中目黒の焼鳥/本物を求めるなら/みさきを知っていますか?/鳥を知るならその道40年
忙しすぎて気持ちが散漫になったので、いつもカバンに忍ばせている小さな写真集の冬の海を見て外に出ました。
本当はこういったときには、砂浜で独り静かに座禅を組むのがよいのかもしれません。
日本人の心に染み入る禅の心。いつでもそういった静かな気持ちを持たなくては。
禅寺で鋭気を養いなおす必要がありそうです。
気をとりなおしてから中目黒に急ぎます。
こんな風に『みさき』を見せてくれるお店はそうそうありません。
中目黒は焼き鳥屋さんが沢山あります。
山手通り沿いに分布していて面白いです。
焼き鳥というと、ガード下の輸入冷凍ものから、高級店まで様々な物があります。
ガード下の焼き鳥屋さんで重要な話をしたことも有りますし、思い出深い。
私は焼き鳥大好き人間なので、いせやの閉店ときいて吉祥寺まで行った事をお書きしました。
中目黒には鳥八さんという焼き鳥、和料理屋さんがあります。
看板料理は二つ。
板長が岩手の新鮮な生の地鳥からさばく焼き鳥と、料理長が新鮮な北海道の幸から作る和食です。
『みさき』と言う部分は面白いところに有ります。
丁寧にうぶ毛を取った鳥のももの部分です。
この毛根まで丁寧に取るうぶ毛取りが大切で、きちんとやらないと、ギシギシした皮になってしまいます。
骨を取り除いてある肉をもう一度たたんでもらいました。
左側のもっているちょっと飛び出したところがオシリで、指の上に少し飛び出しているところが、いわゆる『ぼんじり』です。
生ぼんじりの写真はなかなかお眼にかかれません。
鳥のオシリの羽を動かす根のところに有る部分で、脂肪が多くて濃厚な味がします。
そのため、ぼんじりを網で七輪で焼くとモクモク煙がすごいです。一羽からあまり取れないので貴重品です。
骨を取る為にもも肉を縦に割くわけですが、それを開いたところがこちらです。
拡大してみます。
指のすぐ左側に薄い皮に透けて僅かな横に走る三角形の肉が見えます。
これが『みさき』と呼ばれるところです。
極僅かしかありません。ぼんじりの半分ぐらいの体積です。
ですから、みさきを焼き鳥にするためには三羽で一本分しかできません。
また、このように小さな肉なので、決して胸肉のような形にはなりません。
味は、柔らかですが、歯ごたえがあり、ぼんじりの濃厚さが加わった滋味溢れる味わいです。
それを引き立てるのは、浅草のうなぎの小柳さんのようなあっさり系のしょうゆだれ。
実際、鳥八さんの七味には山椒の香りが高いものが使われています。
一串の半分はそのまま、半分は七味を僅かに付けて食べました。
鶏がらだけで作ったスープもとても良い。
鳥の栄養が体に行き渡る感じです。風邪気味だったのでありがたかったです。
これから冬本番です。
温まるには最高でしょう。まずい焼き鳥に絶望した方、要チェックです。
スポーツ選手や芸能人が何も言わず御忍びで来るのもうなずけます。
美味しいし、体に良い。
中目黒と焼き鳥で検索しても、鳥八さんはひっかかりません。
それは、味で勝負してきた彼らの自負があるからでしょう。
なんと板長さんは40年ひたすら鳥をさばき、串を打ち、焼き鳥を焼いてきたのです。
鳥の事を話し始めたらものすごい。
一串が300円と標準的で、白木の京都の御茶屋さんのような静かなたたずまいです。
板長さんに正しい鳥の話を聞いて、焼き鳥博士になるのも良いでしょう。
若い人に是非本物の焼き鳥を知って欲しいと思います。
羅臼産のホッケ、厚岸の牡蠣だけでなく、氷下魚(こまい)など北海道の和食も勢ぞろいしています。今日はみさきの話題なので、北海道の話しは次回。
野球選手から差し入れられた幻の焼酎も完備されており、なんともいえないお店です。
米は渋谷、代官山を一手に引き受けるプロ集団から仕入れています。
中目黒を語るなら、鳥八に行かずには語れないと思っています。
こういった一線を画した働き者の職人さんとその技を大切にしていくべきでしょう。
(このブログを見て来たと言ってくださると、何か小さなもの一品付けてくれると思います)
『多くの人はこんな丁寧なお仕事されているの知らないと思います。みさきを一羽分だけ、一口サイズで出すのどうですか?』と尋ねたら、『そんなの焼き鳥じゃねぇ』と一喝されてしまいました。
すみません。
(焼いたみさきの写真はあえて載せません。多くのウエブ上のみさきと呼ばれている焼き鳥はその近くの肉も一緒に焼いていると思われる形態であって、本物では無いと思います。確かめに行ってみてください。トレージャーハンターみたいで楽しいですし。みさき、終わっちゃっていることも多いそうです。何といっても三羽から一本なので・・・)
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