちの中で、それらの腎は立派に機能していて、元気を取り戻しているからです。感謝の念まで報道されている。
いったい、移植された腎にある癌は、その人の中で悪さをするのでしょうか?
普通、移植された癌はその個体の中で死滅してしまいます。
癌も別個体の細胞だから拒絶反応が起きるのです。
癌はその人の細胞が暴走したもので、その個体において免疫機能から逃れるすべを得て、大きくなるものです。
他人の癌は明らかに他者の細胞ですから、他の人の体で育つ事は普通ないと考えられます。
ただ、免疫抑制薬を内服していたりするので、そのあたりはどうなのかは、不明な点もあるでしょうが、確率は低いと思います。
いろいろな文献をあたってみましたが、移植する臓器の癌の転帰に付いての良い物はまだみつけられていません。
ただ、ヌードマウスという免疫欠陥マウスには、腫瘍を移植する事が可能です。
それ程、癌そのものを移植するのは難しいのです。
つまり、免疫抑制薬を例え飲んでいても、きちんとした免疫機能(細胞性免疫と液性免疫)が残存していればが働いているなら、他人の癌は生き残れないという事が予想されます。
移植された腎の中でも増殖は難しいかもしれません。
このあたりはたぶん、移植専門医の先生方が多くのコメントを発表される事でしょう。
大切な事は、移植を受けた患者さんが皆さん、医師に感謝の念を述べている点です。
報道が『病院で不審死』と断罪しても、現場で患者さん方が医師や医療機関を養護して、意味を成さなかった時と構造がよく似ています。
大切な事は、腎移植を希望される患者さんに対し、ドナー数が圧倒的に少ないということや、もう少しきちんと書面上の整理がなされている必要があったということだと思います。
また、社会のコンセンサスも必要でしょう。
ただ、救われた患者さんが数多く存在する中で、報道は一体なにを伝えたいのでしょう。
本当の議論が深まるような報道が本物だと思っています。
残念ながら、移植された癌が転移するか、あるいはその移植腎の中で育つのか、専門医の見解を添えた報道は一社も無いようです。
もし、『癌患者さんから移植』と言う事をこれほどに大きく報道するなら、この情報は必須だと思います。
もし、健康な人から取り出さなくて良くて、手術で摘出し廃棄するしか方法がない腎で、人命が救われるのなら、倫理的な法制度がなされるだけで画期的な方法になる可能性を秘めています。
しかも手術で摘出された腎は、悪性のものだけではありません。
私は、情報が少なくて判断できませんが、議論を封殺するような報道だけは良くないと思います。
大いに議論すればよいのです。
議論して、国民が反対というなら、反対。
国民が賛成と言うならすすめればよいだけです。
多面的な思考がとても大切です。
また、医療報道に対する配慮の無さと、理解不足が露呈されていると思っています。深く理解しないでどうしてこんな風に大々的に報道できるのか、理解に苦しみます。
現場が混乱するだけです。
こういった事件でもなければ、急ぐ必要も無い報道は、きちんと調べてちゃんとするまでは、発表しないというが普通ではないでしょうか。
私はいつも思うのですが、どんな不勉強で不十分な見出しでも良いので、その下を2分割にして、議論を深めるために賛成派と反対派の意見を並列してもらいたいものです。
少しはそのオピニオンを読んで新聞記者さんの不勉強を補う事ができます。
新聞各社横並び、一方通行の片側だけの情報では議論は深まりません。
医療問題では、どうして横並びになってしまうのでしょうか。
報道者の思考停止は良くありません。
今回は癌についてだけ考えてみました。私は、救われる人が沢山いてよかった思う反面、摘出適応があったのか(これも1か0では割り切れないものですので議論が必要です)、書類の整理やサポートする人が必要ではなかったか、ということも考えています。
いずれにしても、多角的に考えていく必要があると思っています。
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