岩崎さんの『プロジェクトコード』
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『プロジェクト・コード』という本を著者の岩崎さんから頂きました。
私は、金融は全く素人で、大丈夫かな?と思いました。
楽しく読み進めることができました。
読み終わってみると、なによりも、私のような素人が読むべき本だと思いました。
本は、ファウンド会社に勤める新人、工藤大介がファーストクラスで帰国するところから始まります。
ファウンド、というといろいろな市場を食い荒らすだけの『ハゲタカ』というイメージがあります。
ですが、岩崎さんの根底に流れるものは、『どうやって働く人々を守りながら、企業という“生き物”をどうやって長生きさせ、繁栄させるか?』という所が良いところだと思っています。
この本の中には、太陽照明という企業の再生のお話が出てきます。
創業者が大きくしたものの、二代目で傾きかけた企業のお話です。
自力で再生を試みる過程が描写され、お話にグイグイ引き込まれます。自力では無理そうだと思われたときの哀しさ・・・
太陽照明の立て直しに、PIPEs(Private Investment in Public Equity):パイプスが出てきます。
ファウンドが企業をすべて買収し、非公開化して、立て直して価値をあげて、再上場し収益をあげるというものとは違う方法です。
PIPEsは上場したままファウンドが資金を投入し、企業の収益を上げ、価値を上げていき、株価の上昇に伴い収益をあげるというモデルです。ニッセンやラオックスがこの手法で立ち直った事もかかれています。
その後、物語は大きな山場を迎えます。
MBOやTOBといった、時々ニュースで耳にする言葉が小説の中で生き生きと語られています。
そして、こういった物が決して理解不能な物ではないことがわかりました。
ファウンドの人々の中にも、不安と『賭け』の中で生きていく人間構図が隠れていて、共感できる物があったからです。
ヘッドハンティングを装ったリストラなどは非常に新鮮でした。
腕利きのファウンダー達がお金と美人に囲まれる図が多く見られ、うらやましい限りです。
しかし、そのままであったら、企業が失われ、そこに勤める人々がすべて失職してしまう、という状況を様々な金融的な手法を用いて解決していくのが『良心的』ファウンドの仕事だとしたら、とても大切な事だと思いました。
ある時、大出血をしたり、呼吸不全になった患者さんも、急いで手遅れにならないように適切な治療を施すと息を吹き返し、その後は自分で生活できるようになります。
私は、ファウンドは医療者のように、『企業という“生き物”』を治していく治療者だと思いました。
工藤大介に流れる『体育会系』の情熱は人々を動かしました。
どの世界も、人の足を引っ張るのではなく、クリエイティブに人々のモチベーションをあげる人こそが愛され、育ててもらえるのだと感じました。
何よりも、ファウンダーというと、『よく分からないけれども、パソコンでパチパチ文字を打っていて、突然企業を乗っ取る』というイメージしかなかったのですが、ここに描かれるファウンダーは『その企業、働く人々、そのシステムそのものを理解しようとする普通の人々』として描かれていて、勉強になりました。
この一冊でなんだか、経済用語がちょっと理解できた気持ちです。
年末に読む経済書のお勧めの本です。
良い経験をさせていただきました。
岩崎さん、素晴らしい御本、ありがとうございました!
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