DHAの不思議なお話/ω3の秘密/海の隠された秘密/魚よありがとう
今日は、リサーラで有名になった、魚油のDHAのあまり知られていない、不思議な話についてお書きします。
私は定期的に医学論文を書いています。
論文は様々な審査があり、きちんとしていないと落ちてしまうものですので、お仕事を頂く前に審査のある雑誌の原稿と少し性質が違います。
どちらも同じ位大切なのですが、自分の力試しの面もあるので、挑戦し続けています。
重なる時には重なるもので、丁度同じ時期に2つの大きな論文の仕上げがやって来て、天を仰ぎました。
どちらもとても大切な論文なので、がんばって校了しました。
一つはお魚に含まれるDHAについての物でした。
お魚に体に良いω3という脂肪酸が含まれている事はだんだん知られる様になってきました。
私は、物忘れ外来などもやってきた神経内科専門医なので、中枢神経に良い働きをするという(島根大学さんの発表を先日ご紹介しました)DHAがとても気になっていました。
DHAは何処からやって来るのでしょうか?ヒトの体とは違う作りの魚が創ってくれるのでしょうか?
実は違うのです。
EPA(Eicosapetaenoic acid, EPA)やDHA(Docosahexaenoic acid, DHA)などのω-3不飽和脂肪酸は、魚類に多く含まれる不飽和の炭素結合をもつ脂肪酸ですが、魚が生きていくために必要な物だと考えられています。
なんと、ω-3脂肪酸は海洋植物プランクトンが生産し、食物連鎖の上位に位置する魚類が蓄積していると考えられているのです。
さらに、全植物プランクトン中のEPA量の増加には珪藻が、DHA量には渦鞭毛藻が関係していることが海洋プランクトンの解析から報告されています。
(Arch Physiol Biochem. 1998 Jul;106(3):253-60. Seasonal variation of fatty acid content in natural microplankton from the Tumpat coastal waters of the South China Sea.)
この事はあまり知られていませんね。
実は、魚は海の中では食物連鎖の上位に位置するので、プランクトンを食べた小さな魚を大きな魚が食べるという事を繰り返し、大切なEPAやDHAを高濃度に体内に保持しているのです。
そのため、小さな魚を食べる肉食の大きな魚であるマグロにEPAやDHAが沢山蓄積されているのです。もちろんグリーンランドで食用になるアザラシにも・・・
今日、遅くなってから、親類に海岸の市場から送っていただいた金目鯛を頂きました。
ひれの近くの筋肉や、えら蓋の中にある筋肉、目玉の中といった小さな筋肉が結構好きなので、箸の先でつつきながらちぎらず、分けながら食べてみました。
胸びれは各方向に幾つもの筋肉がきちんとボディの骨や腱についていて、いろいろな方向に動かせる事を発見しました。人間で言う、肩関節の様な作りです。
ついている方向によって、筋肉の質(食べてみた歯触り)や太さ、線維の方向が違います。右側でばらして食べ、左側で確認しながら食べてみました。
そんな事をしているうちに、必死にDHAの論文を書いていたこともあり、食事の手を休め私は少し想像してみました。
小さな小さなプランクトンが海の中で太陽の光を浴びて、ヒトもサカナも創れない素晴らしい脂肪酸を創り、それを大きなプランクトンが食べ・・・金目鯛が食べて、いま、人間が煮付けを食べている・・・
遠い海、近い海から、深い海、浅い海から、魚というコンテナでω3が運ばれてくるのだなぁ・・・
今日は食べ終わって、ちょっと疲れぎみでしたが、念入りにごちそうさまをお魚に言いました。
深い海でここまで大きくなってくれてありがとう。
はるばる東京の陸地のここまでω3をつれて来てくれてありがとう。と。
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