警鐘!/薬漬けの子供達/起立性調節障害の危うさ/ちゃんと寝て、ちゃんと起きる
起立性調節障害という病名が幽霊の様に一人歩きを始めている様です。
血圧を上げるリズミックというお薬が使われる事が多いのですが、リズミックは頭痛の副作用を良く引き起こす事に思い至らない事例に頻繁に出会う様になりました。
起立性調節障害の基本的な点は、『本当に血圧の低下で子供達の症状を説明できるのか?』と言う点です。
低血圧で症状を引き起こしている確証もないのに、どれだけリズミック漬けになっている子供達がいるのでしょうか?
少し前のSSRI漬けやリタリン漬けの子供達を思い出します。
子供達の血圧は上が100をきる事も良くあります。
私達、神経内科医はパーキンソン病や脊髄小脳変性症などの起立性低血圧の診断を数多くこなしてきました。
寝た状態から起立すると20mmHg以上の低下すると起立性低血圧の診断がなされます。それは、チルトテストという角度を変えられるベッドで厳密に検査を行います。
リズミック漬けの頭痛が頻発する子供達でチルトテストを行った方は“独りも”いなかったのです。
さらに、“おかあさん、お子さん、立ちくらみあったのですか?”という質問に、“いいえ、立ちくらみはありませんでした。学校に行く元気が無いという事で小児科を受診したら、『起立性調節障害』なのでリズミックを飲む様にと言われたのです”とおっしゃるのです。
起立性低血圧の検査も行わず、立ちくらみ(起立時の臨床症状)も無いのに、起立性調節障害????
絶対に間違っているとおもいましたが、奥が深かった。
我々、神経内科医はリズミックやメトリジンなどの血圧を上げる薬剤はとても慎重に用います。
たとえ、起立時に20mmHg以上の血圧の低下が検査で見つかったとしても、その患者さんに症状がでていなければ薬剤を用いる事はほとんどありません。
なぜならば、こういったお薬は対処療法であり、症状を緩和させるものであり、緩和すべき症状が無ければ用いる必要の無いものだからです。
しかも、立った時にちょうどいい血圧でも、寝ると200を突破する様な高血圧になってしまう事もあるからです。
リズミックはノルアドレナリンの血中濃度を上げて、手足の血管を持続的に収縮させる事で、血圧上昇をきたす薬剤です。
つまり、立った時だけに都合良く効く薬ではありません。寝ている時にも四六時中血圧を上げ続けるお薬です。
こちらをご覧ください。
リズミックの副作用は、“動悸,のぼせ,頭痛などが起こることがあります。ときには吐き気,胸やけなど,胃腸症状や発疹,湿疹などの過敏症”と明記されています。
私も頭痛から、リズミックの内服を断念した脊髄小脳変性症の患者さんを何人も経験した事があります。大人の患者さんでもそうなのです。
それでは、私のクリニックを頻繁に訪れる様になったリズミック漬けの子供達の“起立性調節障害”の場合はどうでしょう。
お母さん達は口を揃えて、“立ちくらみは無かった”とお話しされます。
チルトテストを行った方は独りもいませんでした。
そこで、起立性調節障害の診断基準を見てみるとびっくりしました。なんとチルトテストの理学的所見は小項目で隅においやられています。
大項目には、少し動くと動悸がするとか、午前中調子が悪いとか、血圧との関連が薄い項目が並んでいたのです。これでは、午前中調子が悪くて、少し動くとドキドキして、食欲不振がある(大項目2つ+小項目1つ)で立派な『起立性調節障害』が出来上がってしまいます。
どこにも、血圧に関するものが無くても良いのです。なのに出される薬は血圧に関連した薬。なんじゃこりゃ?
しかも、リズミックの副作用がこれらの症状と一致します。
つまり、少量のリズミックを内服した所で、副作用の頭痛や吐き気が出現し、それを、『起立性調節障害』と診断し、さらにリズミックが増えるという悪循環に陥る可能性を示唆しています。
夜更かしをして、サーカディアンリズムが崩れている疲れ気味の子供達が全部入ってしまいそうです。
なんと、あるお子さんは、ひどい肺炎の後、だるさが残ったというだけで、“起立性調節障害”という病名の元にリズミックを出され、夜も眠れない程の頭痛が頻発したために来院されました。
起立性調節障害の診断基準にばっちり当てはまります。
(長期臥床による、一過性の自律神経失調は有名な話ですがすっかり抜け落ちています。薬なんかいりません。)
痛みに対して強力な鎮痛剤と不眠に対して睡眠薬を連用し、さらに、だるいという事で抗うつ薬まで出されていました。睡眠薬により彼女は眠くて昼間学校に行けませんでした。
彼女は、私のクリニックで少しずつ薬剤の離脱を経て、今は全ての薬剤を断ちました。
彼女は、病み上がりで体力が落ちていただけだったのに、薬によって具合がどんどん悪くなったと考えています。
今では大好きな水泳を復活し、元気に暮らされています。危なく廃人になるところでした。このようなお子さんに出会う事が一度ではないのです。びっくりしています。
お子さんの治療はできるだけ薬剤を用いない姿勢を貫くべきです。しかも問題なのは、“どこが治療のゴールなのか”主治医と全くコミュニケーションがとれていなかった事です。
たとえば、きちんとした低血圧による臨床症状や、検査値がもとになっていれば、それらを解決するところがゴールになるでしょう。
ところが、ターゲットになる症状が血圧によるものかどうかも確かでないのに昇圧剤を用いて治療しているのですから、よくなるはずも、ゴールが見えてくるはずもありません。
副作用に対してどんどん薬が増え、子供が廃人化していく。
子供をなんだと思っているのでしょう。
いつまで薬を飲み続けるのか、目標も無く、対処療法の薬が雪だるまの様に増えていく治療はナンセンスです。怒りを通り越し、悲しみを覚えました。
規則正しい生活と、活発な運動。
これだけで、自律神経は元気を取り戻します。薬も病院もいりません。
病院なんか早いうちにバイバイしましょう。
この前、先ほどの水泳少女さんが診察にいらっしゃったのですが、再診料なんてもらわずご挨拶ということでクリニックを卒業にしました。良くなればそれでよし。
リズミック漬けの治療の問題点はまだあまり知られていない様です。
いち早く警鐘を鳴らす意味で問題点を呈示しました。
もちろん、リズミックで良くなられる“低血圧が引き起こしている”症状を抱えられた方々はきちんと昇圧剤による治療の継続が必要です。
その見極めが大切だと思っています。
昨年私がお伝えした、PCBが人の寿命を決めるとか、酵素を食べると体の酵素が増えるとか言いたい放題の虚構について報道がなされていました。
リズミックの問題も含め、こういった問題はきちんと早めにお伝えした方が良いと考えています。
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