夏の俳句/金魚売りと花火と星空と
同人誌に夏の俳句を掲載していただきました。
揺れる影夕日に溶けし金魚売
昔、東京には時折金魚売りの方が現れました。
夕日アスファルトに舗装される前の道を、夕日の中にゆらゆらと消えていく金魚売りの姿を詠みました。
陽炎が道路から立ち上っていて、溶けていく、という表現がぴったりだと思いました。
暑き陽に焼かれし記憶秋の蝉
蝉は華々しく鳴いたあと、小さく固まって死んでいきます。
触ってみると陽の光を集めて、大変に熱くなっていることがあります。
まるで、夏の間に命を燃やして、その自分の熱自体に焼かれたように思えます。
君の目に線香花火映り込む
大花火開きては人浮き立たす
どの人にも、こういった想い出があるのではないでしょうか。
見ているものは花火ではなく、瞳。
潤いをたたえた角膜のアールに沿って、なめらかに小さな光が反射します。
足が痛いのに無理して草履を履いたり、慣れない浴衣で花火大会にいき、人ごみにもまれたり。
花火が開いた瞬間だけ、人の後ろ姿が浮かび上がる風景をきりとりました。
傍らの温もりほのと星月夜
中学生の頃、高原に天体観測に行ったことがあります。
満天の星の下、少し涼しくなってきたとき、ふと、隣の人のぬくもりに気がつきました。
私は、暗記していた銀河鉄道の夜の
「そのきれいな水は、ガラスよりも水素よりもすきとおって、
ときどき眼の加減か、ちらちら紫いろのこまかな波をたてたり、
虹のようにぎらっと光ったりしながら、声もなくどんどん流れて行き、
野原にはあっちにもこっちにも、
燐光の三角標が、うつくしく立っていたのです。」
をお話したりしたものでした。
「ガラスよりも水素よりもすきとおっていて」というフレーズと
「燐光」という言葉が(本当は違うのですが)温度を持たない碧色の光のようなイメージがあり、お気に入りの一節です。
これから、星の美しい季節になります。
東京でも明るい星は見ることができます。
空を見上げてみましょう。
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