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2007年6月13日 (水)

アルコール血中濃度と脳機能低下は相関しないことがある

呼気を利用したアルコール血中濃度が低いからほろ酔いで、危険運転ではないという理論を展開している方がいらっしゃいました。確かに呼気中アルコールは血液中アルコール濃度と比例します。

だからといって、血中濃度がすべてだと思うのは大きな間違いです。以下の二つの状況を比べて見ましょう。

1.大量のアルコールを摂取し、φという血中濃度を示している。
2.アルコールを摂取し始めて、φという血中濃度になった。


というのは、人間の生理学から考えて同じφという血中濃度でも同値ではありません。酔い覚めのときに頭がはっきりしないことは良く経験されることです。明らかに酔い始めとは違う気分でしょう。
それは、人の体に「薬物の再分配」
「代謝産物の蓄積」がおきるからです。

ですから、
呼気中の濃度(血中濃度)が基準以下なのだから、ほろ酔いだ」とはとてもいえません。

こちらのバルビタール系麻酔薬の再分配についての記述を参考にされると良いと思います。

どういうことなのでしょう?

麻酔薬は血液中の薬物濃度が上がると意識を失い、血液中の薬物濃度が下がると覚醒するメカニズムを持ちます。
麻酔からさめるのは血液中の薬物濃度が下がるからですが、それは体から排泄されて無くなるからではなく、体の脂肪へと麻酔薬が溶け込むために血液中の薬物濃度が下がり、覚醒するのです。

この現象を薬物の体内再分配といいます。
血液中にたくさんあったものが、体内の別な臓器に再分配されて、濃く蓄積されるからです。

ですから、脂肪にいったん溶けていた麻酔薬が血液中に溶け出すと、患者さんがまた昏睡に陥ってしまうことがあり、手術後、特に肥満体質の方には我々は大きな注意を払います。

アルコールなどの薬物にも同じ「再分配」がおきます。
タミフルも幼弱ラット脳に大量に蓄積する傾向を持っていたのは、タミフルの体内再分配の結果です。そのため、タミフルの脳への過鎮静が起きることは以前お書きしました。

アルコールは脳全体への親和性が高く、脳神経細胞への移行が報告されています。
肝臓で代謝されたり、希釈されたりして血液中濃度が下がっても、脳内のアルコール、あるいはアルコールの代謝産物が大量に蓄積している状態がありうるのです。

(水を大量に飲むなどして、血液を希釈するなど)血液中濃度は急激に変化させると、血液中濃度と脳内など体内臓器とのアルコール濃度の格差は大きくなります。

これが、大量摂取酩酊後の血液中濃度と飲み始めの血液中濃度を単純に比較してはいけないマジックです。


飲酒し始めでは、脳内アルコールは0ですから、血液中アルコール濃度が当てになるかもしれませんが、大量に脳内にアルコールが蓄積された後では状況が異なるのです。


つまり、血液中濃度は決して、脳内アルコール量を反映していないということに注目すべきでしょう。

さらに、注目はこちらです。
アルコールの代謝産物、アセトアルデヒドにも中枢作用が存在するのです。
しかも、このアセトアルデヒドは計測されません。

大量摂取後、血液中アルコール濃度が下がっても
1.脳内アルコール濃度は高値かもしれない
2.代謝された大量のアセトアルデヒドが中枢に影響を与える

という点が、血液中アルコール濃度だけを信じてはいけない理由です。


何よりも重要なのは、アルコール濃度ではなく、その時、その人がどのような脳機能であったかであるはずで、アルコール濃度がたとえ0であっても、酩酊状態なら、そう判断すべきだと思っています。

もし、大量飲酒後、脳内に大量のアルコールを分配した後、透析などを行い急速に血液濃度をさげて、濃度差を作った場合、血液中アルコール濃度が0だからといって、酔っていないと判断するでしょうか?

大切なことを見誤ってはいけません。
大切なことは、そのときの脳の機能です。
アルコールの血中濃度ではないはずです。

今はやむなく血中濃度(呼気)を用いているに過ぎません。
おのずとそのときの言動で分かるはずです。
それを手がかりに脳機能を推察すればそれでよいのです。人体の生理学は科学者によって明らかにされており、その事実をきちんと理解した上での判断が必要です。

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04.栄養運動医療アドバイザー / 医療コラムニスト」カテゴリの記事

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