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2011年5月 3日 (火)

意見は意見として / 命を守る判断が大切

医療現場では、
人の体に起きていることを直視して、
検査をしたりして、異常を見つけ、
全力で治療に当たります。

起きていることに目をつむったり、
ごまかしたりは許されません。
患者さんを治せないからです。

ましてや、状況に応じて、正常値を引き上げて、
「だから大丈夫です。」
などとは言いません。
正常値は長い科学的議論を経て確立されたものなので、
状況に応じて変わることはないのです。

医師に、
「このデータは昨日までなら異常値で手術が必要だったのですが、
今日からは日本での上限値が引き上げられましたので、
正常範囲内になりました。よかったですね。退院です。」
と言われて、安心できますか?
「じゃ、他の国で治療します。」
となるのではないでしょうか。

上限値を議論していること自体が論外です。
放射線は紫外線同様、
よけいに浴びなければ浴びないほうがよいものです

できるだけ少ない放射線量にすることは、
非難されるべきどころか、賞賛に値します。
地方自治体の勇気ある判断を応援すべきです。
梅雨がきて、大地に染みこんでしまう前に処理をすることは重要です。

上限値とは関係ありません。
なぜなら、「上限値」と人間が勝手に決めた値以下でも、
余分に浴びた放射線による障害はリニアに上昇するからです。
上限値を下げれば、守られる人が増える。
ただそれだけです。
医療現場では検査であっても、
できるだけ小児の放射線量を減らすように勧告されています。

上限値をめぐって、
混乱すること自体が意味をなしません。
物理や科学の真理の公式がシンプルなように。
真理は常にシンプルなものです。
忘れないようにしましょう。

そして、そのシンプルさは、
それぞれの人の考え方をあぶり出します。
私達はそっとそれを眺めることにしましょう。
そして、自分たちで信じるものを決めましょう。

TVにでる学者さんは、
揚げ足を取られないように話しています。
彼らは最後に、
「放射線は浴びなければ、浴びないほうが良いことは原則ですが」
という免罪符を必ず付けることを忘れません。
今度、そういった目でコメントをみてみてください。
どの人も同じはずです。

上限値というのは、どう事態を処理するか、
今後どう運用していくかに重要性が置かれていて、
人間のからだのこととは関係の無いところの議論であると理解すべきです。
そう割りきって報道を眺めましょう。
一面では、それも必要かもしれないことだからです。

それにしても、「上限値が20ミリシーベルトだから、
20ミリシーベルトを浴びせて良いといっているわけではない」
なんて、乱暴な言い方だと思います。
組織の人格がよくわかります。

もしかすると、放射性物質をたくさん扱う放射線管理区域のほうが、
厳重に管理されているので、
子供たちが遊ぶ学校の校庭より
ずっと放射線が低く安全かもしれないという
不思議な矛盾に陥るかもしれません。

新幹線と比較するとよくわかる事実もあります。
はこれまでの経験からトンネルや線路、運行システムに補強を加えていたので、
「想定外」の激しい揺れにも耐え、
すでに回復しました。
鉄道がよりシンプルな仕組みだからです。
原発は非常にナイーブで複雑な機構なため、
補強が難しいシステムで、
地震そのもので壊れてしまうものであることもわかりました。

患者さんとお話しするたびに思いますが、
国民の生き物としての人間の直観の方が正しいと思っています。

科学の原理原則は普遍のものです。
日本が国際社会で生き抜いていくために、
国際基準に従うことが原則なのは変わりありません。

人間は水や地面や食べ物がなくては生きていけません。
起きてしまったことに目をそむけるのではなく、
きちんと認識して、
子供たちの被ばく量を減らすために、
できるだけのことをやるべきです。

美しい国土を守り、早期に回復させるために、
人の命を守るために、
私達は今、
何が必要かを判断していくことを求められています。
ものごとはシンプルなものです。

原子力運用者の意見は意見として、
国民の命をあずかる政府にだけは、
命を大切にする決定をしていってもらいたいと願っています。
もともとは、そういった人々だったはずです。
そして、そういったメッセージを送ることも可能なはずです。

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