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2008年12月12日 (金)

七瀬の死んだ朝/希望は残された/七瀬ふたたび 最終回

七瀬ふたたび (新潮文庫) 七瀬ふたたび (新潮文庫)
筒井 康隆

新潮社  1978-12
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昨日、「七瀬ふたたび」のドラマが終了しました。
少年の頃読んだきりの小説でしたが、新しい設定でリニューアルされたものでした。

人の心が読めるテレパス。
でも、それは、どの人も持っているシンパシー(共感)の能力が極端に高まったという設定と考えれば、普遍的な意味を持ちます。

未来を予想する力、物を洞察する力、人の心を感じる力。
それぞれ、どの人にも備わっている物です。

よかれと思って語りかけても、「異質」ということで社会からはじかれてしまうため、隠して行かなくてはいけない。

七瀬にはactive telepath、アクティブテレパスという特別な能力が備わっていました。
人の心が聞こえるだけでなく、人の潜在能力を高めたり、人の心に働きかける力も併せ持っていました。
ある時、やはり人の心が読める別なテレパスが、七瀬と心を通じ合わせていた青年の心を読んだところ、「彼の中に七瀬が居た」と言いました。
アクティブテレパスというのは、自分の能力のかけらを他の人に渡して、その人の能力を高める物なのかもしれません。

私たちは、素晴らしい講演会をお伺いすると、その人の元気の良さや、生き方の素晴らしさに共感して、その後の暮らし方も少しだけ変わっていくと言うことを経験します。
古典として読み継がれる書物、歌い継がれる歌、そういった物も同じ働きをします。
ある人の祈りや、考え方がかけらになって私たちの中で生き続けるわけです。
アクティブテレパスは実は、私たちも良く経験するものの延長線上にあります。

テレパスは以心伝心の延長線上にあります。
サッカーのアイコンタクトによる素晴らしい連携も同じかもしれません。
リアルな生活で経験される物を、SF化したアクティブテレパスがリアルに感じられるのはそのためでしょう。

彼らは1人ずつ命を失って行ってしまいます。
強大な武器ではなく、自分で考えることなく上司の命令を愚直に実行する、未知な物におびえきった無能な警官の小さな拳銃、あるいは憎悪の固まりになった人の放つ銃によって命を絶たれて行きます。

共感を元にした暖かな社会を願っていた彼らは、恐怖と憎悪によって命を絶たれてしまいます。ここにも、現社会の普遍的な意味が示されています。

魚のように生まれてから直ぐに1人で生きていけるように、人は生まれ落ちません。
必ず庇護者のもと、多くの場合お母さんと共感し合いながらやっと自前で生きられるようになる。以前、生物学者、長谷川 眞理子先生はこの共感が人間に特徴的な物だと教えてくださいました。
そして人は社会を作る。

共感。そして、それを断ち切るもの。善悪では割り切れない人の弱さ。
人を疑う仕事の刑事さんが、最終的には真実を見極め、正しい事を信じ、彼らを守る側に点は、人類科学者的な要素も含んでいて含蓄深いものがあります。

以前のドラマは、マイノリティの哀しみの側面が強かったのですが、今回のドラマは普通の人々がもっと幸せに暮らせる可能性を引き出す「触媒」として、彼らが存在しているのではないかと感じました。

そして、たった独りになった少年は七瀬の祈りを受け、悲しみを胸にしまい、みんなの希望を乗せて、生き延びることを選択する。

七瀬は自分自身も苦しみ、アクティブテレパスの意味を探り、そして、その意味に到達し、森の中で何者かに銃撃され命を絶たれました。孤独の中で失わなかった原点は、女優さんの力もあり、気高さすら感じさせるものでした。

彼女が持ち続けた原点や、仲間たちが一緒に居ることができなかった悲しみは、GReeeenの歌と共に人々の中で響き続けます。
それこそ、アクティブテレパス。
どの人にも、共感の気持ちは備わっています。

数ヶ月間、夜中に録画で見ていた良いドラマが終わりました。
予知能力者、恒介が予知した映像は、七瀬と死んでいく森の木漏れ日でした。
抽象的な映像で構成された、美しい余韻を残すドラマだと思います。
NHKのSFらしい雰囲気も懐かしかった。

今朝は、七瀬のいない晴れた朝。
どこか、心に哀しさが宿る朝でした。

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