断層とガイド/異なる場所へ/ダイアモンドの生まれるとき/ありがとうございます

一年が終わろうとしています。
お礼の一文を、『断層』の考察とともに、捧げようと思います。

沢山の方々に支えられた一年でした。
そして、いろいろ考えた一年でした。

「断層」は、「断裂」に似た響きがあり、あまり良い響きはないのですが、私は個人的に好きな言葉です。
一見、普通の連続した地面に見えても、切断してみると段違いのバウムクーヘンのようにズレがみられたりします。

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井上陽水さんの『断絶』にも、ズレの中で社会とつながる自分の不思議さをいぶかしく思う気持ちが綴られています。
絶望は漂わない。と個人的には思っています。

断層が現れると、急に事態は変化します。

それでは、断層は勝手にランダムに起きるのでしょうか？

理系の人々なら、なぜ断層が生まれるのか、地学の先生から基本的なことを学んでいると思います。

断層は、岩盤の連続性が崩れたものです。
それでは、不連続なのでしょうか？

『連続した球体の表面に浮かぶ岩盤』という共通項があるからこそ、表面から見ると連続していながら変化を内包できる。
つまり、断層は決して不連続ではないということです。つながっているものです。
隣り合わず、共通性や関連性が失われたバラバラな状態では断層になりません。

もう一つ、大切なことは、断層は新たなものを生みだす力を有していることです。
プレートテクトニクスはその最たるもので、我々のくらしている地面をうごかしているのは、地球にある断層のためです。

圧が加わっている断層の先端には応力が働き、様々なジュエルが生まれやすい性質を持ちます。
哲学だと弁証法なのかもしれませんが、地学的視点の面白いところは、地球上の物質が単純に変化しているだけという科学です。
ダイアモンドに輝きがうまれても、金になっても、それが優れたものではなく、ただの炭素が変化したり金属が生まれただけという理解。

さらに、断層はランダムには起きない。
物理法則というガイドに導かれて変化していきます。
ガイドがないと、低温化する前の地球の様に、柔らかな岩盤がランダムに混合されるのみです。

私達の生活の前にも、さりげなくガイドさんたちは現れ、発想や決心が変わり断層をつくります。
突然、その断層はやってくる。
地中にはダイアモンドが生まれ、金属が生まれているかもしれない。
でも、注意していないと、表面の地面は連続しているため気がつかないかもしれない。

しかも、その段階では、まだ物理的に物質が変化しただけです。

人は心を持ち、ゆらぎによる“ひずみ”を抱えている。
その“ひずみ”は、時々その時存在するガイドに沿って断層をうみだします。
そのことに気がつければ、幸運です。
さらに、何かが生まれていれば、さらに幸運です。
セレンディピティもあるでしょう。
美しさをもとめて、断層が生み出すダイアモンドを光路を考えてカットし、金属の表面特性を活かしながら磨いてみたりします。

つまり、ひずみをエネルギーとして、ガイドの存在下に発生する断層は、
連続しているものでありながら、新しいものを生み出す力を持っていて、
それを見つける穏やかな心と、磨き上げる謙虚な努力が必要なこと を私達に示しています。

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『海へ来なさい』という曲には、
しなやかな外界への感性を持ちながら、謙虚に石を磨く大切さが静かに歌われています。
陽水さんは、様々な場所に潜む“ひずみ”や“ズレ”の持つ可能性を美しく描く天才です。

小さな輝きの一滴（ひとしずく）を与えてくれたことに御礼を申し上げます。
来年、戸惑いながらも、私はすこしずつ石を砕き表面を磨いて生きていこうと思っています。
力不足から、約束を果たせず、たたずむだけで終わってしまうかもしれません。

未来を語り、海を見た日を思い出します。

今日はそのことを単純に慈しんで眠ろうと思います。
『海へ来なさい』を繰り返し聞きながら。
心から、御礼申し上げます。
そして、よろしくお願い申し上げます。