INCEPTION/インセプション/インスパイアされたアイディアは消えない
インセプションを見てきました。パンフレットも不思議な形。
「人の思考に入り込み、情報を盗む犯罪を犯す」のようなキャプションが付いていますが、内容は全く異なりました。
なぜなら情報を盗むのはエキストラクトであり、インセプションは思考の種を芽生えさせることだからです。
人の心に湧いてきたもの、インスパイアされたものは、人々の共有の喜びであり、財産である事を示しています。
映画の中でも、インスパイアされたあるいは過去の罪を癒された事自体が、人を変えていく過程が描かれています。
多くの場合、男性が女性にインスパイアされたり、癒されたりします。
最後の場面であきらめて破滅を受け入れようとした主人公に、活路を示したのもヒロイン。
ただ、大胆に未来の予想図や、「アドリブ」で未来を自分の手で作り続けようと模索するのは男性の仕事でした。
何よりも、絵が美しい。渡辺謙もディカプリオも美しい。
イームスが一番好きなのですが、ハサンの調合した香りも嗅いでみたいところです。
冒頭の金屏風の絵から入り、薄暗い日本風の大きな宴会場に作られた橋の奥で女性に合う場面も美しい。
途中、渡辺謙の口から血が漏れるところがあるのですが、無重力の状態なので、一滴だけが口の傍に浮いているところも絵になります。
晴れた無人の海の向こうで、大きな無機質な建物が海の中に氷山の様に崩れ落ちていく様も、中学生の頃、「虚無」にとらわれて自転車で向かった海と似ていてリアルでした。
コンクリートの防波堤の向こうの海を照らす昼過ぎの晴れた太陽は、気持ち良いどころか、さらに虚無を加速させました。何もなかった。
カフカの小説の様でした。
映画では、そこは、夢の最下層の「虚無」の層を示します。
そういった社会へのチャンネルの塞がれてしまった所から、水泳の時に自分の手で冷たい水をかくような、リアルで瑞々しい、充実感を伴う現実に戻らなくてはならない。
一緒に自分の手で未来を切り開いていく世界へ戻れる。
一見強引で説明が不足している主人公の元をいったん去ったヒロインは、「それはある意味の創造主ですよね」と言って、もどってきました。
一度、色々な世の中のものを見てしまうと、その世界の魅力は強力です。
そして、そのヒロインがいなければ、映画の最初のところで主人公は既に死んでいた。もちつもたれつ。女性の可能性を示すものですが、同時に、破滅をもたらそうとするのも別な女性でした。
色々な見方があると思いますが、私はハッピーエンドを夢見続けることが重要だと思っているので、最後のコマは止まるのではないかと思っています。
そう、最後のコマはきっと止まった。
そう信じています。
インセプション、今の私の中では未来世紀ブラジル、ブレードランナーあるいは12モンキーズ以来のお話でした。1Q84同様、世の中には奇遇のようなものがあるものです。
つまり、インセプションは私達の社会でも常に行われていることであり、感覚が鋭敏であれば、その対象者を「ガイド」として見極める事ができる可能性を意味しています。
深い映画です。
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